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あでやかな食事の代償【旅する日本語】【奇偉】
披露宴会場は、ご飯の美味しさで決めた。
私も夫も、その手の晴れごとにあまり興味がないのだろう。だが夫は長男だし、何もやらないのは気が引ける。結果、夫の地元に近い京都にて。式は安い神前式。披露宴は料理自慢の老舗旅館。という半ば旅行気分のモノになった。
流石、老舗のお墨付き。手の行き届いた料理は、どれも最高に美味しい。米粒一つとっても艶やかで、丹精を込めるという意味を身に染みて感じる。
そこで終わればいい話だが、問題がひとつ。家紋だ。
鳥をモチーフにしたその家紋は、可愛らしく、愛嬌があると言っても良かった。だが、これが部屋から風呂からトイレまで、細かな備品から始まって至る所にある。つぶらな瞳で見つめられるうちに、いつしかその可愛いさはゲシュタルト崩壊して、夢にまで出てくる始末。もちろん悪夢だ。
老舗の料理で舌鼓。風情ある旅先の結婚式の思い出は、その「鳥」の思い出として乗っ取られはじめている。
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