ないしょばなし
わたげの中から
種がひとつ
そっと耳打ちしてくれました
自分は
黄色い花にも
綿毛にもならない
空たかくそびえる
入道雲になるのだと
想い描いてみました
指の先ほどもないたんぽぽの種が
むくむくむく
と膨らんで
最後には
入道雲になって
世界を見下ろすようになるところを
「ずいぶん大きな夢だねぇ」
そのひとことを
わたしは
心の中にしまっておきました
信じてみたくなったのです
これだけたくさんある種の中で
おそらくたった1人
大切に抱えている
誰よりも大きな夢を
はっきりと教えてくれたこの種なら
本当にこの夏
世界を見渡す入道雲に
なっているかもしれないと