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庵治産地の職人が作る”お墓さん”の魅力。

ボクが日々作らせていただいている”お墓さん”。ボクは”お墓さん”という呼び方にちょっとこだわっています。”お墓さん”は亡くなった方の「終の棲家」とも呼ばれ、亡くなった方が眠る場所。そして、亡くなった方への思いが集まり、ずっとずっと手を合わせていただける場所。その呼び方として、”製品”であったり”もの”であったり…という言葉では、ちょっと違うかも…という感じがしていたからです。

石屋になって間もない頃、呼び方をいろいろ探っていた時期がありました。職人さんや地元の方々にもたくさん質問をしたのですが、なかなかいい回答はありませんでした。そんな中、庵治産地の地元のおじいさんが”お墓さん”って呼んでおられたのを聞いて「これだ!」と思いました。それ以来ずっと”お墓さん”って言っています。ボクは”お墓さん”を作る仕事をさせていただけていること、本当にありがたいと思っています。

”仕事の意味”を考える。

6年前から縁あってこの仕事をさせていただけていること、本当に感謝だし、日が経てば経つほど、本気で「心」を入れてがんばらないといけないな…という思いが強くなってきています。そんなことを考えている時に、ボクが石屋になって間もなかった頃に出会った先輩にいただいた言葉が頭によぎりました。

「意味を知れば、仕事が深くなる。」

先輩から聞かせてもらった時に、言葉としては分かったつもりではいたのですが、その”意味”ってどんなことなんだろう?と思い続けてきました。先輩に、この言葉を教えてもらって以来、石屋の仕事として、そしてお墓さんを作る仕事として、「”意味”を知る」というのはどういうことなのか?っていうことをこれまでずっと自問してきました。

日々、自分が毎日触らせていただいている「庵治石」のこと、「お墓」のこと、「グリーフケア」のことなどについて徹底して学びつつ、毎日「お参り」に行きながら、子どもや自分自身の変化から”お墓さん”とは一体何なのか?…、そして自分が一体何を作らせていただいているのか?…ってことを考え続けています。

”お墓さん”を作っていて思う「心の『向き』」のこと。

そんな日々の中、特に石屋になってから、「心」には見えないけれど「向き」と「大きさ」があると思うようになりました。そして、”お墓さん”には、作る人間の「心」が「温度」のようなものとして貯め込まれていく…と感じています。そう思うようになってから、”お墓さん”を作る自分の「心」をいつも見つめています。

こう思うようになったのは、やはり先ほどの先輩からの言葉が大きなキッカケです。ボクらが作っているのは、庵治産地の素敵な職人のみなさんと一緒に作っている”お墓さん”。石屋になって、この”お墓さん”を初めて作っておられるのを見せてもらった時に、ボクがそれまでイメージしていたものをはるかに超えた素敵さがある!と感じました。それまで無機質に思っていたけれど、直感的に「『温度』がある!」って思ったのです。

このことを説明するために、庵治産地の”お墓さん”の対照的なものを考えてみました。あくまでも想像の話ですが、例えば全自動の機械があるとして、原石を与えれば、ロボットが完璧なものを仕上げてくれる…ってことをイメージしてみてください。そのロボットで作ると、もしかしたら設計図と寸分違わない完璧なものができるかも知れません。でも、ちょっと無機質な感じです。

一方、ボクらが作っている”お墓さん”は、いろんな職人さんが関わって出来上がっていきます。原石を採る職人、割る職人、挽く職人、磨く職人、形を作る職人、字を彫る職人、運ぶ職人…。それぞれみんなが石を採らせていただいている自然に感謝をしつつ、「いいお墓さんを作りたい…。」という気持ちを持って「心」を込めて作られたもの。

日々、職人のみなさんとやりとりをしながら、ボクらが庵治産地で作らせていただいている”お墓さん”は、ロボットが作る無機質なものではなく、間違いなく「心」が込められていて、そこには「温度」のようなものをがある…と感じているのです。

これからも「心」を入れて、庵治産地で”お墓さん”を作っていきます。

ボクら庵治産地で作る”お墓さん”の魅力は、言うまでもなく「庵治石」という石の素晴らしさです。独特の「斑(ふ)」と呼ばれる模様がキレイに浮かんでいて、石に独特のねばさがあることで風化に強い…という特徴があります。

もちろん石自体の魅力があることも去ることながら、ボクが思う最大の魅力は、職人のみなさんの「心」が込められた「温度」のようなものだと思っています。石が採れてからできあがるまで、1つの地域でみんなで「心」を入れて協力して作っています。日々作っている”お墓さん”に込められた「温度」も一緒に届くといいな…と思いながら、日々修行をしています。


「終の棲家」として亡くなった方が眠り、その方への思いが集まる場所としての”お墓さん”として、庵治産地で作った「庵治石」の”お墓さん”を選んでいただけるように、これからもしっかり「心」を入れて修行していきたいと思っています。

そして、今はまだ答えが見つかっていないけれど、先輩から教えてもらった言葉の中の「仕事の”意味”」について、これからもしっかりと考え続けて、いつか「”お墓さん”を作る」という「仕事の”意味”」を見つけたいです。

今日もボチボチ修行がんばります。

庵治石細目「松原等石材店」3代目・森重裕二


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