さくらの雲*スカアレットの恋 プレイ後感想
・あらすじ
2020年に生きる青年・風見司は、桜の木の下から100年前へタイムスリップを遂げてしまった。
――帝都・東京。
そこは新時代への希望に満ち、文化の華が咲き乱れた、輝かしき浪漫の都。そんな帝都でひとり探偵事務所を営む謎の英国女性・所長。
日々金欠にあえぐ彼女のもとで、司は数々の事件に巻き込まれていき……?
枝分かれする彼の運命がたどり着くのは、果たして令和か大正か。100年の時を超えー 今ここに、桜舞うレトロ・ミステリィの幕が開ける!(きゃべつそふと様公式ホームページより抜粋)
非常に楽しませてもらえました。タイムスリップものは過去の名作も多く、どうしてもそういった作品と比較されやすいジャンルだと思います。しかし1920年・大正時代という創作においてあまりとりあげられることのない?舞台設定とこの作品が2020年、令和時代に発売されたという事実がシナリオ上に上手く落とし込まれてあって、作品世界にどっぷりつかることが出来ました。
自分がゲームに限らずこれはいい作品だ!と感じる条件として、これが創作されたものだと(心理描写やストーリー設計が巧みすぎて)思えない、登場人物たちが(魅力的過ぎて)実在してほしい。というものがあります。本作はその二点をがっつり満たしていて間違いなく自分の中では名作でした。
各√毎の所感
・遠子さん√
実はこのゲーム共通部分は初回確定BADエンドで、ヒロイン攻略順も完全固定となっています。遠子さんはその一人目に当たります。共通√でもぶちあたった事件、出来事なんかはかなり端折られて説明されるので、内容が軽くおさらいされながら個別に入ることになります。
絵に描いたようなバリバリの大正お嬢様である遠子さん。主人公が未来人であることがばれてからは、彼女の好奇心旺盛な面が前面に出てきます。未来のテクノロジー、神秘に対して興味津々な彼女に対して、迂闊に話すことはできない…でも話してあげたい!と葛藤する主人公も良かったです。
この√独自の事件としては、遠子さんお屋敷で起こる幽霊騒ぎと帝都を日夜騒がせている”怪盗”の正体が露見することです。後者はガッツリシナリオの真相部分にかかわってくるので割愛するとして、前者は幽霊の実在・非実在を主人公が論理的に突き詰めていく様が爽快でした。
一方所長はというと、屋敷に眠るとされる埋蔵金に躍起になっていました。なんでやねん。
・蓮√
全√の中でも一番王道な大正スリップ物をやってます。
・バームクーヘンを作ってくれ
・人食い野犬をなんとかしろ
・永久機関を実現させろ
という三つの依頼を所長や蓮、周囲の人々と力を合わせて解決していくことになります。依頼の中には今後のストーリーに大きくかかわってくるものもあります。ぶっちゃけひとつだけあまりに異質なのですぐわかるかと思いますが…
どの依頼に当たるにしても、主人公たちは人脈や知識を駆使し、試行錯誤を重ねて真摯に回答へとアプローチしていきます。見てるこっちが応援していたくなるひたむきさです。あとこの世界特段悪い人が出てこないので、そこも見てて楽しくなれます。
一方所長はというと、試行錯誤の結果量産されるバームクーヘンをむさぼっていました。なんでやねん…
・メリッサ√
全4√の中で一番異質な内容の√です。主人公たちのもとに招待状が届き、彼らは寝台列車へと乗り込みます。そこで「この列車の最終到着場所」当てゲームに参加することになります。当選者の方にはなんと大金獲得の権利が与えられます。しかも列車の内装は豪華絢爛、食事やルームサービスも至れり尽くせりと来ています。こんな不自然なまでに快適な環境、何も起きないはずはなく…
ミステリー色がかなり色濃く、内容としても次の所長√への足掛け的な意味合いが強いです。所長のポンコツ迷推理ですら犯人をあぶりだすカマかけ材料として利用する司君の頭脳には痺れましたね…
メリッサはかわいいですね。メイドというのはそれだけでアドの塊です。
所長は列車で提供される豪華な料理を、これがタダで食べられるなんて…!とむさぼっていました。かわいい。
・所長√
真打登場です。彼女の存在が「さくらの雲*スカアレットの恋」という作品の魅力の8割を占めています。共通、遠子さん、メリッサ√でさんざんポンコツっぷりを発揮しておいて、ラスボス相手にはちゃっかり名推理を発揮していく展開、本当にずるいです。普段はお金にがめついくせに、仕事内容に納得がいかなかった場合は報酬金を辞退するところ、その高潔さがすこです。そもそも上司と部下という関係性が強すぎです。カッコよさとかわいさ、美しさが絶妙に同居しております。りこ先生の圧倒的キャラデザセンスとトム先生のシナリオ力によってえげちいレベルで魅力的な人物となっております。
ストーリーとしては、「え!こんなところも伏線だったんか…」と思うくらい、日常会話と伏線シーンどっちか判断が付きにくいくらい細かな謎もちゃっかり回収していきます。かと思えば予想だにしない新事実に鳥肌が二回ぐらいぶわわわぁって立った場面があります。大トリを飾るにふさわしい完成度の高い√でした。
色々書いてきましたが、この世界にもっと浸っていたいと思わせてくれるような良い作品でした。最後にOP映像貼っておきます。