ワンルームエンジェル【漫画】【レビュー】
私のツイッターでは、漫画好きの方を沢山フォローしているせいで、
『タイムラインがその作品に染まる』
ということがたまにある。
みんな漫画は好きといっても、好きな方向性はみなバラバラ。でも、「これは面白い!」「みんなにもこの漫画を伝えたい!」そういった思いが伝播して、はじけたときにワッっとタイムラインが同じ色に染まる。昨今、記憶にあるのは「メタモルフォーゼの縁側」や、「ミステリという勿れ」などだろうか。
そして、今作「ワンルームエンジェル」も、そんなタイムラインを染めた一作だ。
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一応ジャンルは『BL』なのだけれど、絡みらしい絡みはほとんどない。
ここまで絡みもないのであれば正直な話、私はBLではない一般向けで描いてほしかった。BLってなってしまったら、絶対に手に取らない(手に取れない)人はいっぱいいるからね。
掲載紙の問題で、BLになってしまったのではないかと思うけれど、ちょっともったいなさを感じるざる得ない。帯の『BL臨界点』という文言は派手で目新しくて目を引くけれど、うがった私の眼には「BLでなくてもいいのではないか?」という意図がないとは正直思えない。
まあ、それは蛇足に過ぎない。置いて置こう。
内容がすばらしいのだ。
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30代アルバイトの男のところに、急に羽の生えた少年の天使が降りてきたところから始まる。天使は過去の記憶を忘れているし、何かの特殊技能があるわけじゃない。羽が生えているだけだ。
そうやって突然始まった、おっさんと少年のストーリー。
おっさんの人生の行方と、天使が来たその理由とは一体!?
絵はもうひとつ読みやすいと嬉しいな、と思う部分もあるけれど、それが、生々しさを生んでいる面もある。
そして、とにかくそこには感情を振り回されるストーリーがある。いきなり天使が降ってくるとっぴな話なのに、そこに共感させられて泣きそうになる。キャラクターの背景がきちんと描けていて、説得力を生んでいるせいなのでしょう。
人気のある作品は、長くずっと続くのが普通ですが、1巻や2巻などで完結したからこそ価値がある作品というのも沢山あります。
これ1冊で完結している今作もそんな珠玉の作品の一つでしょう。
BLである、とかそういうことは気にせずに一度どうぞ。