笠井敦司

高校教育、国語教育、学習評価、カリキュラムマネジメントあたりをメインのフィールドに、た…

笠井敦司

高校教育、国語教育、学習評価、カリキュラムマネジメントあたりをメインのフィールドに、たまに随想や、読書感想文を書きます。高校教員。

最近の記事

論理国語「書くこと」でわかる〈知識・技能〉,まわる〈思考力・判断力・表現力〉

1_はじめに-くるくるまわる国語力-「習って読んで 使って書いて 話して聞いて わかってくる くるくるまわる国語力」の実践とその理論について発表します。実践したある単元を題材に、生徒の取り組みや成長の具体例を用いながらその効果や可能性について説明します。この実践の学習理論等との関連も示しながら、『論理国語』の授業のデザインについて提言するものです。なお今回の単元テーマは「論理的に読む・書く」で、活用する「知識・技能」は“接続表現”です。 2_「読むこと」偏重への疑問-読むだ

    • 令和7年共通テスト国語試作問題第A問

      大学入試センターからのリリース情報 2022年11月9日、大学入試センター(以下,センター)から、令和7年度大学入学共通テスト問題作成の方向性,試作問題および各試験科目の概要・時間割イメージが発表されました。なかでも『国語』は「現代の国語」「言語文化」という新科目を土台として作題されるため、どのような大問構成となるのかが注目されていました。これに先立ち、試験時間が80分から90分に拡大されるという情報は示されていたので、複数の文章や資料を参照して読解する問題が追加されること

      • 学びのトンネルに灯りを 06

        トンネル点検のおさらい  生徒は因果も、具体も抽象も、ほんとうは何もわかっていない混沌のまま、断片的で短絡的な読み飛ばしをしているのではないか…?つまり、読解の基本的な「見方・考え方」「フレーム」を持っておらず、その場しのぎをしていただけなのかもしれない……という例を前回ご紹介しました。そして「現代の国語」では、教材内容・コンテンツよりもむしろ読解のフレーム、見方・考え方、すなわちコンピテンシーにスポットを当てるべきということ、授業では生徒にそれらを目的化して展開していく必

        • 学びのトンネルに灯りを 05

          トンネル点検のおさらい  前回は「現代の国語(現代文B)」の授業展開を例に、学習者の#クラヤミを#ヤミクモに進まないようにするための工夫、言わば、あかりの灯し方を説明しました。それは「読解の全体システムとサブシステム」を提示してデフォルト化し、常に一定のワードで説明する(#ハッシュタグ化)ことで見方・考え方を内化するというものでした。文章を読解する際に学習者がこれを活用して視界を開き、自力で暗闇の混沌を秩序立てて理解する。時に周囲の助けも借りながら、解像度を高めていく。この

        論理国語「書くこと」でわかる〈知識・技能〉,まわる〈思考力・判断力・表現力〉

          学びのトンネルに灯りを 04

          トンネル探検のおさらい  前回はトンネルの暗闇がどのようなものかを詳しく分析し、そのなかで闇雲に歩き回り、立ちすくむ学習者の姿を浮き彫りにしてみました。この#クラヤミ(「なにがわからないかわからない」トンネルの中にいる生徒の状態を切りとった概念として、#クラヤミ,そこでもがく状態を#ヤミクモと表記)を再掲します。 一般論と主張の取り違え 具体と抽象の誤認 因果関係の逆転 対比の意図の無理解 類比関係の無理解 レトリック・比喩の誤解  上記6点は、評論文の「大き

          学びのトンネルに灯りを 04

          学びのトンネルに灯りを 03

          評論文読解のトンネル  「入力」「出力」の間にある、「回路」に光が当たっていないために学習者がその不具合を認識できず、暗闇になっていること、これが「トンネル」の正体ではないか――そして授業者が「回路」へのアプローチを捨て置いたまま、宛先のない知識の置き配を積み上げることでトンネルがその闇をさらに深くしている――というお話を前回しました。今回はトンネルの実際の姿を評論文読解のフィールドで考察します。   一般論と主張の取り違え 具体と抽象の誤認 因果関係の逆転 対比の

          学びのトンネルに灯りを 03

          学びのトンネルに灯りを 02

          トンネルの正体「どう勉強したらいいかわからない」「何がわからないのかわからない」「説明されればわかるけど、自分でやれる気がしない」こうした感想が漏れ聞こえる教科の代表が「国語」でしょう。なぜこのような事態が懲りることなく延々と続いているのでしょうか?より多くの知識を理路整然と網羅的に教え、テクストを手取り足取り丁寧に読解しているのだから、読めるようになっているはずだ・・・という期待は、テストのたびに見事に裏切られます。しかし、少し考えればそれは「裏切り」でも何でもなく、むしろ

          学びのトンネルに灯りを 02

          学びのトンネルに灯りを 01

           「学力」について論じる際、電子機器にまつわる語彙をレトリックとして用いることがあります。口さがない人は、“OS”や“CPU”などPC周辺の用語で生徒の能力=“スペック”の高低をたとえたりする人もいます。――それはさておき、知識を記憶し定着させることを「入力」、問に対して言語で答えることを「出力」などという表現は、さほど抵抗感なく用いているような気がします。端的でわかりやすく、学習者のウイークポイントを指摘する際に便利です。しかし、言葉を単純化すると、その際に言語化されず切り

          学びのトンネルに灯りを 01

          模擬試験前後の対策はどうあるべきか?

          「模擬試験対策」をすべきか、すべきでないか?―学校としての姿勢 石川県の小中学校において、全国学力調査直前に、授業時間を使って過去問対策を行っていたことが明るみに出て、行き過ぎた事前対策だとして問題になっています。管理職の指示で学校ぐるみで組織的に行われたものか、教科担当が個人的に行ったものかはわかりませんが、少なくとも「わが校の、わが市の平均点を他よりも高くしたい」という思惑が動機となっていることは確かです。学力調査の趣旨を無視し、授業を削って対策し平均点を上げて見栄えをよ

          模擬試験前後の対策はどうあるべきか?