プログラミングより プロジェクトマネジメント教育を 【シン・情報モラル 番外編】
日本は先進国であり、経済大国であり、教育水準も高く、科学技術も進んでいる。
...と思ってきた。
ところが、今やどうもそうではないらしい。
現場を見ればそうだろう。
IT業界は何十年も前から変わらず悲惨な長時間残業に頼っている。
優秀なプログラマーやネットワーク技術者はいるのに、多くの技術者を束ねて1つの目的に向かわせるプロジェクトマネジメントに優れている人材が少ない。少なすぎる。
そのレベルの低さは、もう何十年も変わっていない。
パンデミックという社会全体の危機に対応する国家レベルのプロジェクトがこのザマ。
プロジェクトマネジメント能力の欠如は危機対応時に如実に表れる。
それはIT分野だけに限らない。
阪神淡路大震災や東日本大震災の時がそうだった。
日本のトップの言動や国や自治体の対応が、不幸中の不幸を加速させてしまった。
人望があるとか熱血漢であるとか選挙で当選したとか、マネジメント能力以外の要素だけで選ばれたリーダーが悲惨なプロジェクトを量産する。
さらに、プロジェクトを構成するメンバーの意識も低い。
同質性の高いメンバーで構成されたプロジェクトは、
「とにかく仲良くしましょう」
「目上の者を尊重しましょう」
「問題は先送りしましょう」
「臭いものには蓋をしましょう」
といった暗黙の定めがあるかのよう。
日本社会に必要なのは、プロジェクトマネジメント能力。
それはマネージャーだけではなく、メンバーという立場にも必要。
その知識や能力は、IT関係だけではなく、企業経営や政治の世界でも、スポーツでも、安全保障の分野でも役に立つ。
情報教育で学ぶべきは、プログラミングではなく、プロジェクトマネジメント。
【追記】 2022.6.27
この5月と6月に社会的影響の大きな情報セキュリティインシデントが発覚した。
(1) 兵庫県の防災アプリ「ひょうご防災ネット」の保守の一部を北朝鮮技術
者が行っていた。
(2) 尼崎市の全市民46万人の個人データを記録したUSBメモリを再々委託
先が紛失した。
それぞれ国民の人命にかかわる情報や個人データを扱うシステムである。
その極めて重要なシステムの運用や保守を安易に外部に委託し、しかもその委託先についてまったくマネジメントしていない。いわゆる丸投げ。
委託先は再委託し、さらに再々委託し、勝手し放題。
その過程で故意にしろ過失にしろ情報がコピーされ改ざんされていても誰も気がづかない。
まったく情報やシステムをマネジメントしていないということ。
同じようなことが日本各地で起きていることは想像に難くない。
サイバー攻撃や不正プログラムではなく、マネジメントできない人間がぜい弱性。
この2件を教訓として、プロジェクトマネジメントがいかに重要かを気付いてほしい。