宮田晃碩

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  • ケアについての往復書簡

    • 6本

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Digesting My Residue #1

人はつねに自らを生きていると錯覚する すべては空なりと呼ぶ声は誰に聞かれているのか 鐘の音の鳴り止む前に人は絶える それを逆さまに読む者へ向けて我々は般若心経を唱えよう 我々が我々のことをついに忘れて眠るために

    • 往復書簡 #6 何かを言うより聞いていたい

      前のお便り:往復書簡 #5 「この私」という解釈、存在と生成の肯定 前回のお便りからかなり時間が空いてしまいました、お待たせしてしまい大変申し訳ないです。なにを書こうか、考え込んでしまいました(と書き出して4,000字ほど書いたものを、さらに1ヶ月以上仕舞い込んでしまいました、すみません...)。考える時間をいただきありがとうございます。 中学生が慌てて提出した卒業文集のようで恥ずかしいのですが、「ぼくはいま、なにを書こうか迷っている」というような書き出しになります。瑛さ

      • 往復書簡 #4 守りの「無知」と丸腰の「証言」

        前のお便り:「自分は弱い、だから助けてほしい」という強さ お返事ありがとうございます! アルコール依存症のお話、そうだったのですね。たぶんその当時は、あまり密にやりとりしていなかったのか、全然心づきませんでした。いまこうして振り返って話せる出来事になっていて、よかったという思いと、すごいという思いで読みました。 自分の知らないところで苦しんでいる人は、思ったよりたくさんいるのですよね。いつも自分の想像できる範囲を超えて。 その背景も含めて、いろいろな「引き継いでしまった

        • 「弱さ」ってどこにあるのでしょう

          瑛さんへ 往復書簡のお誘い、ありがとうございます。こうやって一緒に考えられるのはとてもうれしいです。どうなっていくのか楽しみですね。 お便りをいただいてから、ぼくの弱さとはなんだろう、ということを考えていました。弱さをかくすための強がりとはなんだろう、とも。 考えてみた結果、弱さを自覚するのは難しい、ということが分かりました。もちろん、ぼくは非常に弱いです。そのことを知っているつもりです。4月からは実家に戻って生活を依存しているし、研究の面でも無知なことばかりだし、将来

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          さようなら、ぼくたちの……(シン・エヴァンゲリオン劇場版 ひとまずの感想)

          備忘録として。 一緒に観てくれた友人に送りつけた感想をそのまま。 ↓↓↓↓↓当然ながらネタバレあり↓↓↓↓↓ 「めちゃくちゃ良かった! 最高!」と言い切れるかどうか、まだ確信はないのだけど、ただ思い返したときに登場人物のそれぞれに対して「よかったね...!」という温かい気持ちがわくので、そういう意味ですごくよかったな...と思います。ちゃんと彼らを送り出してあげた感じ。 なんというか、シンジ君は「俺たちのシンジ君」じゃなくなってしまったし、アスカは「俺たちのアスカ」じゃ

          さようなら、ぼくたちの……(シン・エヴァンゲリオン劇場版 ひとまずの感想)

          痛みの無縁塚

          何かが言葉になるときの痛み、というものを忘れぬようにしよう。 森元首相の辞任に触れて、「EXITの兼近」という人が「『偉そうなジジイ降ろしてやったぜ』って感じがして気持ち悪ぃ」と言った、そういう話を人々が波紋のように広げていて、私のところにもそれが届いた。その人のものとして断片的に届いた言葉を借りれば、私自身その「切り取りの文字」を読んだに過ぎないのだが。 それは理解できる心情だ。規範を逸脱するものへの攻撃、憂さ晴らしの標的にされたのだとすれば、それは気の毒なことなのだ。

          痛みの無縁塚

          Book Cover Challenge (6, ?日目)

          #BookCoverChallenge Day 6 (2020/09/30) サン=テグジュペリ『人間の土地』(堀口大學訳) (Antoine de Saint-Exupéry "Terre des hommes") ぼくら人間について、大地が、万巻の書より多くを教える。理由は、大地が人間に抵抗するがためだ。人間というのは、障害物に対して戦う場合に、はじめて実力を発揮するものなのだ。もっとも障害物を征服するには、人間に、道具が必要だ。人間には、鉋が必要だったり、鋤が必要

          Book Cover Challenge (6, ?日目)

          Book Cover Challange (5, 6?日目)

          #BookCoverChallenge Day 5 (2020/09/28) 西村ユミ『語りかける身体:看護ケアの現象学』ゆみる出版、2001年 いわゆる「ケアの現象学」と呼ばれる分野の著作。傑出した仕事だと思う(2018年には講談社学術文庫に収録された)。この本の説明を、裏表紙の紹介文でもって代えることにしたい。 いわゆる植物状態と呼ばれる患者は外側から観察されるかぎり、なんのふるまいも声を発することも出来ず、他者との交流が不可能な存在とされている。しかし、実際にケ

          Book Cover Challange (5, 6?日目)

          Book Cover Challange (3, 4日目)

          #BookCoverChallenge Day 3 (2020/09/26) Martin Heidegger "Sein und Zeit" (1927) (マルティン・ハイデガー『存在と時間』)  実は今日9月26日はハイデガーの誕生日らしい。1889年うまれなので、131歳ということになるか。毀誉褒貶の著しい哲学者であるが、私自身は好きでも嫌いでもない。しかし本当に自分の頭で考えようとする、そのために自分の頭で考えるとはどういうことかについて愚直に考えるような質

          Book Cover Challange (3, 4日目)

          Book Cover Challenge (1, 2日目)

          #BookCoverChallenge Day 1 (2020/09/24) 石牟礼道子『苦海浄土』講談社、1969年(文庫版1972年)  『苦海浄土』を手に取ったのは、2018年2月に石牟礼道子さんが亡くなった、そのあとだった。新宿の紀伊國屋で、薄青色の文庫本が並べられていたのを覚えている。  ここには打算めいたものもあった。この本との付き合いをあまり純化して語ることもできない。自分の生活のなかで読むほかないのだから。しかしその「自分の生活」に幾条も、亀裂のように

          Book Cover Challenge (1, 2日目)