水曜日はダメよ

名画日曜日はダメよを勝手に文字って書こうとしたけど
子供の頃無理矢理理由もわからずに強制視聴させられた記憶の糸を辿ってだから
何曜日だったかあれ土曜日だったっけかなとあやふやで
確かナナ・ムスクーリがでてた気がして
ナナ・ムスクーリでググったら
あれ彼女はギリシア人だけど歌手やんけ
あれ主題歌、歌ってたっけと
記憶の糸を手繰り寄せては
海馬の引き出しがとっ散らかり始めるけれど
ちゃあんとGoogleさんは教えてくれる

正解は主演女優はメリナ・メルクーリで
日曜日だった笑

日曜はダメよ
私は日曜日は私の好きなギリシャ悲劇を見に行くって決めてるんだからって
主人公がジジイのお誘いを断るのだけど

一週間は勿論仕事によっては
私もサービス業に就いていたことがあるから
正月三賀日だっていや三賀日こそ
人が休んでる時が稼ぎ時の仕事だってあることは知っているえれど
まあ大きくは月曜日から金曜日のウイークデーと
土日の週末で一週間ができているイメージだと思う

けれど一週間の山は人によりけりで
施設の利用者さんに
水曜日を中心にしておられる方がいる

離れて暮らす高齢のお母さんの介護のため
水曜日に訪問入浴や訪問診療、訪問リハビリのサービスを時間割みたいに朝から夕方遅くまでみっちりスケジュールして
そこに自分が立ちあう日
それが水曜日

なかなか治らない褥瘡を治したいと
口から食べられないとやっぱり褥瘡は良くならないと医療者に言われて
そうだ精のつくものを母の好物をと毎週訪問するたびに鰻弁当を買って半分は自分
半分は母親に食べさせたという

きっとお母さんは息子が買ってきてくれた鰻だもの美味しかったに決まっているし
何よりそうやって食べさせようと思って杖をついて電車を乗り継いで毎週買ってきてくれるという好意というより行為に励まされたかしれないと思う

見事にお母さんの褥瘡は夏の3か月の間に完治して
認知の難病を患っておられたけれど
もう薬がいらないと医者が言うほど
認知面でも回復が見られるという

おふくろが病気になったのは俺のせいもあるからと
何かの拍子にそんな事をおっしゃったのを聴いた

自分も兄も若いうちから家を出て働いてそれぞれの生活に忙しくて
盆暮れどころか殆ど実家に寄り付かないようだった
おふくろが脳の病気になったのは
寂しさが原因だったと俺は思ってる
俺たち兄弟がもっとおふくろの生活を顧みていたら
病気にならなかったんじゃないと思ってる
現に俺が毎週訪問するようになって
認知症状は良くなっているんだからと

医学的な所見のことは分からない
けれどその人がそう思っているということが
真実なんだと思うし
他に要因を探す必要なんかない
実際にお元気になられたんだから

その利用者さんが火曜日に急な発熱に見舞われて事業所をお休みすると連絡があった
急に冷えてきたので風邪かもしれませんと言っておられた
ああ、明日は水曜日だ　
どうなさるのかなと思ったら
何も聞かないうちから
明日は這ってでもおふくろんとこは行きます
俺が行かないとおふくろが困るから

ああ
いやでもウツシタラと
喉元まで出た言葉を飲み込む
お兄さんに代わってもらうとか
極論お母さんだけ在宅してれば用事はすむのでは
いや発熱は風邪かわからないですけど
お母さんに感染ったら大変ですよと
いくつか　まともという衣を被った
所詮他人の賢しらな言葉が脳裏をよぎるけど

いやこの方がそれがわからないわけじゃない
それでも行くと言っているんだから
行かなくちゃ行けないんだろうし
例えその後何があったとしても
必要なの水曜日
水曜日その一日をお母さんがまずお元気で過ごされることで
そのためにその人が這ってでもというのだから

私のような立場でそれを知り得た人間がいうことは

ご自分の体も大事にしてくださいね
木曜日通所されるのをお待ちしています
何かあったらご連絡ください
心配するしかできませんが

と言って電話を切る

それだけ

自分の土俵に立てるのは自分だけ