虫たちにまかせよう
太陽に晒された太い木の幹に、甲虫のような黒い影が飛びついた。
カブトムシ?なんだろう。胸が少し高鳴る。
でも、高すぎて見えない。
バイト帰りに寄った本屋には、自律神経関連本コーナーができていた。
私以外にも熱心に本を眺める女性が一人。
もしかしたら、この人も同じ悩みを抱えているのかも。
長い大通り。自分の汗が大気と混じる。
今度は、なんでもないような背の低い街路樹が続く。
よく分からない虫が鳴いている。
見えないけれど、その葉の茂みに多くの生命の存在を感じる。
ある木の真下には、お父さんらしき男性と、両はしには小さい女の子。
皆揃って首をほぼ90度に曲げ、何かを見上げていた。
自然観察をしているのかな。
それにしても本当に今日は、暑い。
日が暮れても蒸されるような暑さ。
そういえば最近よくサギが優雅に頭上を通る。
繁殖期だからかな。
そう考えると、彼らの気持ちは全然優雅じゃないのかもしれない。
忙しいんだね。
そこら中で生き物のエネルギーと蠢きを感じる。
色んな生き物、みんな頑張ってる。すごすぎる。
ああ、私に夏を乗り越えようなんて気概は要らないかもしれない。
生きてさえいればいいかな。皆頑張ってくれている。
地球のエネルギーを回してくれている。
虫でいったら私は秋に鳴く虫と仲間かもしれない。
今は頑張りすぎなくていい。
家に帰ると室温は32℃。
くるぶしの近くが猛烈に痒い。
知らぬうちに蚊が食いついていたようだ。
今日は疲れた。とても疲れた。
世の人、生き物、本当におつかれさま。