フシギナパラダイス 2話 不思議な鳩 6/9 【期間限定無料公開】
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「…ニュースで言ってたのって…この辺りだよね…」
私はニュースで言っていた公園にまでやってきていた。
神様が飛び出したのが、公園の名前を聞いてからだったから、神様は多分ここにきてると思うんだけど…
「…どこにいるんだろう」
私はキョロキョロとしながら周りを探した。
別に…探さずに帰っても良かったんだけどね、見つけたところで何かいいことがあるわけじゃないし。
…やっぱ帰ろうかな。
公園を見回してもなかなか見つからないことに少しイライラしてそんなことを思っていると
「ゆうちゃん!ゆうちゃんどこにいるの!?」
公園の周りをパタパタと走りながら名前を読んでいる女性がいた。
息を切らして、肩で息をしている女性の様子を伺っていたら、女性と目があった。
その女性はつかつかとこちらに歩いてきて、私の肩をガシッと掴み
「あ、あのすみません!女の子…女の子見ませんでしたか!?
4歳くらいの子なんですけど!!」
と、すがるような、焦ったような、そんな声音で私に声をかけられました。
でも、私はここに来るまで子供を見かけてはいなかった。
「ごめんなさい…見てないです…」
私がそういうと、女性はしゅんと落ち込んで「ありがとう」とお礼を言って、また名前を呼びながら公園の周りを走っていった。
迷子かな…見つかるといいけど、と思いながらその女性の後ろ姿を見つめていると、視界にでっぷりとした白い何かが横切るのが見えた。
神様だ。
「ちょっと!」
私は神様に声をかける。
その声に反応して、神様はピタリと動きを止めてこちらを見た。
「ルイさん!追いかけてこられたんですか?」
「まぁね…突然飛び出されたら驚くじゃん。一体どうしたの?」
私の問いに、神様は少し伏せ目がちになって、口をつぐむ。
でも、なんでもないということはないはずだ。そうじゃなきゃ、あんな風に飛び出すわけがない。
だから私はまっすぐ彼の目を見つめた。
流石に誤魔化すわけにはいかないと思ったのか、神様は口を開いた
「何かあった…というわけではないんです。確証はありませんし。ただ、さっきの鉄の箱の中にいた女の人がいっていた事件が、妙に気になってしまって…」
「…もしかしてテレビのニュースのこと?誘拐事件がそんなに気になるの?」
「…人の仕業で、毎日人が跡形もなく、いなくなるのでしょうか」
神様は、誘拐事件だという私の発言に対し、そう答えた。
そして私がその言葉の意味を理解する前に、神様は言葉を続けた。
「確かに地域を広げてみれば、行方不明も誘拐も珍しい事件ではありません。
しかし同じ地域で毎日行方不明者が出るというのは偶然にしては多すぎますし
誘拐なら抵抗した痕がなさすぎます。」
「…」
神様が言っていることはよくわかった。
それは私も疑問に思っていた。
行方不明者の中には、とてもガタイが良い方がいた。
そんな大柄の方が、誘拐の時何も抵抗しなかったとは思えない
そもそもこの事件は行方不明にしても誘拐にしても不思議なことが多すぎる
「年齢も性別もバラバラ、関係性は一切ない、完全無差別気になる事件ではあるよね」
「はい、人の起こした事件なら、何かしらの恨みがあるとか、何か目的があるとかなら、誘拐なんて手間のかかることをする理由はわかるのですが
しかしそういうのがないのに誘拐なんてリスクも手間もかかることをする理由はわかりません」
「たしかにね、それ以外の目的でなにか、、、っていうならもっと手っ取り早い方法があるし、何より無差別でやることじゃないよね。」
ありえるとしたらお金、身代金の要求。
でも、最初の人が行方不明になってすでに一週間、犯人の音沙汰はない。
そうなると、お金目的ではない?
考えれば考えるほど、意味のわからない事件だ…でも
でそもそもこれは頭の良い警察が調べても何もわかっていないこと。
中学生の自分が頭を捻って考えたところで答えが出るはずがない。
「言いたいことはわかるよ、でも私たちに分かることじゃないよ
こんな事件、神様がわざわざ考える必要は、、、」
そこまで言葉に出して気がついた。
なんで神様がそんなことまで考えているのか
それにさっき
ー人の起こした事件なら、何かしらの恨みがあるとか、何か目的があるとかなら、誘拐なんて手間のかかることをする理由はわかるのですが
人の起こした事件
そう神様は言った。
でも、人間の起こした事件なら、わざわざそんな前置きをする必要はない。
そもそも血相を変えて飛んでくる必要もない。
つまり、
「人が起こした事件じゃないかもしれない…そういうこと?」
「…おそらく」
「まさかそれって…昨日の話の」
「…封印が解けた直後の彼らは、まだ力が完全に戻っていません。
その抑えられた力を復活させるため、生者の生気を吸収するんです。
ここまで繰り返された何度かの戦いで、戦い方などは様々ですが、最初だけはいつも同じ
必ず人間が神隠しに合うんです、同じ地域で…まるでそれが始まりの合図かのように」
「…そんな、でも、さっきはまだ時間が…」
「はい、予想ではまだ時間があるはずで、こちらも余裕を持って動き出したつもりでいました。でも…まさかこんなに早く」
神様は悔しそうにそう呟いた。
その様子を見て、私はその神様の言葉になんて返事をして良いのかわからなかった。
正直、あんな話を聞いた後でも実感はない、他人事、行方不明者の原因がなんだろうか、そんなの知らない。
でも、その話が本当なら、その推測が正しいなら、昨日聞いた話を信じるなら、私は…
その時何処かからガサっと音がした。
驚いて音のした方を振り向くと、そこには二つ結びの4・5歳くらいの女の子がいた
ふと思い出す
さっき迷子を探す女性の存在を
「もしかして、ゆう…ちゃん?」
女の子はなにも答えない。
でも、近くに大人がいないことから考えるに間違いはないだろう。
「さっきお母さんが探してたよ、一緒に」
そう、もう一度女の子に声をかけて手を差し伸べようとしたその時
「ルイさんその子から放れて!!」
神様が私に向かってそう叫んだ
私が「え」と声を漏らして振り返った瞬間
「!」
女の子が意味のわからない言葉を発し、それと同時に何か黒い光が現れこちらに目掛けて飛んできた。
その光がなんなのか理解する時間はなく、叫ぶまも逃げるまもなく、私はただただ目をギュッと閉じた。
しかし
目を閉じていても分かるくらいに周りが明るくなり、バンっという音が鳴り響いた
痛みは感じない
ゆっくり目を開けると、そこには神様が私に背を向け人の姿で立ちはだかっていた、攻撃から私を守ってくれたみたいだった。
「ルイさん、お怪我は?」
「あ、大丈夫…助けてくれてありがとう…
でも…ねえ、女の子は?」
ついさっきまでそこに立っていた女の子は、どこにも見当たらなくなっていた。
光星くんは静かに首を横に振った。
「わかりません、一瞬でいなくなってしまったので…」
「…そう」
私は、それだけ答えて沈黙した。
今の一連を見ただけで、少なくとも人の力でできることではないことがわかってしまった。
それはつまり、神様が言うところの黄泉が復活した、そしてそれを目の当たりにした、そううことらしい
「あの子は、人じゃない何かだったってこと?」
「…いいえ、あの子自体は人の子です。
しかし、取り憑かれてますね」
「え…」
「今回の行方不明者のカラクリです。
彼らは人にとりついて、何処かへ誘導して連れて行っていたんです。
そうすれば抵抗されることなく簡単に連れ去ることができる」
「そんな、じゃああの子も!」
「まだあの子の気配を感じます、遠くには行っていません。
おそらく、この奥の方に…」
「…」
「ルイさんすいません、本当はもう少し時間を作りたかったのですが、こうなってはもう一刻を争います。
行方不明になった人々を取り戻すためには、彼らを倒すしかありません。
今、彼らと戦うことができるのはあなたしかいません。
どうかご助力を」
「…ちょっと待って、君の昨日の話を信じて協力するとして、
私は誰と戦うの?」
「…ですから、黄泉の…」
「そうじゃなくて!
…組織の話じゃなくて、今日、私は誰と戦うの?まさか、あの女の子と、なんて言わないよね」
「それは…」
神様は言葉に詰まる、つまり、そういうことだと。
何かに取り憑かれた被害者のあの子を私は傷つけなければいけない
また目の前に広がる暗闇に振り続ける人だかり、そこから見える赤いもの
耳に聞こえる怒号
私は両手で耳を塞ぐ、実際に今聞こえてもいない声を聞かないようにするために。
「…ムリ、出来ない。」
「ルイさん…どうして」
「だって、あんなあ小さな子を傷つけるなんて私には出来ないよ。
取り憑かれてるってだけで、なにもわるくないのに」
「でも、そうでもしないと行方不明者は帰ってきません、被害もどんどん
広がります!
あの子だって、あのままにしておけば」
「じゃあ、犠牲にしろって言うの?」
「僕の仕事は、少しでも多くの人を守ることです。大勢を守るためには時に犠牲も必要です、あなたが今戦わなければ、被害が増えるだけ…被害を最小に抑えるためなら、少しの犠牲は」
「ムリだってば!」
「…じゃあどうするんですか?戦わない以外の方法で、止められますか?
綺麗事言ってる場合じゃありません、このままにしてたら、あの子見失いますよ!」
「そんなに言うなら、自分でやりなよ、キミ神様なんでしょ!?
神様のうまえれかわりだっていうわたしにたたかえて、神様にできない訳ないよね
小さな子供一人の犠牲をなんとも思わない非常な神様なら、簡単でしょ」
「それも、そうですね。あなたの仰る通り、まだ見習いとはいえ、神の力を持つ僕が、全く戦えないわけではありません。
僕らの先代の勝手な都合で、今まで何も知らずに生きてきたあなた方に役目を押し付けようとしていた、これは事実です。
今回に関しては確かに不慣れな方に頼むのは心もとない、自分自身でできるところまでやってみます」
そういうと神様は、公園の奥の方へ行ってしまった。
私はしばらく、神様が向かっていった方向を呆然としながら見つめた。
…流石に…言いすぎた…かな。
別に、神様がいっていたことが間違っているとは思わない。戦って元を止めなければもっと多くの被害者が出る、あの子だって…無事じゃ済まないかもしれない。
でも…万一のことを考えると、怖くて動けない。
万一何かあっても、私に責任を負うことはできない。
…考えてみれば、戦いたくない理由はとても自分勝手な理由だ。私が戦いたくない理由は「あの子のことが心配」だからじゃない、「自分があの子を傷つける」ことがいやだからという理由だ。
人間じゃできないことをあの子はやった、理解できない言葉を喋った、それは神様の言うところの黄泉の何かに取り憑かれたから。
だとするなら、取り憑いてる何かとは戦わなきゃ取り返せない、誰かがやらなきゃいけない。私じゃなければ他の誰か…今の場合は神様が代わりにそれをやってくれてる。私が戦うことは避けれても、結果は何も変わらない…
…それを私がやる義理はないけど、神様の言う生まれ変わりという話を信じるなら、私にしかやることはできない。
それを逃げて神様に押し付けるということは、結局のところ責任を押し付けてるのと同じじゃない
「押し付けるなって…私のいえた義理じゃないか。」
…このままじゃいけない。
断るにしても何にしても、私はまだ現実を直視してない。
「私も…行こう。」
ちゃんと今、何が起きててどうなってるのか、確認しよう。
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