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オーケストラスタッフのリレーエッセイ!チャレンジを続ける専務理事
今回のリレーエッセイにご登場いただくのは30代にしてオーケストラの専務理事の重責に就かれた小田弦也さんです。オーケストラを横断して活躍する第一人者でもある彼に、どんな心構えで臨んでいらっしゃるのか、忌憚のないところを寄稿頂きました。
当たり前じゃない、
時代に合わせるオーケストラに
日本センチュリー交響楽団 専務理事 小田弦也
PROFILE
飲食店経営等を経てステージマネージャーを目指し、2010年から在阪オーケストラでアルバイトを始める。2012年京都市交響楽団にアシスタント・ステージマネージャーとして入職。2015年からは日本センチュリー交響楽団ステージマネージャー、2020年7月に理事・事業部長に就任。現在は専務理事として楽団全体を統括する。他にも株式会社 Shadow 代表取締役として音楽と関わっている。
現在の職に就任してから2年が経ち、ステージマネージャーとして現場に出ていた時と違い、「このオーケストラの未来がどうなるのか?どうあるべきか。変えなければならないものは何か?」と、自問の日々を過ごしてしています。“お客様に楽しんでいただく=良い演奏を聴いていただく” これはオーケストラとして当たり前のことですが、私自身は当たり前ではないことを実行してみようと考えています。
例えば、スポーツ観戦では若年層が多いにも関わらず、最寄り駅からお客様送迎のバスが運行されています。しかし一方で、年齢層が高いオーケストラの演奏会では、主催者はホールでただ待っているだけです。そのようなことを思っていたとき、「高齢なのでホールまで歩くと危ないから会員を辞めます」といったお話を複数聞いたことも重なり、いっそ大阪駅からホールまでお客様専用のシャトルバスを走らせられないか。と考え実行に移しました。当初は苦労もありましたが、現在では毎回約300名のお客様がこのバスを利用し来場されています。
また近年、関西では外国人観光客が急増しているので、国内だけではなく海外からも聴きに来てもらえないかと思い、英語や中国語のチラシをある企業と組み、作成、配布をお願いしました。しかしこのチラシが元で転売が横行してしまい詐欺チケットまで出回ってしまうという事態に発展。事務局では被害者からの問い合わせ対応で、スタッフの業務を増やしてしまいました。しかし、今後は転売できないようにと、海外専門のチケットサイトと連携し、販売するようにしたことにより、最近の完売となった演奏会では、約7%の来場者が外国人となりました。これは、私の失敗が事務局のチームワークによって、成功に変わった瞬間でした。
これからもオーケストラの未来を切り開いていくためには、 過去の事例や慣例にとらわれず、刻々と変化する情報と時代に乗り遅れることなく、新しいことにチャレンジする勇気と人材が必要不可欠なのではと思っています。
2024年11月30日発行
「日本オーケストラ連盟ニュース vol.115 40 ORCHESTRAS」より
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