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トレーニング - 量と強度に関する一考察

トレーニングを考える上でベースとなってくる、量と強度。

どれくらいの量(時間や距離)を、どれくらいの強度(パワー)で行おうかと考えることは、一回のトレーニング内容はもちろんのこと、週や月単位の計画を考える際にも考慮すべきポイントになってきます。

しかし、これは考え始めるとなかなかの難題です。量と強度は一体どれくらいが効果的なのか?という疑問は、今も昔もコーチや研究者、そして選手自身にとっての悩みの種であり、唯一の答えはありません。

そこに何とか折り合いをつけるべく、先人が長期トレーニング負荷(CTL)と呼ばれる、トレーニングの量と強度を掛け合わせた数値でもってトレーニングを管理する術を開発し、現在ロードバイク界で広く普及しています。

CTLという一つの数値でトレーニングの経過を追える便利さから、様々なトレーニングアプリではCTL管理機能が標準装備されていたりもします。

そのような背景もあり、以前の記事ではどれくらいの長期トレーニング負荷(CTL)があれば、どれくらいのパフォーマンスに到達できるのか?という考察記事を書いてみました。

具体的には以下のようなグラフで関係をイメージしようというものです。

この図で示したような関係が全ての方にあてはまるとは考えていませんが、トレーニングとパフォーマンスについて、おおよその関係をイメージするのに良いのではと思っています。

是非活用してもらいたいと考えている一方で、CTLという数値だけで多くを説明しようとするのにも、やはり無理を感じます。論点は様々ありますが、トレーニング内容(量と強度の塩梅)について考慮できていない、という点は見過ごすことのできないポイントではないでしょうか。

VO2max系のトレーニングを主として行う場合、または低強度で長時間行う方法など、そのトレーニングの内容がどようなものであれ、同じCTLであれば効果は同じであるということが、先ほどの図では前提となってしまいます。

更に言うと、高強度帯のトレーニングを主体にしたCTLが低くなりやすい計画よりも、低強度で長時間行うような、高いCTLとなりやすいトレーニングの方がパフォーマンスが優れているという理屈にもなります。しかし、そうと限らないことは経験からも感じるところ。

「では、どれくらいの塩梅がいいの?」という疑問に行き着きますが、インターネットや論文など、現在得られる情報からはこの疑問に答えを出すことは難しいと感じます。

しかし、トレーニングの量と強度という問題を一緒くたにせず、どういう関係があるのかを解きほぐしていくことは、是非とも推し進めていきたい関心事です。

そこで今回の記事では、これらの問題を考える材料をご提示してみたいと思います。

是非、読み進めてみてください。


1. 考察材料

考察材料を作成するため、一つの論文を題材にし、私なりに加工を行いました。お伝えしておくべき工程のみご紹介し、込み入った内容は「5. 資料の作成過程」に記載しました。

参考にした論文は以前にもご紹介したマラソン選手(愛好家)のビッグデータを分析したものです。

一万人以上もの選手のレース結果、レース前180日分のトレーニングデータが分析されています。

内容について深く掘り下げることはしませんが、こちらで解析されている内容から逸脱しないよう数値を整理し直すと、

  • 縦軸に「トレーニング時間」

  • 横軸に「トレーニング強度」

とした、フルマラソンタイムの分布が描けます。

どのような変換を行ったかの詳細は、記事末「資料の作成過程」に掲載していますので、興味のある方はそちらでご確認ください。

この図はトレーニング時間とトレーニング強度で定まる一点が、どのくらいのゴールタイムになるかを表しています。各色の点線ラインは実施したトレーニングの量と強度で予想される、一般的なゴールタイム目安であるとお考え下さい。

この図はマラソンランナーにとっては有用かもしれませんが、自転車のトレーニングに励まれている方にとって、興味を持ってもらうにはまだ不十分だと思います。仮に強度の表示がFTP基準であったり、ゴールタイムの点線がパワーウエイトレシオであったりしたならば、親近感が増すはず。

そこで、マラソンのゴールタイムと富士ヒルクライムのゴールタイムの難易度を比較してみます。同じ持久系競技として、トレーニング状況とゴールタイム難易度に共通するものがあるという前提で話を進めていきます。

富士ヒルタイムについては私の以前の記事を、マラソンタイムに関しては以下の記事を参考にしました。

傾向として、以下のようなことが分かりました。ここでは男性の場合のみご紹介します。

【男性】
◆富士ヒルゴールド(65分以内):上位1%
⇆マラソン上位1%:2時間40分~50分あたり

◆富士ヒルシルバー(75分以内):上位10%
⇆マラソン上位10%:3時間10~30分あたり

◆富士ヒルブロンズ(90分以内):上位40%
⇆マラソン上位40%:4時間00分~20分あたり

このような関係を頭に入れつつ、実際の私のデータと照らし、また私個人の偏りが生じないよう信頼できる助っ人(後ほどご紹介します)にアドバイスをもらいながら、ロードバイク用の図に変換したのがこちらです。

富士ヒルで60分を切るような上位者(プラチナ)については、論文のデータ範囲から逸脱してしまい、上手く計算できないため記載していません。

横軸の「平均トレーニング強度」は6週間分のトレーニングを合算し、平均したトレーニング強度になります。

例えば、以下のような計算です。

強度はIF(Intensity Factor)と呼ばれる値。
アプリなどでも表示されます。
・強度80% 60分
・強度60% 90分
→ (80%×60分+60%×90分)÷150分 = 68%
トレーニング強度:68%
このような計算を、6週間分で行っています。なお6週間分で計算している理由は、CTLの計算方法と同様のものにするためです。

「平均トレーニング強度(%FTP)」のおおよそのイメージは、

強度65%-70%
週末のロングライドや通勤ライドがメイン。定期的にヒルクライムにチャレンジ。

強度70-75%
平日にZwiftなどで、スイートスポットトレーニングやVO2max系のインターバルなどの高強度メニューを入れつつ、週末にロングライド。

強度75%以上
トレーニングの半分を高強度帯のメニューで実施するような、かなり強度重視のトレーニング。


もう少し説明を続けます。この図で重要になってくるのが、個人差による変動です。

というのも、この図では体重や年齢、トレーニングの仕方、トレーニング歴、コンディションなど、ありとあらゆる変動要因を一旦脇に置いた、架空の「平均的な人」が示されています。そのため個々の状況によってどれくらい変動するものなのかは、お伝えしておく必要があります。

変動幅を正確に試算することは困難なのですが、おおよそ下の図のような振れ幅があります。

たとえば上の図、中心の緑丸が実際の記録点だとします。その量と強度のトレーニング内容からは、平均的には4.2w/kgほどのFTPであると予想されます。

しかし個人によって大きなばらつきがあって、それは緑の線で示した幅に及びます。FTPが3.5w/kgにぎりぎり届くパフォーマンスの人もいれば、FTPが5.2w/kg以上のパフォーマンスを出せる人もいます。

このような変動幅が想定されるものの、平均に近い結果を得られる場合の方が、統計的には多くなります。実際私の場合、実施結果は予想されるFTPと近しいところに分布します(下図)。

ここでお伝えしておきたかったことは、予想されるFTPと実際のFTPの間には大きな差が生まれ得るということです。たとえば年齢が高かったり、体重が重たくなることは、「平均的な人」に比べるとマイナスに影響すると考えられ、予想より下振れる一因となります。

このように予想点と実際の間に差が生じることには、ネガティブな面とポジティブな面があります。

ネガティブな点は、仮に今みなさんに週間トレーニング時間と平均トレーニング強度を計算してもらい、この図に一点プロットしてもらっても、予想されるFTPと実際のFTPの間にはいくらかの差が生じてしまいます。そこから何か考えを進めるのは困難かもしれません。

一方で、複数の記録をプロットしてもらうと、ご自身の傾向が見えてくることがあります。これがポジティブな面で、このことについては後ほど事例としてご紹介していきます。

最後に目安となる長期トレーニング負荷(CTL)を加えて、図を整理しておきます。

男性からの類推になります。

CTLは、基準にしたトレーニング条件(週6、週末長めのトレーニング)での試算値です。あくまで目安としてください。詳しい計算過程は、記事末に載せています。



2. 作成した資料から、考えられること

◆トレーニングの量と強度、CTL

まずは変動要因を一旦脇に置いておき、全体図から「CTL情報だけだと何がまずいのか?」について、一般的に言えることを考えていきます。

まず、男性のFTP3.5w/kgラインを見てください(下図)。

必要な条件(量と強度)さえ満たせば、様々なトレーニング方法によって目的とするパフォーマンスに到達できることが伺えます。

そして併記したCTLを見ていくと、トレーニング量と強度の塩梅によって、FTP3.5w/kgラインのCTLは大きく異なっています。

低強度で長時間トレーニングをする場合、このラインに到達するためには、割合大きなCTLが必要です。一方で、高強度のトレーニングを主体としている場合、そこまで大きなCTLは必要ありません。

このように量と強度の塩梅によって達成すべきCTLが異なるのに、たとえば「CTL40以上」という情報だけを鵜呑みにするのは懸命ではないでしょう。

次に、FTP5.2w/kg達成ラインを見てください。

このあたりの水準ではトレーニングの量と強度が変わっても、おおよそ同じようなCTLとなっています。よって、この水準でトレーニングを実施している人同士なら、CTLで情報を共有することでお互いのトレーニング経過が割合安定して把握できそうです。

以上を整理すると、

  • 予想されるパフォーマンスとCTLの関係は、週間トレーニング時間が少ないほど平均強度の違いでCTLが大きく変わるため、CTLの持つ情報は不安定である

  • 一方、週間トレーニング時間が長いほど平均強度の違いでCTLが変動することは少ないので、CTLの持つ情報は安定している

ここから、一般的にはトレーニング時間が少ない人ほどCTLだけを基準にするのはまずいだろうと考えられます。


今度は変動の幅に注目します。個人差という問題から、トレーニングの量と強度について考えてみます。

図を見てもらうと、たとえ同じトレーニング時間、強度でトレーニングを積んだとしても、得られるパフォーマンスは人によって大きな差があることは明らかです。

ここから、同じようなトレーニング計画、同じようなCTLであったとしても、人によってそのトレーニングから得られるものは大きく異なってきそうです。

そのため一般的に言われる「CTL〇〇」や「週間TSS〇〇」という基準は、たしかに目安となりますが、それが皆さんご自身にマッチするかどうかは五分五分の確率です。

ご自身にとって価値ある情報を見定めるには、量と強度から予想されるFTPに対してどのあたり(+もしくは-)に位置しやすいのかを、過去の記録を参考にしながら検証することが有用かもしれません。

そのことを、次の事例でご紹介します。


◆なすぴーさんの事例

続いては、個人内の変動を見ることで考察できることをご紹介します。

今回の記事では内容へのアドバイスやデータの提供など、なすぴーさんに多大なるご協力をいただきました。

なすぴーさんからいただいた、2021年~2024年の富士ヒルクライム前6週間分のトレーニング結果を図にプロットすると、以下のようになります。見やすさのため、横軸の強度範囲を65%-75%に狭めています。

なすぴーさんの場合、実施記録から予想されるFTP(丸)と実際のFTP(三角)には割合大きな差が見られます。特に2021年と2022年。

平均値(予想値)よりも実際のFTPがマイナス側に分布しがちな傾向自体は、悪い事でも何でもありません。なすぴーさんの状況が総合的に反映された結果であり、恐らくマイナス側のどこかになすぴーさんの基準点がある、というだけです。

注目したことは、2024年は予想されるFTP(丸)よりも実際のFTP(三角)がプラスに転じていることです。(下図)

これだけ大きくシフトするには、何かしらの変化が必要です。やや拡大解釈にはなりますが、「平均的な人」よりも好条件を整えた結果、プラスにシフトするようになったと捉えることもできます。

実際、なすぴーさんは2024年(今年)の富士ヒルクライムに向けて、コーチングを受けながら体系的なトレーニングをしていたとお聞きしました。

それによって効果的にパフォーマンスを高められたと考えれば、このような解釈も可能だろうと感じます。

4年間の推移を見るとなすぴーさんの試行錯誤が伺え、それが今年のベストパフォーマンスに繋がっていると考えると、素晴らしい経験をモノにされているなぁとも感じました。

複数時点の状況をプロットし、個人内の変化を比較することで、なすぴーさんの事例のように見えてくることがありそうです。


以上、作成した資料から考えられることの一例をご紹介しました。まだまだ考えられることはあると思うので、もし何か考察されましたら、コメントいただけると嬉しいです。


◆更なる理解へ

さて、今回の記事ではトレーニングの量と強度についての資料を作成し、考察を進めてきました。

トレーニング内容(量&強度)を考えることの重要性、CTLの情報だけでは片手落ちな状況が起こり得ることなどについて、記事を読む前よりも鮮明なイメージを形作ってもらえていれば幸いです。

そして考えをもう少し先へ進めていくと、「どうして量と強度を変えても、同じような効果が得られるのだろうか?」という疑問が浮かびます。

量を強調しても、強度を強調しても、条件を満たせば同じパフォーマンスに到達することができる。しかし、量で得られる体の適応と、強度で得られる体の適応は異なっていると考えるのが自然です。

どう異なっているのか?を考える方向性は様々ですが、私は筋組織やミトコンドリアの適応などについて知識を深めることを、理解の拠り所としています。

今回の内容から逸れるため詳細は記載しませんが、生理学や顕微解剖学(組織学)などの情報についてはいくつか記事を投稿していますので、是非そちらにも目を通してもらえると嬉しいです。

参考までに、二つ記事をご紹介しておきます。

トレーニング理論、生理学などの科学的なバックグラウンド、そして皆さんご自身のトレーニングデータ、これらが組み合わさることで、トレーニングというものについて、果ては皆さま自身について、深く理解することに繋がっていくと感じます。

これからも、共に学びを続けていきましょう。



3. おわりに

以上、トレーニングの量と強度について考察してみました。

今までの考察記事と同様、いくつかの前提を置き、論理の飛躍を行っていますが、確固たるデータや証拠を揃えることが困難な場合、アイディアを提起するには必要なことでもあります。

「この図が絶対だ」などと主張している訳ではなく、量と強度について、何か考えられる材料を作れないだろうか?という視点のもと、記事を書き進めた次第です。

また、今回の記事ではなすぴーさんに多くのお時間を割いていただき、様々なアドバイスやデータを頂戴しています。

ご協力の結果、資料の精度を高めることができたこと、改めてお礼申し上げます。

最後に、今回の記事はご批判を少々覚悟の上で投稿しています。その対象は資料の精度やそもそもの前提、その他様々なものがあると思いますし、そういったご批判は免れません。

そのような至らない点は全て私の責任ですので、ご協力いただいた方に矛先を向けないよう、お願いいたします。

何かご意見、ご質問があれば、私のXにダイレクトメッセージしてもらえれば、可能な範囲でお答えさせていただきます。

トレーニングはまだまだ分かっていないことが沢山あります。インターバルの本数は何本がいいのか、リカバリーはどれくらいが適切なのか、適応の個人差をどう判断するのかなど、例を挙げ始めるといくらでも思いつきます。

このような疑問に答えを出すためにも、基礎となる題材を提起し、納得できる点、違和感を感じることなどについての議論が拡がり、そこからまた新たな題材が提起されることで、将来的により精度の高い知識が形成されていくものだと考えています。

今回の内容がその叩き台になれば、嬉しい限りです。

この記事にかけた想いは、皆さまのスポーツライフがより豊かになること、その一点です。

今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。

また読みに来てください。


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4. 参考文献

  1. Emig, T.(2020). Human running performance from real-world big data. Nature Communications, 11(1).

  2. Williams, S.(2017). Better way to determine the acute: Chronic workload ratio? British Journal of Sports Medicine, 51(3), 209–210.



5. 資料の作成過程

◆土台となるデータ
土台とした図は、以下のものです。

「エンデュランス」
トレーニング強度と関係の強い変数。この変数はこの論文で定義されている変数で、一般的なものではありません。おおよそ疲労耐性と言った意味合いで、数値が高いほど走速度の減少率が低くなります。

「VO2max走速度の下限値」
以下、「VO2max速度」と記載します。トレーニング量と関係の強い変数。それ以上のスピードで走るとVO2maxが動員され始めるという走速度が定義されています。

この2つの変数の関係図を、運動強度(%FTP)と週間トレーニング時間に置き換えるため、以下のような計算を実施しました。


◆運動強度(%FTP)
参考論文では「エンデュランス」という変数と「平均トレーニング強度」の関係が図示されています。平均トレーニング強度は、「レース前180日に行った全てのトレーニングの平均走速度」を、「VO2max速度」で割った値です。

この関係を、以下の推定式に変換しました。

続いて、トレーニング強度の単位を「%VO2max速度」から「%FTP」に変換するため、以下の仮定を置きました。

  • 「VO2max速度」の0.83倍が、「一時間維持できる走速度」である。→こちらは論文で解析されている内容であり、0.83倍が平均値となっています。

  • 一時間維持できる走速度 = 乳酸閾値走速度 = FTP と仮定

  • つまり、VO2max速度×0.83倍 = FTP

この仮定をもとに、エンデュランスという変数から平均運動強度(%FTP)を算出しています。


◆週間トレーニング時間
参考文献ではVO2max速度と、180日の総トレーニング距離(km)についての関係が図示されています。おおよそ直線的な関係にあることが見て取れますので、平均値をプロットし、それをもとに直線回帰を行って、VO2max速度から総トレーニング距離を推定しました。(下図)

以上の数値的な変換から、「総トレーニング距離」と「運動強度(%FTP)」の図を描くと、下のようになります。

続いて、先にお示しした仮定「乳酸閾値走速度=FTP」から、各トレーニング強度(%FTP)における走速度をこちらの記事を参考に割り当て、その値を用いて総トレーニング距離から週間トレーニング時間を算出しました。

例)
・ゴールタイム4時間00分
・平均トレーニング強度75%
・総トレーニング距離1000km

ゴールタイム4時間00分の場合、参考にした記事から、乳酸閾値速度は
1kmを5分22秒ペース
⇆11.18km/h

よって平均トレーニング強度75%の場合、走速度は
11.18km/h×0.75=8.39km/h

この走速度で総トレーニング距離を走っているので、
1000km÷8.39km/h=119.2h/180days

一週間(7日分)に換算すると、
119.2h÷180×7=4.64h/week
となる。

このような計算を行った結果が、本文でご紹介した関係図になります。(下図)


◆変動(ばらつき)の試算
以下の結果から、試算しています。

  • トレーニング距離とVO2max速度の関係(1標準偏差)→同じVO2max速度であっても、トレーニング距離には1000kmほどのばらつきがある

  • トレーニング強度とエンデュランスの関係(1標準偏差)→同じエンデュランスでも、平均トレーニング強度は5%ほどのばらつきがある

これらのばらつきを週間トレーニング時間の変動として合算すると、おおよそ1標準偏差は±4.5hほどになります。この変動幅を、そのままパフォーマンス予想の変動幅と仮定しています。

なお本文中には、
・「全体の70%がこの変動内に含まれる」
・「平均的な値になる人が多い」
と記載していますが、これらは正規分布の1標準偏差内であることを元にしています。


◆CTLの試算
CTLは加重移動平均という方法を使って、6週間分の平均TSS(トレーニングストレススコア:各日のトレーニング負荷量)で算出するのが一般的です。

問題は計算する際の初期値(CTLをどの値に設定するか)で、結果が大きく異なってしまうことです。

よって以下のようにトレーニング条件を固定しました。

  • 低強度(平均トレーニング強度-5%)を全体の7割

  • 高強度(低強度の値から試算)を全体の3割

  • 低強度を週4、高強度を週2で実施

  • 土日に低強度を充て、低強度トレーニングの全時間のうち1/3の量を両日実施

<週間トレーニングスケジュール>
例)
・平均トレーニング強度75%
・週トレーニング時間が12時間

月:オフ
火:高強度→強度87%、1.8h
水:低強度→強度70%、1.4h
木:低強度→強度70%、1.4h
金:高強度→強度87%、1.8h
土:低強度→強度70%、2.8h
日:低強度→強度70%、2.8h

<CTLの計算>
平均トレーニング強度と週間トレーニング時間から上記のスケジュールを試算した後、単純移動平均にて算出される値を初期値に採用。その初期値を元に、当該スケジュールを6週間継続して行った場合のCTLを、加重移動平均にて算出しました。加重移動平均の計算に必要な係数(γ=0.05)は、参考2を元に指定。

私となすぴーさんの記録を上記の条件で計算した場合、実際のCTL±5以内に収まりましたので、妥当であると判断しました。

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