またそこから
水曜日だったかな
土曜日暇だったら暑いしエスニック料理でも食べないって
元夫からのお誘い
うん
いいね
バンコク思い出すね
じゃあさ
その前にも時間あるなら
フィンランド映画見ない?
いいよ
映画好きだから
じゃあ早稲田松竹前で待ち合わせしよう
どストライクだ
サブカルインド好きな私の大好物なやつ
流石だなあ結婚しただけのことはある
変わらないセレクトに遠い目をしてしまうけど
実際結婚してる時は生活に埋もれて
ふたりで映画を見に行くことも
エスニック食べに遠征することも
音楽の話することも殆どなかったんだから音楽の話になると大抵喧嘩になったマッタクモウ結婚生活中の私の取捨選択は
生活と子育てに全フリして
何を置き去りにしてたか言わずもがなだ苦笑
仕方ない
そうとしか生きられなかったんだから
映画は大抵映画館で月に一本は見ているけど
ミニシアターや名画座は久しぶりで
元夫はというと最後に見たのがいつだったか思い出せないくらい映画館には行っていないというから笑ってしまった
じゃあなんで映画に誘ったのというと
暑いから、涼しいところがいいと思ってと
モジモジと中学生みたいに答えるからまたまた笑ってしまった。
私はね月に一本くらいは映画館で見るようにしているよ
それは映画には映画館で見るべきサイズの映画があるからだし
北野武の首もそうだったし、オッペンハイマ―も関心領域も
映画館で見られることを想定して作っていると思ったから
その意図に応えて映画館で見ようと思った。
あと家で見ると集中力が持続しないし
家で寝っ転がって鼻くそほじりながら見てもいい映画もあると思うけど
少なくとも三時間を超えるような作品の集中力は
他の刺激があったら私は続かないから無理
でも俺はアマプラとかユーネクストで見れちゃうからなあ
そっちで見ちゃうな
好きな時に見たいと思うものを
でもさ、音楽も配信で聞ければいいサブスクでいいってなったら
表現者にどうやって還元していくのか
お金の流れがないじゃない
タダ見、タダ聞きになっちゃう
だから私はライブに行くし、映画館に行って
作った人が求める対価で見たいし、聞きたいわけ
それがリスペクトだし、ファンにできる応援だからさ
う、うん。そうだよね。確かに。
って、アンタがミュージシャンだろ
でもそっち側の人間だから無頓着なのかなあと
相変わらずな彼に苦笑いしかないけど
早稲田松竹もキレイになったなあといつ以来だろうと
館内をキョロキョロする百パーセント高円寺な彼に
お互いちょっと長く生きてるから
十年は誤差みたいなもんだよねってこれ以上断絶しないよう会話を切って席に着く。
なんでもわかりあえるわけじゃないし
わかりあえないままでも映画は見れる笑
淡々過ぎる日常を淡々と描くタイプのヨーロッパ映画で
北欧の風景と、人々の暮らしに思いを馳せて
若い頃は背伸びしてよく見ていたけど
何が面白いんだかは正直よくわかんねえなって映画に滲む
悲哀というか、やるせなさというか、生きてるって冴えないけど
冴えなさの合間に
短くハッとするような視線と視線の重なりがあるんだよなって
そうやって人って出会ったりすれ違ってるんだよなあって
年取ったほうがええなこの手の映画はって
シンミリしてたら
二本立てだったんだけど
二本目が始まってしばらくするとモジモジして彼が耳元で囁く
オシッコかよひとりで行けるだろって内心思ったけど笑
なんかさ、ツマンなさそうだからさ
途中で出ない?
へ?途中退出するってこと?
いや、まだ始まったばっかりだから
面白いかツマンナイかわかんないでしょ
これから面白くなるのかもしれんし
それに今ここでふたりで退出したら館内の空気の緊張感を破るやろ
それ、やられたら、私だったらそいつ蹴りたいし
私は最後まで見ていたいわ
そ、そう?
じゃあみていようか
と座り直す彼
自分から誘っておいて
自分でフィンランド映画なんてハードル上げておいて
ツマンナイから出ようとか
なんと自由なんだ君はと笑いそうになったけど
そういう人だったと思い直して座り直した
観終わって館内の壁のポスターを見やると
二本目のパラダイスの夕暮れは
1986年のアキ・カウリスマキ監督の初期の作品で
一本目の枯れ葉は2023年の作品で、
パラダイスの夕暮れ2.0ともいうべきオマージュというかパロディというか、彼の大好きなモチーフで現代に焼き直した作品と解説にあったので
彼が一本目と二本目が殆ど同じ作品に見えてツマンナイといったのも
ムベなるかなだったと判明したけれど
何か食べたいものある?と心はもうこの後のご飯に向かっていて
高田馬場はミャンマー料理がメッカなんだけどどうかなというから
これは好き嫌いで優劣じゃないから誤解しないでほしいんだけど
ミャンマー料理は油が多いし、料理としての華がないし
暑さと経済状況でフレッシュな食材が手に入らないから
苦肉の策で油で揚げて調理の安全を担保している料理だと思うから
もちろん日本は衛生状態はいいからその必要はないんだけど
もしお金払って選んで食べるなら
エスニックで行くなら
タイかベトナムの料理がイイな
というと彼も苦笑いして
その通りだよね確かに
美味しくないわけじゃないけど、
タイ料理みたいにグローバルにはならないね
バングラとかミャンマー料理は
と河岸を変えて新大久保へと電車に乗り込む
エスニック料理屋で乾杯して新大久保を散歩して
娘らにお土産にドリアンを買っていこうとするから
だれが電車にドリアン持ち込むんじゃいと苦笑いして
じゃあ冷凍のライチとかどうかなというから
いいねとありがたく買ってもらい
お寿司の箱折を持ち帰るお父さんみたいに片手に下げて
小さく握手してじゃあまたねと
西と東にそれぞれの家路につく
あれ、これってまるで中二のデエトだなあ
また出会うところから始めるのかな笑と
出会って別れた二人がまた並んで座って映画を見て
向かい合って夕餉に舌鼓を打った夜を
いくつか超えた金曜日の夜に
ひとりかも寝む
追記
こうして書き出してみると私って
結構めんどくさい蘊蓄ガンコオバサンやな笑
いやここまで他人に私はそう思わないとかそう思うってのを
押し出すことはしないから
暮らした人に対しては距離感近くなっちゃうんだなあとやや反省
でもこう思うって本当に心の底からそう思っていることだから
攻撃やないし批判でもないからケンカにはならないのかなと
攻撃の場面でしかお互い自分を出せなかったんやなって
時間が経つと会話も沈殿して透き通ってくると
浮かんで見えてくることがあんねんな
長えぞ追記が苦笑
ええと
貼り付けた映画が映画なもんで
誤解を招くかもしれないけど
何度も書いてることですけど
元夫には現パートナーがいるし
赤毛とどうのこうのということでなくての
元夫婦なんです 追記というか蛇足笑
枯れ葉のイントロで流れたのは
多分竹田の子守唄
フィンランド映画で日本のフォークとはビックリした