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Photo by
yuichi_tamura
空を裂き、光る。
「山に登って初日の出を見よう」
そういって彼と計画を立て準備もしてきた。それなのに今日になって、くだらない事でけんかをして、そのままヒートアップ。「ついてこないで」と捨てゼリフを吐いて、私はひとり家を飛び出した。
暖かい格好をしてきたし、動いていれば寒くない。強い風が吹きつける中、ひとり黙々と足を動かす。
頭をめぐるのは彼のことばかり。
ここがキライ……ここがイヤ。思いつく限りあげつらって、端から罵声をあびせかける。煩悩を一つ一つ供養するように、一歩また一歩と恨みつらみを地面に打ちすてながら登ってゆく。
ついに罵るものもなくなってきたころ、山頂にたどり着いた。
丁度、地平がオレンジ色に輝きだす。薄い雲があたりに描きだされ、年の始まりの奥深さを演出する。そして空が割れ、光る。
なぜだか涙が止まらなかった。
二人で見たかったな……そう、思った。
そう思える人が居ることが、少しだけ私を暖かくしていた。
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