フシギナパラダイス 3話 不思議な傷 2/8【期間限定無料配信】

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翌日、心矢はボロボロ姿で自分の席で窓の外を眺めながら座っていた。

その表情は無である。

「し…心矢?大丈夫?」

私はおずおずと声をかける。

返事はない。

一度だけこちらをみたけど、すぐにツーンをした様子で首を反対側に向けた。

いつもの実験よりひどかったのだろう、普段よりよほどご立腹の様子。
まぁ、当然と言えば当然か。

「なんかごめん、昨日はその…助けられなくて。」

少しだけこっちを見たけど、またすぐに窓の外に視線をやる。

言葉だけの謝罪はいらない様子。

「別にいいじゃん、どーせ助けるほどの人間じゃないんだから、別に僕が許そうが許さまいが、ルイには関係ないでしょ?」

あーぁ…卑屈になっちゃってる…いや、そうした原因の一端は私にもあるけど。

「本当にごめん、お詫びになんか心矢のいうことなんでも聞いてあげるから」

こんな子供騙しの方法で許しを請うのは浅はかだとは思うけど…他に解決策が見つからない。

「…本当に?」

「本当本当。」

私は大きく二回頷く、すると心矢は手のひらをこちらに差し出して

「じゃあ…1000円ちょうだい」

そう私に言った。

「…」

最初の感想は、自分のその状態をたった1000円で許していいのかという戸惑い。

もう一つは私もお金がないということ。

慰謝料にしては安いその金額と、お金がないという相反した思いが頭の中でこんがらがると、その要求に対して私は何も言えず黙るしかなかった。

その瞬間ガラッと扉が開く音が聞こえた。

朝の教室なんだから扉が開く音が聞こえるのは普通のこと、だから最初はその音に対して環境音程度にしか気にならなかった。

でも、その直後

「あゆみ!どうしたのそれ!」

女子の声が教室に響き渡った。

一瞬教室が静まり返り、そしてその直後…クラス中がざわついた。

私は何事かと思って扉の方に視線を向けると、そこには傷だらけの女子生徒がいた。

全身が傷だらけ、なるほど教室中がざわつくのも無理ないことだ。

本人はさぞかし痛いだろう…と…思ってたんだけど
当の本人は痛そうにしていないどころか、周りの反応にきょとんとしていた

なんなら駆け寄った友人の方が慌てている

「その傷!どこで怪我したの!?」

「傷?あらあら…」

その子に言われてようやく自分が怪我をしていることに気がついたようで、自分の体を全身見回し、お慌てた様子の友達に連れられて保健室へ向かった。

妙な話。

普通一か所でも、数ミリでも、傷がつけば痛い。
それは当然のこと。

でもあの子は、何か所も切ったような傷があったのに、
言われるまで自分が怪我してることも気がつかなかった。

痛みに強い?鈍感?
ない話じゃないけど何か所も傷がついててそんなことあり得る?

まぁ、痛くない傷もあるって言うから、別に気にすることじゃないのかな。

大丈夫かな

「赤の他人を心配する前に、幼なじみが傷だらけの事に罪悪感を覚えるべきだと思うよ。」

私はそう声をかけられてハッとする。
そういえば、心矢に見捨てた事に対する謝罪をしている最中だった!
心矢はふてくされている。

私は何度も頭を下げ、許してもらえるまでいつもより長めの時間を要した。

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