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幾つになっても変わらない愛があればいいと思う。


つい先日、バイト先におじいちゃんとおばあちゃんが来た。先に来たのは小綺麗な格好をしたおばあちゃん。
お店を徘徊していた。
「いかがなさいましたか?」と聞くと「おじいちゃんが来てるはずなのよ…。」と言った。おじいちゃんなんて来てなかった。

申し訳ないがうろうろしてもらっても困るので席に案内しておじいちゃんを待っててもらった。しばらくすると160cmあるかないかくらいの優しそうなおじいちゃんがやってきて、おばあちゃんの方に案内すると2人とも幸せそうな顔をしていた。

バイト先は大手中華屋で、小籠包を提供しているためオーダーが入ると席に人数分の生姜を持っていく。
必要な人には小籠包の食べ方(好きに食べろよと思うが、会社が決めてる食べ方がある)を先に説明する。
そのおばあちゃんとおじいちゃんにも小籠包の食べ方を説明した。

6、7分で小籠包が出来上がったので提供しに行った。すると2人は小籠包の食べ方を聞いてきた。
さっき説明したよな~、と思いながらもう一度説明をして、小籠包の他に焼き餃子を注文していたので焼き餃子も提供した。
既に小籠包を持っていってから5分は経っているというのに2人は手をつけていなくて、
また「これってどうやって食べたらいいの?」と言うのだ。
少し驚きながらも小籠包の食べ方を合計で3回教えた。すると無事に食べてくれたので4回目の説明をする必要が無いことに安心したのを覚えている。

2人は小籠包、焼き餃子、青菜炒め、マンゴーかき氷を注文して帰って行った。
全ての料理を私が提供した。なにか持っていく度微笑んで「ありがとう、ありがとうね」とお礼を伝えてくれた。
帰る時も「ありがとう、美味しかったよ」と言ってくれて、作ったのは私じゃないけど嬉しい気持ちになった。

2人とも心から食事というものを楽しんでいる様子だった。これが食事でなくても愛する者同士ならなんでも楽しくなってしまうのかもしれない。

同じ日にシフトに入っていた人達は老老介護だとか、認知症だとか言っていたけれどこの人たちが認知症というものなのかなんて分からないし、第三者が決めつけるのは良くないし、私の身近にそういう人はいなくて見たことがないからこれについてはこれ以上何も言わないようにする。
きっと物覚えが少し悪くなっただけだろう。

だがこれから先、大切な何かを忘れてしまうことがあったとしてもこの2人ならお互いのことは忘れずにいられるのだろうなと感じた。根拠はないけれど、でも、そうであってほしい。

いつからお互いを愛し合っているかなんて私が知ったことじゃない。恋人同士でいたときの愛も、夫婦になってからの愛も、なにひとつ変わらない愛が2人の間にあり続ければいいと思ったし、沢山長生きして私の知らないところで沢山の素敵な人や物、新しいことを発見していけばいいと思った。
私はそこのバイト先を辞めてしまったのできっともう二度と会うことはないけれど、どうか、元気に暮らしていてください。

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