
Photo by
tadashikoizumi
帰ってきたヒトラー / ティムール・ヴェルメシュ著 ; 森内薫訳 / 上
(2018-01-24 Soka Book Waveより)
所持金も生活する場所もない。そんなヒトラーが、突然再びドイツの街に姿を現すところから物語が始まる。
彼は自分が地位高い人間であると自負し、権力を笠に着て、町ゆく人に横行な態度を見せるが、彼を見かけた市民らはそろって、ヒトラーにそっくりの芸人がいると思い込む。彼の存在は徐々に世間に知れ渡り、ついにはテレビのコメディ番組に出て人気者になっていく。
ヒトラーが一般市民から人気者になっていく一方で、その自分の姿を心から認めたくない彼のプライドが垣間見える一般市民との会話が非常に面白いと思った。
また、誰かの喜ぶ姿に常に背を向け批判をし、自尊心で自分を取り繕うヒトラーの根性が嘆かわしいと感じた。
しかし、人々が彼に対し親切に接してくれるおかげで、彼が何とか生活できていけることが感慨深いものを感じた。