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分け合えば余る

七月の土用の丑の日に夏バテ防止
給食に調理の方に相談して特別に鰻を提供することにした。

といっても丁度お盆で帰省する職員が
実家近くにあるロピアで冷凍輸入鰻のかば焼きを買ってきて
一匹を4人で切り分けで鰻丼にしようというもので
〆てウナギ代は5780円
これを23人で分け合おうというのだから
一人頭鰻代のみでは約251円の贅沢だ

献立表に鰻の一文字を見てからは
いまかいまかと明日は鰻だと利用者のみなさん楽しみにしてくださり
職員冥利につきる

いざ鰻丼が供されると
皆さん黙々と最後の晩餐みたいに召し上がって
もっとワイワイと、美味しいねとか、足りないねとか、
2段重で食べてみたいなとか盛り上がるかと
期待していたのでちょっと肩透かしだったけれど

その日の昼休みも午後2時の休憩時間も
みなさんいつになく午睡を貪っておられて苦笑
鰻がお腹に溜まってプーさんみたいに満腹で眠いのかと思うと
たった5000円ちょっと
たった6匹の鰻のモタラスなんと幸せな光景だと

土用の丑の日に高級なウナギ屋さんに行けば
一人分にもならないような金額
5780円で23人の大の大人がウナギを美味い美味いと
食べ終わって眠くなっちゃうくらい満足するなんて

激安だよなあと目から我慢汁が出そうになる

予定外に出席された方もおられたりで
急遽鰻が足りなくなってしまったので、
私の分の給食はニラ玉丼を代わりに用意していただき涙
幻のウナギを鼻腔で味わいながら

金に糸目をつけないで野田岩さんで
三段重だって食べられちゃうような金持ちには
この分け合う美味しさは分からないでしょうねと
調理の職員さんと私達貧乏人でよかったのかもしれませんねと
僻み半分本音半分でニッコリ微笑んで負け惜しみを言って
ニラ玉丼をかき込んで食べて
午後の仕事に向かう

同じ釜の飯を食った仲間
食べることでその場と命を共有して
悪い意味では腹をこわすのも運命共同体だし苦笑
働く生きるエネルギーを分かち合うことができる

ささやかな土用の丑を経て
独り占めしないで分け合って食べることの
やさしさが膨らんだ腹の中に満ちていく

それにしても、鰻食べたかったなあ
大好物だったのに!

食べたい!といったら矢野顕子さんでしょう笑


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