富士山頂の「ジグザグ」
過日、東京都心から、雪を戴いた富士山がくっきり。あっ、なんか、こんなケーキがあったような・・・確か名前は、「クグロフ」だったか。砂糖をまぶしたクグロフみたいだなと思いながら山頂をよく見ると、何かちょっと興ざめのものが。
「ジグザグ」の線。
登山道かと思いきや、インスタに掲載したところ、ブルドーザーが登る道だと教えてもらった。
ああっ、そうか。思い出した!昔取材でプルドーザーで山頂まで登ったことを。あれは確か、富士山が世界遺産に登録されるか注目されていた頃。
世界遺産といっても「文化遺産」にはなれそうだが、「自然遺産」にはなれそうもない、なぜなら、登山者によるゴミ放置問題に加えてし尿垂れ流しの問題もあると。トイレットペーパーのゴミが山肌に大量に放置されて「白い川」と呼ばれていた。
その解決策として、確か木材チップなどを活用した「バイオトイレ」を置く活動があり、その取材で山頂へ。資材を運ぶプルドーザーに乗せてもらったのだった。
富士山といえば五合目まで車で行ったことがあるだけだったので全然知らないが、歩いて登ると7、8時間はかかると聞いたことがある。それが、ブルドーザーに乗ると2時間程度で着くと言われ、わくわくして乗り込んだのだが、それが、もうものすごいことに。もう一回と言われると、絶対に断ると思う。
ものすごい揺れで、どんなにどこかにつかまっても、体が右に左に前へ後ろへ揺さぶられ、ゴッツンゴッツン車体にぶつかる。カメラマンは高価な商売道具を壊さないように守るのに必死の形相だったのを思い出す。
なので2時間で山頂についたのに、お得感は全然なく。しかも、その後、生まれて初めての高山病にかかることに。一晩中頭が割れるほど痛く、吐き続けた。歩いて登るとゆっくり体が高度に慣れていくのに対して、あんなに苦しんだとは言え、ブルドーザーで時間をかけずに一気に駆け上がったため高山病になるのだという。おいおい、聞いてないよ。先に言ってほしかった。
しかし、苦しみの後には、忘れ難いご褒美が待っていた。
御来光!それを見た瞬間、全ての苦しみが報われ、割れんばかりに痛かった頭は、その時だけは何事もなく、むしろなんともいえない快感に包まれたのを覚えている。
で、肝心のバイオトイレ。その後気になっていたのだが、もうバイオトイレは定着していたようだ。
富士山は、2013年に世界遺産登録。やはり「文化」遺産だったけれど。
そして、今富士山は、観光客がキャパを超えた「オーバーツーリズム」問題に揺れている。
富士はなぜこれだけ人を惹きつけるのか。
神戸育ちの私が富士山を初めて意識したのは、受験で新幹線に乗って東京に行った時だろうか。「車窓から富士山が見えたら合格」のようなジンクスがあったのか、なぜか「見えてくれ、見えてくれ」「多分、そろそろ見えるかな」とそわそわしながら、高校生の私は車窓にかぶりついていた。
その後も、ふるさとと東京を新幹線で往復するたびに富士を意識する。見えそうだと思った瞬間にトンネルに入った時に、がっかりする感覚は、おっさんになった今でもあるから、不思議なもんだ。東京にいても、いつも富士がどこから見えるか探している。
そんな山、他にない。文化遺産になっただけあって、古から人々の心の中に生きてきた山。しかし、ことさら民族に結びつけて語る必要もない。こんなにたくさんの外国人も惹きつけているのだから。誰が見ても、純粋に、綺麗だ。
雪を戴いた山頂に見たジグザグから、一気にいろいろ思いが広がった。遠くから見る富士はやっぱり綺麗だ。この恩恵にずっと授かるためにも、近くから見てもキレイな山にしなければ。
きょうも最後までお読みいただき、ありがとうございました。
AJ 😀