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図書館の書庫をゆく

この物語は、崖っぷち文系博士課程の院生が奮闘する日々の記録。

○図書館・書庫

 あかちゃん、大学図書館の奥まったところにある書庫に足を踏み入れる。ここは書架が隙間なくぎゅっと並んでいる。あかちゃんがそのうちの一つの書架のボタンを押すと、鈍い音を立てて、書架が動き出し、止まる。棚と棚の間に人が入れるスペースができる。(注1)

注1)集密書架と呼ばれる移動棚。可動式になっていて、ボタンを押したり、ハンドルを回したりすることで書架を利用する事ができる。最小限の空間で書籍を効率よく収納することができる。

あかちゃん「ここは雑誌の棚。オープンな書架に雑誌コーナーはある。そこは新しいものが並んでいる。そして古いものはどんどんこっちに移動される。閉架図書に所蔵されている場合もある。図書館っていうのは、ただ単に分類されているだけではなく、利用の優先度も考えて整理されているから、効率よく本が探せるってわけ。」

 分厚いかたい書物を書架から引き抜く。(注2)

注2)雑誌の1冊1冊は薄いが、大学図書館では巻号を何冊かまとめて製本して保管される。その方が、保護の面と利用の面でよい。

あかちゃん「何十年前の創刊号なんてのも含めて置いてあるの、ロマンだね~。最近は古い雑誌の電子化が進んでいるので、オンラインで読める物も増えてはいるが、古い書物を実物で手に取るのはそれはそれで味わい深い。」

○大学の図書館・複写

 あかちゃん、コピー機が3台並ぶ複写スペースに移動。1台の複写機にコピーカード(注3)を入れて、操作する。

注3)図書館内のコピー機で利用できるカード。館内のカード販売機で購入できる。普通に現金を投入するよりお得。大学の生協なんかにも構内のコピー機で使えるコピーカードが売っていることもある。しかし、最近は大学生のコピーの機会が減っているという噂も…。

あかちゃん「紙の節約のために両面コピー? ノンノン。ここは4in1 の両面。用紙のサイズはA3。これが一番お得なんだから。等倍だと本の見開き2頁で1枚のところを、1枚で8頁複写できる。両面だから16枚! これで紙もお金も節約するってわけ。」

 8回本を読み込ませて、ようやく音を立てて出力し始める。両面きちんと印刷されているか確認して、満足げに続きをコピーする。

あかちゃん「コピーの頁数は、4の倍数か8の倍数で終わるのが理想。ぴったりおさまると本当に気持ちいいんだから。コピーをするときに忘れちゃいけないのは、注の部分と奥付。本文に注の番号が振ってあるのに、後ろの注の一覧をコピーしておかないと、あとで追跡できなくなっちゃうんだから。」

 注を探して後ろの方の頁をめくる。該当箇所を見つけてコピー機に開いておく。

あかちゃん「奥付は、最後の頁にタイトルとか著者とか出版社とか書いてあるとこ。どの本にも奥付はついてるから、出版物のルールなんだろうな。この情報がないと、何の本のコピーかわかんなくなる。雑誌の場合は奥付じゃなくて、表紙でもいい。わかればいい。でも奥付や表紙を含めるとコピーの枚数が4の倍数を超えるときは、コピーした紙の隅に本の情報を手でささっと書いちゃう。そう、わかればいい。」

 数枚のA3用紙を束ねて、備え付けのホッチキスで端を止める。それを半分に折ってA4サイズにする。

あかちゃん「図書館は複写のルールがいろいろある。複写が許可されるのは、研究調査の目的で、かつ著作物の一部。具体的には著作物の頁の半分以下。あと、雑誌を複写する場合、最新刊はだめ(注4)。それは出版社の利益に影響するからだろう。図書館と市場とのバランスって大事だよね。」

注4)著作権法により、複写が許可されるのは「発行後相当期間を経過した定期刊行物」という条件がある。図書館ではおおむね、次の号が発刊されたら相当期間を経過したとみなされて、複写可能になる。

 複写機の脇にあるテーブルの置いてある紙をとって、分厚い書物は返却棚に戻し、近くにポツンとおいてある一人分の机に腰掛ける。複写物を見ながら、紙に記入をし始める。

あかちゃん「あとは複写申込書にコピーした箇所を書いて出す。これも決まり。毎回図書館に提出するのだけど、これってどういう風に管理されてるのだろう…。あ、いや、開けてはいけない扉かも。深く考えずにルールに従うことも大事。著作権の保護って本当にデリケートな問題なんだから。」

 申込書を穴の開いた専用のボックスに入れる。

あかちゃん「任務完了!」

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