『ドカ食いダイスキ! もちづきさん』にみる趣味の狂気:創作のための戦訓講義82


事例概要

発端

※新しく発表された漫画がヤバいという話。まずは読んでほしい。

死へ突き進む

※悪習を悪習として描き、その結果がすでにほの見えているという狂気。

当時の見解1

当時の見解2

※笑いつつも自分は笑える立場ではないのでは、という疑念が。

当時の見解3

※以前考えていた「美少女におっさんの趣味をやらせる系コンテンツ」に、前は考えていなかった視点が生まれた。

※外集団化による問題点も当然存在するわけだが。

問題点

※病状をギャグとして使用することの問題点。そもそも実態とかけ離れるうえ、スティグマ化の危険もある。

※特に糖尿病などの病気は「患者の不摂生による自己責任」という雰囲気が流れやすい。

個人見解

 明らかな悪習慣を、きちんと悪習慣として描く作品の価値は一定程度あるだろう。特に「食事」という、それ自体が肯定的に扱われるべきだと、なぜか自然と思われているものならば。多くの読者が持つ疑いもしない価値観を揺さぶるという意味で、いい作品ではあるだろう。

 一方、こうした作品は現実における問題の戯画化や矮小化のリスクが高い。作中ではもちづきさんの状態がかなりヤバいように描かれているが、それでも作品として公開できる程度には「笑える」ようには整えられている。それがスティグマ化の危険性を高めるし、今まさに病気で苦しんでいる人たちには不快なのも当たり前だろう。

 一方、サウナにおける「整う」が実は体に悪いことがなんとなく伝わってきたからこその「至る」という表現なんじゃないかとも思う。一見フラットな、しかし実は恐ろしいくらい肯定的な表現。そしてその内実は「実態に即さない理由も分からない肯定化」であるというゆるやかな認識。その絶妙さに出てくる恐怖と笑いが本作のポイントなのかも、と。

 現実の患者に対する問題については、それこそ読者の鑑賞態度によってある程度問題を減じられる側面はあるだろう。

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