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#13 どれだけパワーを維持できるかは体の限界ではなくメンタルの限界で決まる

脚がキツくて失速しそうだ、もう体にはエネルギーが残っていない。。こう感じたことがあるのは、きっと私だけではないはずです。

低血糖状態によるいわゆるハンガーノックとは分けて考えなければなりませんが、持久系スポーツで限界に挑戦している最中に始まる心の中での葛藤は、得てしてメンタルがその限界を決めているのかもしれません。

今回の論文では運動中に放出される、痛みや疲労感を和らげる体内物質の効果を低下させています。その際に高強度のパワー発揮を止める原因は体か、メンタルか?

メンタル関連の論文レビュー第三弾になります。是非読み進めてみてください。また第一弾、第二弾も併せてご参照ください。

はじめに

みなさんこんにちは、川崎です。この記事に興味を持ってくださりありがとうございます。今回は前回に引き続き、メンタルが脚を止めることを違った角度から検証した論文になります。

前回の論文では疲労困憊まで漕ぎ続けた直後に5秒間の全力走を行ったところ、全ての選手が疲労困憊時の2倍以上のパワーを発揮できました。このことから脚を止めたのは体の限界ではなくメンタルが起因していると結論づけられました。

いや、そんなこと検証しなくても薄々気づいているよ。情け容赦ないな。。と苦笑いしながら論文を読みましたが、検証結果をつきつけられた後のトレーニングは普段以上に最後粘れている気がしています。

脚はトレーニングによって強くなりますが、知識だけでは強くなりません。しかしメンタルは知識によっても強くできると感じています。そうした考えから、再度このトピックを選びました。

今回の論文も体が先か、メンタルが先かを検証しています。


検証方法

今回は男女持久系アスリートが参加しています。選手たちはランプテスト(徐々に強度が高くなっていくテスト)でどれくらい漕ぎ続けられるかに挑戦します。

テストは各選手2回実施。テスト前に以下の2種類の異なる処置が行われました。

  • 静脈カテーテルでナロキソンを処置

  • 静脈カテーテルで生理食塩水を処置

ナロキソンという物質が何かを説明するために、内因性オピオイドとナロキソンの関係をご説明します。

内因性オピオイド

内因性オピオイドとは鎮痛作用のあるエンドルフィンなどの脳内モルヒネ物質と呼ばれたりするものです。

内因性オピオイドはLT強度以降で放出されて、高強度による不快感や疲労度を和らげる性質があるとされています。

ナロキソン

今回の検証で使用されているナロキソンは、この内因性オピオイドの作用を阻害する物質です。

つまりこの物質が処置されたとき、同じ強度でも疲労感をより強く感じやすくなると考えられます。

生理食塩水はプラセボで、特に体に何かの効果があるわけではありません。

またナロキソンか生理食塩水か、どちらが処置されたかは処置された選手も処置した側にも分からないようにしています(ダブルブラインド)。ナロキソンを処置されたと分かるとそれだけで疲労感を強く感じるかもしれませんし、処置する側にも何らかの思惑が働くと困りますので、その対策です。

選手はどちらの処置も行われますが、どちらが先かは分かりません。そして2回のテストは別日に実施されました。

ランプテストでは心拍数や酸素摂取量、血中乳酸値などの生理学的な測定と並行してRPE(主観的運動強度)も調査。最終的にどれくらい漕ぎ続けられるかを調査しています。

今回のRPEは6-20スケールではなく、0-10スケールで調査する方法が採用されています。

通常の状態(生理食塩水)とナロキソン(疲労を感じやすい)とで、疲労感を強く感じ始める時間が異なってくるのかが、検証のポイントです。


検証結果

検証の結果、ランプテスト実施中の血中乳酸値や酸素摂取量の推移は2つの処置で差はありませんでした。つまりテスト中の体への生理学的な負担度は2つの処置で同じでした。

しかしランプテストの継続時間は、体への負担は同じはずなのにナロキソンを処置されたときの方が平均して30秒短い結果に。

そして肝心のRPEは、おおよそLT強度以降でナロキソン処置時の方が高くなっていて、疲労を強く感じていることが分かりました。

まとめるとナロキソンの処置によってLT強度以降に疲労を強く感じ始めた結果、脚を止めるタイミングが通常(生理食塩水)時より早まったと解釈できます。

また疲労困憊直前の心拍数と酸素摂取量はナロキソン処置時に低い結果でした。筆者は疲労感により体を通常よりも追い込み切れなかったのではと考察しています。

つまり、脚を止めたのは疲労感の限界。と結論付けられました。


まとめ

脚が止まるのは体の限界か、それともメンタルの限界か?

今回の検証もメンタルの限界が先にくるという結果となりました。体の限界よりも疲労感の限界が先にくる。しかもそれは体への生理学的な負担が同じ状況であっても、という結果です。

以下、私がこの論文を読んで考えたことです。

経験的に私たちは「このくらいのキツさが限界だ」ということを知っています。というか、どうやら限界と決めているらしい。

そのキツさの感じが実際に頑張っている脚や心肺系の頑張り度合と常にイコールではなくて、状況によりかなり変わってくるものだとすれば、何とも頼りないセンサーだ。

でも私たちがよりどころにしているのはこの主観、つまりメンタル。

パワー出力や心拍数などを手掛かりに、「メンタルよ、まだやれるぞ」と鼓舞しながらトレーニングしていかなければと感じた論文でした。

しかしこれが行き過ぎると、いわゆる根性論になってしまいます。それは良くありません。

体の疲労を睡眠時心拍数などでモニターしつつ、体のフレッシュさをTSSなどで管理して、挑戦しがいのあるトレーニングを効果的に行える計画が大切です。

皆さんの日々のトレーニングが、より実りあるものになりますように。

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。スキ、フォローを頂けると私のメンタルに大変励みになります!


ご紹介した論文

Sgherza, A. L., Axen, K., Fain, R., Hoffman, R. S., Dunbar, C. C., & Ois Haas, F. (2002). Effect of naloxone on perceived exertion and exercisecapacity during maximal cycle ergometry. J Appl Physiol, 93, 2023–2028. https://doi.org/10.1152/japplphysiol.00521.2002.-We


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