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図書館で文献探しRTA

この物語は、崖っぷち文系博士課程の院生が奮闘する日々の記録。

文献検索RTA

○大学の図書館・端末機

 あかちゃんはパソコンを触っている。マウスで小刻みにスクロールさせて画面をじっくり見ている。

あかちゃん「ん~ ちょっと待ってちょっと待って。検索結果多すぎる。しかもほとんど関係ない! 検索ワードがよくない、変えよ。」(注1)

注1)検索に使っているのは、大学のOPAC、すなわち、Online Public Access Catalog、オンライン蔵書目録検索システムである。

あかちゃん「では、検索RTAいきます。本日は明確な調べ物ではなくて、知識を得るための書籍を探すのが目的。別にリアルタイムアタックする必要性はないのだが。それに誰と競うんだ。まあ何事も速ければ速いに越したことはない。良い本と出会えますように。」

BGM ♪クシコスポスト

 再びOPACに入力するあかちゃん。

あかちゃん「これで検索! 出てきた。ここは関連順ではなく、最新順にソート! 今いるキャンパスの所蔵のみに絞り込み! うちの大学はいくつか図書館あるからね。ピンとくるタイトルの本の詳細をクリック。目次を確認。よさそうだ。オーケー。請求番号(注2)をメモる! 3冊書いた! このあたりで気づく。請求番号が近いことに。」

注2)請求番号とは、どこの図書館でも本の背ラベルに貼ってある番号。この番号に従って本は棚に並んでいる。

 小さな紙に番号だけメモし、OPACをトップのメニュー画面に戻すと、壁に掲示されている館内の見取り図を見る。そこには書架の番号が書いてある。

あかちゃん「これで請求番号のだいたいの位置を見定める。だいたいでいい。おおまかな棚の位置さえ把握できればいい。」

 階段を上がり、目的の棚を一直線に目指す。到着すると背表紙を指で辿るようにしながら本のタイトルを順番に見ていく。

○大学の図書館・書架

あかちゃん「図書館は分類により秩序が築かれている知の体系の森。ネット上だと、検索した対象をピンポイントで見つける方法になってしまうけど、実際に書架へ足を運ぶと、検索結果に出てこないものも含めて、同じ分野の本を目にする事ができる。検索結果一覧ではなく、ここから選ぶ。導入はこれに限る。」

 本を手に取る、目次を見る、戻す。手に取る、目次を見る、パラパラめくる。そうやって片っ端から見ていく。

あかちゃん「もちろん、基礎文献を先人がリストアップしてくれているだとか、入門書が既に存在している場合もある。でもあらゆる分野で初学者のために入口が整備されているわけではない。」

 数冊をピックアップするも、重たいので、棚の空いているスペースにいったん置いて、また別の本を手に取る。

あかちゃん「この方法の欠点は、新書(注3)だ。新書は分野ごとではなく、出版社ごとに配架されていることが多い。このジャンルの棚では新書は見つけられない。ただ、新書は参考文献にならない場合も多い。わかりやすく噛み砕いてあるのはいいとして、ソースが明確に書いてないこともあるから。つまり新書を読んでも、研究する際にはまた別に専門書を探すことになるから、新書のことは気にしない。気の合う新書に運よく出会えたらそのときはよろしくな!」

注3)新書とは、本のサイズによる呼び方である。しかし、内容としては専門的なことを一般向けに書いているような印象を受ける。学問のとっかかりとしては向いている。もちろん新書でも参考文献として用いることはある。

 本を10冊ほど両手で抱えて、閲覧席に歩き出す。

あかちゃん「検索RTA終了! 実際にOPAC検索にかけた時間は1分ぐらいだけど。棚を直接見るのが手っ取り早い。将来は私の興味・関心に合う本を選んでくれるAIが出てくるのかな。それでも本当に興味・関心を外していないか確かめたくなっちゃう。自分はどこまでもアナログな行動をとってしまう気がする…。自分の目で見たいよね。」


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