「斬奸状」 和月伸宏原作アニメ『るろうに剣心』:創作のためのボキャブラ講義12
本日のテーマ
題材
「通称、黒笠。現在、政財官界で活躍する元維新志士を狙い、斬奸状を送り付けて斬り殺す、殺人鬼」
(アニメ第6話)
意味
斬奸状 ざんかんじょう
相手を斬り殺そうとする際、その理由など記した一種の予告状。
解説
作品概要
和月伸宏の少年漫画『るろうに剣心』は1994年から1999年に連載された、ジャンプ漫画としてはやや時代の古い作品と言える。筆者はもとより少年漫画誌を定期購読する人間ではなかったので読んだことはないが、連載時期が時期だけに名前は知っていても読んだことはない、という人も多かろう。現在はジャンプスクエアで続編も連載されているようだ。
そんな本作は1996年に一度アニメ化されたが、2023年7月よりリブート版が公開されている。各種媒体で配信もされているので、まず本作に触れるなら新アニメ版を見るのが常道だろう。
説明不要な本作はかつての人斬り、緋村剣心が今は逆刃刀を持ち不殺の剣士として明治の日本を生きる剣客譚。今回のテーマとなる第6話ではかつて新撰組にも在籍していたという人斬り黒笠の討伐を、維新時代の知り合いである警察署長から依頼されるという流れ。
激動の幕末を終え、行政もさらに整備された明治の世にあって既に剣客商売も途絶えたかに見えた。実際、アニメ序盤でも剣心は帯刀を見咎められて警察に尋問される場面すらある。それならば人斬りもお役御免かと思いきやそうでもなく、各界の重鎮は邪魔な相手を始末するのに黒笠のような人斬りを必要とする。黒笠自身が言う通り、幕末を超えてもなお、社会の本質はさほど変わっていないのかもしれないと思わされる。
語義
舞台が明治初期ということもあり、難しい言葉や聞き慣れない言葉が度々登場するのが本作。漫画なら文字を確認できるのだがアニメではそれも叶わないのが難しいところ。斬奸状もその類で、要するに「今からお前を殺すぞ」という予告状のようなものだろう。まあ時代などを加味すれば、自身の大義を明確にする目的も大いにありそうだが。
凶賊の類が自身の正当性を証明するために声明を残す。一見すると時代がかった行為だが、現在でも銃乱射魔などが事件を起こす前、映像に取った犯行予告をネットにアップしたりするのでこの点からも人間の考えることは昔からそう変わっていないのかもしれない。
補足
ちなみに剣心は自身の身分を「るろうに」と語りタイトルにもそう書かれるが、この単語自体は創作のようだ。剣心の身分は浪人と呼ぶべきだろう。流れの旅人という側面から「流浪人」が変化した造語とも取れるが、武士の身分を指して特別に「流浪人」と呼ぶようなものはないようだ。
情報
作品情報
和月伸宏『るろうに剣心』(1994年~ 集英社)
リンク
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