「アメリカン・ニューシネマ」の一般論とダーティハリー:創作のための戦訓講義103
事例概要
発端
太田出版連載3回目です。初めて『ダーティハリー』を見たのですが、名作と言われているので個人的な好みはともかくとしてスリリングな映画なんだろうと思ったら全然、面白くなくてビックリしました… / “メチャクチャな犯人とダメダメな刑事のポンコツ頂上対決? 『ダーテ…” https://t.co/iedZRJVJSH
— saebou (@Cristoforou) August 23, 2024
※北村氏の映画批評記事。『ダーティハリー』について書かれている。
北村紗衣というインフルエンサーの人がアメリカン・ニューシネマについてメチャクチャなことを書いていたのでそのウソを暴くためのニューシネマとはなんじゃろな解説記事|須藤にわか @eiganiwaka #note https://t.co/1TVI4JcyLA
— 映画にわか(bot)自主単行本「居眠り映画館 カルト映画編2015~2019』発売中! (@eiganiwaka) August 23, 2024
※自称にわかが「さえぼうは適当を言っているぞ!」と言いながら適当を発信。
これ歴史的経緯を全然ふまえていないと思うので、後で反論エントリをあげます。 https://t.co/QqZQC2zZmi
— saebou (@Cristoforou) August 24, 2024
端的に申し上げまして、メチャクチャなのはどちらかというとそちらの記事だと思います。映画史上のジャンルの位置づけからするとかなり奇妙です。反論エントリをブログにあげました/須藤にわかさんの私に対する反論記事が、映画史的に非常におかしい件についてhttps://t.co/mmLZXrk9DP https://t.co/QqZQC2zZmi
— saebou (@Cristoforou) August 24, 2024
※当然の反論が出る。
※内容については読んでもらったほうが早い。私はアメリカン・ニューシネマ自体を知らないので……。
※しいて要約するならにわかが「俺はたくさん映画を見てアメリカン・ニューシネマとはこういうものだと考えた」と語るのに対し、北村氏は一般論としてアメリカン・ニューシネマがどういうものと定義され批評されていたかを取り上げている。
※アメリカン・ニューシネマについての一般的な把握がおかしいというにわかに対し、北村氏の方が明確な典拠に基づき一般論としてのアメリカン・ニューシネマを鮮明化させている構図。
なぜ燃える?
良い記事。個人的には、何故北村紗衣が自らの無知を恥じずかような駄文を書けたのか、に興味がある。持ち上げるばかりでろくに仕事しない編集者ばかりだったんだろうか。であれば哀れですらある。 https://t.co/eUuxjTqK1J
— fumi_nk (@soulville_tokyo) August 24, 2024
さえぼう、せっかくダーティー・ハリーを見たのならしばき隊について語ればいいのに。オープンレターの限界なのだろうか…
— やん (@skd7) August 24, 2024
「しばき隊」とはなんだったのか -21世紀のダーティー・ハリーの栄光と没落 https://t.co/J2vEZG77ex https://t.co/dw2WXHzo15
あー、典型的な「自分の非専門分野にいっちょかみして野生の専門家に指摘される」案件では。
— Kanna🐱 𝕏 ケンタウロス(凍結しました) (@9821xp) August 24, 2024
しかし言及先Webサイトの「フェミニスト批評家」ってなんぞ??? https://t.co/epif6WikMk
結局の所、フェミニストの有名論客が、有識者なら見てて当たり前のダーティハリーっていう映画を今更初見して、炎上狙いで臭してて、それを見た泡沫アンチフェミが、それ見たことかと臭してるっていう、どっちもどっちって話なだけね https://t.co/ev1cTGTT25
— ガルボ・ジック (@garubo_jick) August 25, 2024
オープンレターと思ったらオープンレターだった https://t.co/0FNShCZvux
— 雷 超七 (@fc1_super7) August 24, 2024
また馬鹿フェミの間抜けさを晒してんのね。 https://t.co/NjuKPT20Rq
— ダイユウサク (@0_K0_K) August 24, 2024
※北村氏は女性、研究者、批評家、フェミニスト、オープンレターとネットのごろつきが敵視する要素盛り沢山なので炎上した感じ。
※他人に対して「共産党!」と呼ぶのと同じで意味のある鳴き声ではない。北村氏をフェミニストと置くかどうか、オープンレターと何か関係があったかは詳述しても良かったのだが……ここでは実際に関連があるかどうかは意味がないので書かないことにする。
例の映画にわかの人、遅れてやってきた秘宝系というか、サブカル者として世代闘争の相手が欲しい人なのかなという印象です。でもかつて隆盛を極めたらしきTwitterサブカル論壇は既に黄昏、みたいな。でも、闘う相手が居ないなら無理に探さなくていいのになと思います。
— Lhasa (@ex_Lhasa) August 25, 2024
※映画秘宝関連のサブカルの空気や流れも関係していそうだが、私はその辺も詳しくはないので……。
※後述する町山のことを加味するとかなり関係ありそうなので、また調べてみてもいいだろう。
延焼
『ダーティハリー』がドン・シーゲルの中でもやや扱いの難しい作品だってのは映画批評的に定説だったりするんですよ。企画はもともと他人のもので、ウェインやシナトラ等のあとイーストウッド&シーゲルに回ってきて、彼らは政治的には全く異なった意見(ガチ保守とリベラル)の持ち主(→)
— 大寺眞輔@新文芸坐シネマテーク (@one_quus_one) August 25, 2024
でもまあ、『ダーティハリー』の物語内容的な議論をニューシネマ全般につなげて語るのは色々難しすぎるのではないかとやっぱり思いました。
— 大寺眞輔@新文芸坐シネマテーク (@one_quus_one) August 25, 2024
話題の元になった北村紗衣氏の記事を読んでも最初っから氏は『ダーティハリー』はニューシネマの影響下にはあるんだけど”物語内容的な議論をニューシネマ全般につなげて語るのは色々難し”いって話をしているので、なんか延焼してるうちに論点がズレまくって伝わってる気がする https://t.co/8IcHFsnOuw
— 鏡屋譲二 (@squaremania) August 26, 2024
※本筋の議論から離れていく。
60年代後半から70年代に、アメリカン・ニュー・シネマ(英語ではニュー・ハリウッドと呼ばれます)という潮流がありました。何らかの体制に抑圧されている若者たちが、なんとかして現状を打破しようする反体制的な要素と、あからさまな暴力やセックス表現が主な特徴として挙げられます。あとでお話すると思いますが、私はニュー・シネマ自体があんまり好きではありません。
『ダーティハリー』もこのニュー・シネマの影響下にある警察映画だと思うんですが……でもニュー・シネマ的なのかどうかがよくわかりませんでした。というのも、この映画は、アメリカで民主主義が機能していないためにハリーのような法を守らない刑事が活躍してしまう、みたいな話だと思うのですが、これを風刺として描いているのか、それともハリーのことをかっこいい警察だと肯定的に捉えているのか、いまいちよくわからなかったんです。そこがすごく引っかかったんですよね。
※『ダーティハリー』とアメリカン・ニューシネマの関連について大元ではこう語っている。
#ダーティハリー
— 七涙八喜 (@superexpress109) August 26, 2024
「メチャクチャな犯人とダメダメな刑事のポンコツ頂上対決?」と言って、ニューシネマに勝手に分類して炎上してるの、女だったのか…誤解恐れずに言うけど、そういう女は観なくていいです! pic.twitter.com/0Cb8lYcFTz
分類してない。「ニューシネマの影響下にあるけどその視点で分析しるのは難しい」って話をしてる。こういう記事も読まずに性差別発言する人が出てくる。https://t.co/gOKM9p2Xya https://t.co/QR1bFi2Pg9
— saebou (@Cristoforou) August 26, 2024
※記事を読まない馬鹿が続々と出てくる。
原因はこいつか
『ダーティ・ハリー』がニューシネマとして論争になってるようですが、『ダーティ・ハリー』は狭義の「アメリカン・ニューシネマ」には含まれません。既存のハリウッド・システムとベテランの職人による、むしろ反ニューシネマです。
— 町山智浩 (@TomoMachi) August 25, 2024
「『ダーティ・ハリー』がニューシネマとして論争になってる」わけではなかったので(「ニューシネマの特徴は暴力やセックスではない」という人がいたので論争になっていました)、そもそも何が論争になっているのかの認識がおかしく、いっちょかみです。https://t.co/D0H3zNl0oW
— saebou (@Cristoforou) August 26, 2024
※町山のいっちょ噛みで間違った論点が拡散されているのだろうか。
そこなんですよ。
— 僕@今年ベストは夜明けのすべて (@ika_0302) August 26, 2024
別に、さえぼうさんが町山さんを攻撃したこともないはずなんです。
それなのに、さえぼうさんが攻撃されてるときには、必ず薪をくべにくるんですよね。(以下のtweetは特に酷かった)
気持ち悪すぎる。 pic.twitter.com/Mj1ImIBhCp
※なんかちょくちょく絡んでいるらしい。
町山さんがは
— サカサマタジマ (@tajima_69) August 26, 2024
「そうだったんですか!」とか
「その件については言ってないですよ!」とか、
後からどうとでも言えるように微妙に本筋には触れずに、本人には何も言わずに煽るの本当にクソね。
※実際今回の件も直接は言及せず、分離した話題のように扱っている。
ダーティハリー
駄目な刑事
警察も犯人もダメダメな警察映画。実は『ダーティハリー』ってそんな感じで、世間一般の格好いいイメージは2以降に固まっている節があるっぽいんだよな。 https://t.co/0LrDherMjT
— 紅藍@カクヨムで新作『偽王子事件』連載中 (@akaai5555) August 25, 2024
2以降はともかく、初代はマジでハリーをかっこよく描く気があったのかよく分からない。怪しいやつを追って家を覗いたら出歯亀を疑われたのはまあいいとして、張り込みの途中に覗きし始めるし……。ハリーが適切な手続きで逮捕してればすぐ終わる話だし。
— 紅藍@カクヨムで新作『偽王子事件』連載中 (@akaai5555) August 25, 2024
北村氏ほどの人物でも評価に困ることあるんだ……というのは新鮮というか「あ、これやっぱ見方に困るやつなのか」という変な安心感すらある。犯人もマジでポンコツだから……。まあこの手の警察映画自体、刑事の知能に合わせたように犯人も割合単純な思考をしがちではあるんだが……。
— 紅藍@カクヨムで新作『偽王子事件』連載中 (@akaai5555) August 25, 2024
※個人的にはこういう認識。
キャラハン刑事という男
いや実際に警察官としてはダメダメだしそういう風に描かれてますが…。 https://t.co/O1jBnk6PdA
— 土偶 (@dogu_fm) August 25, 2024
お世辞にも優秀な警察官とは言えない。法を守っているかも怪しいときがある。だから「ダーティー・ハリー」なんだよ。だけど人間としてというか自分なりの一線を持ってる。
— 土偶 (@dogu_fm) August 25, 2024
まあ、私はダーティーハリー好きなのであんな感じに論評されてカチンとくる人の気持ちは非常にわかりますが…
— H.イワシタ IN THE WASTELAND (@iwa_jose) August 25, 2024
でも、「あいつがやったってわかりきってるのになんで思い切りとっちめさせてくれねーのよ!」というフラストレーションを最後に爆発させるという構成なので、犯人がバレバレかつ警察機構が無能になってるのはあると思う
— H.イワシタ IN THE WASTELAND (@iwa_jose) August 25, 2024
ダーティーハリーも警察機構への不信感はあると思うけど、北村さんとは不信の方向性がぜんぜん違うというか、なんなら真逆だよな。法に則ってるのか信用できないというのと、法なんかに縛られてるから頼りないというのと
— H.イワシタ IN THE WASTELAND (@iwa_jose) August 25, 2024
ある種のガマン劇ですよね、ハリーとスコルピオの関係
— 〇〇怪獣 バスコドン (@vasco_1970) August 25, 2024
『ダーティハリー』のハリーは、ラストでバッジ捨ててますしね。被害者の人権はどうなんだ? という話でスコルピオという最悪の外道を出して、神の代行者であるハリーと対決する。だから最後の一弾は神が決する。そのうえでハリーは私刑を行ったことで刑事をやめる。時代劇のような勧善懲悪ではない。
— 〇〇怪獣 バスコドン (@vasco_1970) July 21, 2019
スコルピオとの対決で「何発撃ったか〜」の話が始まるのは、運を天に任せる(=ハリーが正しければ弾倉に弾が残っている)ことで、ハリーはそこに運ぶだけの責任を果たし、裁きはしない神の代行者という立ち位置で、ハリーが私刑をしているわけではない、という余地を残していると思っている
— 〇〇怪獣 バスコドン (@vasco_1970) August 25, 2024
単純に私刑を肯定しているわけではないんだ、というのは第二作でモロに主題化されますしね
— H.イワシタ IN THE WASTELAND (@iwa_jose) August 25, 2024
今観ると……. の話はさておいて、私刑全肯定の話ではなく「この世の悪に対しての態度」の話としてはまだまだ普遍的だと思うんですよ。その意味で独善ではない説明の余地も残しているし。
— 〇〇怪獣 バスコドン (@vasco_1970) August 25, 2024
ハリー・キャラハンは現代どころか、公開当時からしてもマチズモバリバリの男で、その彼が自己へ課した荒々しい規範を更に上回る混沌と直面した時どう対処するかがテーマと思うのですけど、結局観客は彼の悪しき男性性を認めつつそのケレン味に痺れる、褒められない愉しみ方をして来たと思うんですよね
— 鈴界リコ (@rico55blmnd) August 26, 2024
※ダーティハリーが好きな人もハリーの刑事としての職業倫理などに問題点を感じることはあるようだ。
※それはそれとしてダーティハリーは好きだしポンコツ刑事と呼ばれるとかちんとも来る。でも事実だから上手く反論できねえ。映画オタクのサガ。
※北村氏の警察不信(警察は規則を守らない)とハリーの警察不信(ルールを守っていたら被害者を守れない)という差。
※天に采配を任せる「何発入っているか」という演出。
個人見解1
ハリーの魅力、一作目で出歯亀に間違われて近隣住民に囲んでボコられた時に銃も警察バッジも出さなかったところに集約されている気がする。割と暴力性を売りにする刑事キャラとしては珍しい対応。 https://t.co/QACHPJYRtK
— 紅藍@カクヨムで新作『偽王子事件』連載中 (@akaai5555) August 25, 2024
ハリーが作中で本筋と関係ない事態の解決に出ることも多いけど、ドンパチだけじゃなくて自殺未遂の人を助けたりもする。いい意味でも悪い意味でも「汚れ仕事専門(ダーティ)」なのが魅力ではある。
— 紅藍@カクヨムで新作『偽王子事件』連載中 (@akaai5555) August 25, 2024
ゆえあって暴力性の高い刑事キャラの出る作品を確認していたんだが、罪のない市民へ威圧的に出る刑事が普通なんだよ。『コブラ』とか駐車のために他の住人の車を自分の車で押し出した挙げ句、当然非難してきた相手のタンクトップを破った。なんで服破るんだあのシーン……?
— 紅藍@カクヨムで新作『偽王子事件』連載中 (@akaai5555) August 25, 2024
『あぶない刑事』も確か映画二作目の冒頭で女性に粉かけるために近くにいた男性を小突いてたよな……。暴力警官が市民にとって有害ってのは実のところ現代の現実だけの話でもないっぽい。
— 紅藍@カクヨムで新作『偽王子事件』連載中 (@akaai5555) August 25, 2024
個人見解2
『ダーティハリー』は西部劇の現代翻案。まあ言われてみりゃそうだなとは思う。ならばキャラハン刑事の武器が44口径マグナムなのも納得ではある。犯人がベトナム戦争の帰還兵という説を取るなら、「敵を己で作り出している」という点も類似するだろうか。先住民を敵とみなしたのは自分たちとするなら。
— 紅藍@カクヨムで新作『偽王子事件』連載中 (@akaai5555) August 25, 2024
暴力警官映画。ダーティハリーはまあ西部劇の翻案という位置づけでいいとしても、俺の中では『L.A.コンフィデンシャル』とか『フェイクシティ』が障害になっている。あそこの警官ナチュラルに倫理観終わってんだよ。そのせいで俺はエルロイにぶち当たらないといけなくなっている。
— 紅藍@カクヨムで新作『偽王子事件』連載中 (@akaai5555) August 25, 2024
マジでそのせいでダーティハリーから始まって「暴力警官映画的な話をきちんとした倫理観のキャラで出来ねえかな」と軽い気持ちで始めた警察小説のプロットが固まらねえ。エルロイの野郎ぶっ飛ばしてやる……。
— 紅藍@カクヨムで新作『偽王子事件』連載中 (@akaai5555) August 25, 2024
バド君が犯人の家にぬるっと侵入して撃ち殺した後、犯人の位置から銃を撃ってあたかも正当防衛を偽装するのを何の躊躇もなくやったあたりでマジで背景宇宙になったからね。フェイクシティでも冒頭で同じことしてたのでエルロイシティの伝統芸能だよあれ。
— 紅藍@カクヨムで新作『偽王子事件』連載中 (@akaai5555) August 25, 2024
ハリーとかコブラは「暴力的な刑事である」ことが最初から押し出されているから分かるんだけど、あの辺のキャラはぬるっとやるし周囲もそれが普通くらいのノリだからマジで意味分からなかった。普通に生活してたら突然異世界の秩序にぶち込まれたみたいになってた。
— 紅藍@カクヨムで新作『偽王子事件』連載中 (@akaai5555) August 25, 2024
でもバド君と違ってラドロー刑事のそれはなんかまだ受け入れられたんだよな。まああいつ病んでるし……みたいな空気感があったから。いや酒浸り刑事は停職させないとダメだが……。
— 紅藍@カクヨムで新作『偽王子事件』連載中 (@akaai5555) August 25, 2024