エジプト1人旅 12

エジプト1人旅、さいご
残したメモと記憶を辿りながら書いています。

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ホテルの朝食を食べようとロビーに行くと、昨日部屋を変えたアッシュは、眠そうにコーヒーを飲んでいた。
「ようナオキ、部屋変えたらめちゃくちゃ居心地いいぜ」
「俺の部屋人多いし、エアコンあんまり稼動しないもんな」
ホテルの朝食の揚げ焼きされたオムレツをコーヒーと共に流し込んだ。
チェックアウトをする前に、バックパックを、ホテルに預け、最後の旅をする。


早朝のタハリールスクエア、これもラストか。

アッシュと電車を乗り継ぎ、
オールドカイロ地区のムアラッカ教会(ハンギングチャーチ)へ。創建は3世紀までさかのぼる。

(壁画にはジーザスクライス)

その後聖ジョージ教会へ。
この教会はイエスの家族が難を逃れるためにエジプトに渡ったという伝承に述べられていて、一行が身を寄せた場所に建てられている。この一角に教会が多いのもこの伝承のためらしい。オールドカイロには原始キリスト教の流れを汲んでいるコプト教がいまでもいるため、教会などが点在しているらしい。建物内部は薄暗く、かなり傷んでいるようだった。



その後イスラーム地区へ。移動途中に沢山のバラックがみえる。建設途中で再開のめどがなさそうなビル、そこには洗濯物が干されている。
ぼんやりと歩きながら眺めていると
「エジプトにああいう完成途中の建物が多いのは完成したら土地代とかを払わなきゃいけないからわざとああしてるんだぜ」とアッシュが教えてくれた。なるほどね。

イスラーム地区のガーマ・ムハンマドアリへ。
初めてガーマ(寺院)にいったけどこれはすごい。壮大な装飾と天井は丸いドーム型になっていて、大きなシャンデリアとランプ、ステンドグラス。華やかな装飾はかつてのイスラームの王朝の栄華を残していて、人々にとってガーマが精神の拠り所であったのかを感じることができる。

その後託しドライバーを雇う。

ケイヴチャーチへ。
ここは洞窟から切り崩して作ったかのようになっている。教会にはいるまえに短いトンネルを通り、抜けると上に広がっていく座席を見ることができた。

ケイヴチャーチに向かう途中、窓から入ってくる空気が口元を覆いたくなるようなゴミの匂いがした。聞いてみるとここ近辺は貧困地区らしく、ゴミをこの地区一体に集め、そこからリサイクルできるものを集めて売り捌く、それで生活をしている人々が多くいるらしい。たしかに、山積みのスクラップされたゴミのようなものを載せたトラックをあちこちで見かけた。
リアルを見るといかに自分が恵まれた環境の中で生きることができているかを実感する一方、では自分がそのような環境にガチャガチャで生まれることができて、何ができるのだろう、自分の使命は何なのだろうと漠然と大きなことを考える。

ケイヴチャーチから車を走らせて、到着した
ブルーモスク。概観は意外と質素だが、中に張られているタイルが青い。トルコにある有名なブルーモスクに似せて作られたといわれている。


最後に向かった場所は
ガーマ・アフマド・イブン・トゥールーン。
カイロに現存する世界最古のガーマだ。
ここはすごかった。中庭を囲む回廊には歴史的な雰囲気が漂っていて、まるで時間の中で
この空間だけ置き忘れられてしまっていたような場所だった。このような場所に来るとどこか侘しいけれど、吹く風には少しばかりの温もりがあるような、言葉では形容できない気分になる。
1番長くいたガーマだったかもしれない。

(まるで、自分をずっと待っていたかのような不思議な感覚に襲われる、エジプトで何度も経験したけど、毎回息を呑む。慣れることはない)

カイロ近郊へ戻り、ホテルに戻るとアッシュに
別れを告げる。また、どこかで。


ドミトリーをチェックアウトし、外を出ると夕焼けの時間になっていた。砂漠でもエレファンティナ島でも夕焼けは見たけれども、この夕焼けは旅の終わりを知らせていた。

お土産屋でマグネットと手編みのポーチを買った後に、バスロータリーに向かう前に最後にコシャリレストランへ。持ち帰りにした後に、道の脇にある売店でビンのペプシを買った。旅に来た時は何もかもが不思議で特別なモノだ。その後4.5日すると少し慣れて、最後はまた特別に感じる。
人生の豊かさを知る秘訣はこの感覚を享受できるかどうかなのかもな。

バスロータリーでコシャリを食べて、
思いの外時間通りに来たナンバー356空港行きのバスに乗り込む。窓の外から見える景色はまるで初日の夜を感じた気持ちと共に巻き戻すように流れていく。あそこで降ろされたけどタハリールスクエアのホテルまで意外と距離あったな。あそこのお店結局行かなかったな。なんて、1人旅特有の感覚がやってくる。

ごった返すカイロ国際空港に到着した後、
チェックインにする前に、生暖かい、慣れ親しんだエジプト、アフリカの風を大きく吸い込む。
さよなら、また、いつか。と別れを告げる。


トルコ行きの飛行機はまさかの大遅延で
8時間空港に滞在。

(夜10時発が朝の5時に飛行機に乗り込みました)

もちろんトルコ発の飛行機は逃してしまったので
イスタンブールで航空会社にホテルを手配してもらい、近くのホテルで一泊。
こんなことにも動じない自分がちょっと誇らしかった。

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一体、自分にとって1人旅とはなんなのだろう。
自由と孤独。
人に優しくなれる。
自分の心の声が聞こえてくる。
ちっぽけな自分を知る瞬間がある。
昨日までの自分を脱ぎ捨てる、
昨日までの知らなかった世界を抱きしめる。
いっぱいあるな。
でも、1つだけ確かなのは
自分の外の世界を広げると同時に、
自分自身の中も深く、潜りながら旅をしている、ということなのかもしれない。

ヘミングウェイの
「あちこち旅をしてまわっても、自分から逃げることはできない。」という言葉を思い出した。

たとえ、忘れても
旅は自分の心と人生を豊かにしてくれる。


おわり。


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