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私、人間。将来の夢、ロボット。

例えば、人は生まれた時から0という値があったとして。そこから刻む人生が、その目盛りを増やしていくのだとすれば。死というのは、ただそれを元通りにするだけだ、なんて言い訳じみたことを何回考えたのだろう。

動画の赤いバーを始めに戻すように。
書いた文字が消されていくように。

時々、ロボットであったらと思うことがある。
「delete」という機能を使えば、全て消えてしまう。そのロボットが学習したことも、組み込まれたプログラミングも。
自分の人生も、そんなふうにあったのなら。
プログラミングというレールに沿って、波風たてることなく生きていけたら。「失敗」したら「delete」を押して、全てを抹消して。
いとも簡単に白紙に戻してしまえるような人生なら。
きっと迷わず「delete」を押したはずだ。

ただふっと、誰の記憶にも残らず消えたい。存在そのものを無かったことにして、消えたいんだ。そして、死にたい。人間の「死」って、きっと「delete」と一緒だから。

なのに、今でも死ねないのは、その勇気がないから。
笑えてくる。死にたいのに死にたくないなんて、矛盾も甚だしい。結局生きたいんじゃないか、未練がましく死にたくないんじゃないか。そう自身を何度嘲笑ったことか。それでも、たとえ自分の手で「delete」を押せなくても。生きたいではなく、死にたいという気持ちが勝っている。

誰かが「delete」を押してくれたら、なんて。
都合のいい願いをいつまでも抱えている。

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