【ネタバレなし】ハーヴェステラがとんでもなく面白かった話
みなさんこんにちは。りんねと申します。
先日クリアしたハーヴェステラという作品が想像の1000倍くらい面白かったので、プレイ後のクソデカ感情を添えてレビューをお届けしたいと思います。いやほんと素晴らしい名作でした……
ハーヴェステラが描いた、RPGというジャンルの魅力
突然ですが、RPG(あるいはJRPG)というジャンルの面白さは何から生まれるのでしょうか。
魅力的なシナリオ、世界を彩るグラフィックやサウンド、爽快感を覚えるバトルなど、RPGを構成する要素は多くあると思いますが、とりわけ重要なのが世界という要素です。
世界とは、単に世界観だけを指すものではなく、物語に登場するキャラクターやその人間関係、キャラクターたちが息づく舞台、主人公たちが解決したい様々な理不尽や悲劇などを含めた、一つ一つの構成要素の総体だと考えてください。古典的なRPGから近年のRPGに至るまで、主人公一行は世界を知り、世界へ働きかけ、世界に何かしらの変化をもたらすという構造を取っています。それ故に、主人公が変革したい(あるいは守りたい)世界を丁寧に描かなければ登場人物の言動は陳腐化し、キャラクターは単にシナリオライターの傀儡と化し、世界はツギハギだらけの舞台演出装置になってしまうのです。
ハーヴェステラという作品は、この世界を描くという点で極めて丁寧な作り込みがなされていること、プレイヤーが世界に没入し、世界を愛せるようになる仕掛けが実に見事だったのです。RPGというジャンル、RPGの面白さとここまで真摯に向き合った作品というのも久々だった気がします。
世界を形作るもの
ここからは、ハーヴェステラの世界を構成する要素を一つずつ紐解きつつ、その魅力を語っていきます。
人生を描き、人生に作用する物語
ハーヴェステラには舞台となる街が4つあり、そこでは仲間キャラやNPCも含め、様々な人物が各々の人生を過ごしています。そんなキャラクターたちの人生が各種クエストで丁寧に描かれているのが、ハーヴェステラを彩る世界の魅力の一つといえます。
主人公のアインは絵に描いたようなお人好しで、困った人を見たら放っておけない人物です。初めはふとしたきっかけで交流を持ったキャラクターが、思わぬ悩みや困難を抱えていたり、予想もしなかったような真実を突き付けられ、立ち止まってしまったりすることがあります。しかし、アインの持ち前のくじけぬ心と相手に寄り添う姿勢は、彼ら彼女らの抱える困難を氷解させ、結果的にその人の人生をも変えてしまうのです。
アインはセリフを直接語ることはないですが、どのような言葉を相手に語りかけるかという選択を都度することで、相手にいかに向き合い寄り添うかをプレイヤーに考えさせる作りをしています。こうした選択一つ一つを行い、キャラクターの人生に作用していくことが、プレイヤーを上手く世界に引き込む仕掛けになっているのです。
大切な人が困難に直面した時、私たちはその人にかける言葉一つにも悩むでしょう。声かけ一つで、その人に希望も絶望も与えられるのですから。選択肢が表示された時、どちらの言葉を投げかけようかと悩む時間こそ、まさに私達(=アイン)がキャラクターの人生という世界の一部に寄り添っている瞬間なのです。
余談ですが、筆者的イチオシのサブクエストは「桜のいたずら」です。最後のワンシーンにおける言外のメッセージの伝え方は見事というしかありません。
また、キャラクターストーリーもメインストーリーでは描かれなかったキャラの側面や過去などを知ることができます。初めから好感度MAXの状態ではなく、関係性が深まるにつれて徐々にそのキャラが知られざる背景を語るという作りは個人的にツボでした。時間をかけて関係を深めるからこそ、そのキャラの人生に説得力が生まれてくるのだと思います。
キャラストーリーはエモとハイネのシャトラ組が個人的イチオシです。エモのキャラクエを終えたとき、筆者は「エモちゃんよくがんばったねえええ……」と涙となにかでずびずびになった模様です。
世界を彩る光と音
ハーヴェステラの世界は色彩が豊かです。ヒガン渓谷の秋の色合い、ネメアの桜あふれる街並み、シャトラや珊瑚の神殿の青い海、アルジェーンの白く彩られた景色など、それぞれの街やダンジョンに象徴的な色合いを思い描けるプレイヤーも多いのではないでしょうか。
決してハイクオリティなCGではないものの、こうした色彩の豊かさがハーヴェステラの世界をより印象的なものにしているのだと思います。
また、椎名豪氏が手掛けている素敵な楽曲の数々も世界を彩るものとして欠かせないでしょう。プレイヤーが世界に抱く感情を増幅させる、見事なメロディーでした。また、ボス戦は各話で異なる音楽が用意されており、力の入れようが伺えます。個人的に第3話の各ボスで流れる「運命に抗う者たち」は、戦闘への入り方も含めて心震えた楽曲でした。これで序盤のボス曲ってどういうことなの……
余談ですが、サントラの曲名はほぼネタバレなしなので、ハーヴェステラの音楽を聞いて惚れたら速攻で購入して問題ありません。自分は第3話Aクリア時点で購入しました。みんなサントラ買おうな!!(ダイレクトマーケティング
【余談】
楽曲に関して、「アナザーエデン 時空を超える猫」をプレイした方であれば思わずニヤッとするシーンがあります。是非お楽しみに…
面倒さから生まれる世界への愛着
ハーヴェステラ序盤は畑の敷地面積も狭く、植えられる農作物も少ないため、常に金欠と物資不足との戦いになります。自分も最初は「なかなかめんどいシステムだなこれ……」と思っていたのですが、バトルパートの難易度が低めに抑えられているのでそれでも何とかなってしまいます。
しかし、そうした面倒さにもめげずに毎日地道に畑を耕し、種をまき、水をやることで少しずつ手持ちのお金や資材が増えて回復アイテムを揃えたり装備を強化できるようになり、冒険の利便性が少しずつ高まっていきます。さらに、新たな街に行けば新たな作物の種やレシピを獲得できるので、それらを育てたり作ってみようというモチベーションにも繋がっていきます。
そしてこれが日常と化していくと、面倒なはずの農作業すらアインを構成する世界の一つになっていくのです。農作業や料理、クラフトなどを通じて「生活」をすることで、RPGの本来の意味である「ロールプレイング」をしみじみと実感できるのがハーヴェステラの醍醐味であり、ハーヴェステラらしさでもあると思うのです。
なお、個人的に農作業パートは農作業そのものを楽しむというよりは、冒険に必要な各種アイテムを揃えるためのクラフトパートだと思っています。RPGでお約束の「店売りの回復薬」や「敵を倒した稼ぎ」というものが存在しないので、農作業やクラフトを通じてポーションや万能薬、バフ薬を作成すると考えると、RPG慣れしているプレイヤーには理解しやすいのではないでしょうか。
【おまけ】美味しそうな料理の数々
ハーヴェステラを語る上で欠かせない要素の一つが料理。その料理のイラストがいちいち美味しそうにしか見えないので、ここではそのうちのいくつかを取り上げて紹介したいと思います。夜中にプレイするとナチュラルにゲームから飯テロされます。
世界を愛せるからこそ世界を守りたい
そして肝心のメインストーリーですが、「世界を知り、世界に働きかけ、世界を変える物語」というのが全体を通じたテーマとなっています。
シーズライトの異変を調べるために各地を巡っていたアインは、そこで世界がもたらした悲しみや理不尽を知り、仲間と共に困難に立ち向かううちに世界を変革する大きな流れへと身を投じていきます。特にメインストーリー後半は、予想を何度も裏切られる展開に加え、この世界の真相に迫ることになる、非常に読み応えのあるパートになっています。ここで寝不足になったプレイヤーも数多くいるでしょう。かくいう自分もその一人です。
また、シナリオの後半から終盤にかけては現代社会の問題を想起させるような内容もあり、思わず考えさせられる一面もあります。
しかし、ハーヴェステラの真に優れた部分はこうしたシナリオの素晴らしさだけで語ることはできません。これまで述べてきたような「世界」を演出するための一つ一つのコンテンツの完成度が高いからこそ、メインのシナリオの素晴らしさが際立つ作りとなっているのです。一見するとおまけ要素に見える「生活」や「交流」を通じて世界を丁寧に描き、一つ一つの選択や行動にプレイヤーが「あなた自身」の思いを込めることで世界に愛着を持たせ、息を呑むような展開のメインストーリーを展開することで、「ロールプレイング(=役割を演じること)」の根本的な面白さをプレイヤーに体験させてくれることこそが、ハーヴェステラを名作たらしめている所以なのです。
ハーヴェステラを楽しむための心構え
ハーヴェステラはこれまでにない形でRPGの面白さを体験させてくれる作品であるため、この作品を楽しむ上で重要な心構えがいくつかあります。それが以下のとおりです。
ハーヴェステラはRPGである
回り道も辞さず、時間を贅沢に使う
加点方式で見る
1つ目については書いてある通りなのですが、いかんせん「ファンタジー×生活」という新たなジャンルを開拓したため、農作業や生活、恋愛イベントなどに重きを置いた作品を想像すると面食らうかもしれません。ハーヴェステラはRPGであり、冒険に必要なものを揃えるために農作業などの生活パートがあると考えた方が良いでしょう。
2つ目については、メインストーリーだけを進めるのではなく、サブクエストやキャラクターストーリーなどを通じて世界をより深く知るためにも、是非回り道をすることをオススメします。農作業+サブクエをこなすうちにゲーム内で一日が過ぎることはよくありますが、時限イベントは存在しないので時間は贅沢に使ってOKです。
3つ目については、ハーヴェステラはグラフィックや戦闘、シナリオのいずれかが突出している作品ではなく、作品全体としての完成度が高い作品となっています。こういう部分が良かったというのを心に留めておくと、作品への満足度は高くなると思われます。
最後になりますが、ここまで読んでくださった未プレイの方は、是非本作品を手にとって、あなたの世界の物語を紡いでいってください。
【あとがき】情熱の炎を灯すもの
ハーヴェステラという新規タイトルについて、プロデューサーが高大輔氏、ディレクターが古屋海斗氏という発表を見た時、「ああ、この2人が関わっているなら最終的に素晴らしい作品ができるはずだ」という、どこか確信に近い思いを抱きました。その後、体験版騒動や様々な(再生数やPV狙いの醜悪な)ネガキャンが見られましたが、果たして蓋を開けてみれば確かな良作であるという評価がじわじわ広がっていったのです。
なぜ自分はハーヴェステラが素晴らしい作品になるって確信できたかって?それは、高Pはこんなことが生放送で言える人だからです。
「面白い」と思った作品を妥協せず作ることが、今までにない素晴らしい作品を生み出せる原動力になることを、自分は「アナザーエデン 時空を超える猫」という作品を通じて既に知っているのです。
そして、そんな情熱あふれる高Pの元で薫陶を受けた古屋Dが素晴らしい物語をアナデンでいくつも生み出してきたことも知っているのです。高Pから生まれた情熱と言う名の炎が古屋Dを始めとした開発陣に灯され、そして作品を通じてユーザーへと灯されていく。これがアナザーエデンという作品に今も根強いファンが多くいるきっかけとなっているのです。
だからこそ、あれだけの情熱の炎を燃やし続けられる2人が制作に携わっているのだから間違いないだろうと思えたのです。そしてそれは、実際にハーヴェステラをプレイする中で確信に至りました。「RPG」というジャンルに真摯に向き合ったからこそ、ハーヴェステラは生まれたのだと。
おかえりなさい。高P、古屋D。
あなたたちの生み出した作品に再び巡り会えたことに、心からの感謝を……あなたたちのミームは、確かに私たちに伝わりました。
星のみる夢は、これからもまだまだ続くんだよ。
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