サンタクロースは液体である【ショートショート】【#101】
「サンタっていうのはさ。『液体』だと思うんだよ」
唐突にそうシンヤは言いだした。
「あのさ……シンヤがおかしなことを言うのはいつものことだけどさ、今度はなに? サンタってクリスマスにプレゼントを持ってくるサンタクロースのことだよね?」
ベットにもたれかかって漫画雑誌を読んでいた俺は、後ろで寝転がるシンヤの方を振り返ることもなく問いかけた。
「そうそう、そのサンタクロース。だってサンタってさ。太ってるじゃん」
「まあそういうイメージだよね」
「そんな体形でえんとつ通るなんて無理じゃん? ということはやっぱ液体なのかなって」
シンヤは大体週に一度くらいはこの手のとっぴな疑問がわきあがる体質らしく、大抵付き合わされるのは俺なのだ。
「――えーっと、そもそもそのサンタクロースってのはさ……架空の生き物っていうか、みんなのお父さんかお母さんが枕元にプレゼントを置いてるだけで、そもそも存在しないもので……」
「……ん? いやサンタはいるでしょ? だって去年もプレゼントくれたよ?」
「いやそれはね。シンヤのお父さんとかお母さんが、シンヤが寝込んでからこっそり部屋に入り込んでプレゼント置いといたんだよ」
「だってその日は二人ともちょっと仕事が忙しいから、俺には早く寝ろって言ってたし、そんな余裕なかったと思うな」
「いやそれ絶対用意してるじゃん……ってまあまあまあまあ、いいやごめん。サンタいるってことにしとこうか。せっかくだから」
もともと変わったヤツなのだから、サンタを信じていようがいなかろうが、今更たいした差ではない。……というよりも、どっちかというと信じさせておく方が楽しそうだ、というよこしまな思いが俺をさえぎった。
「まあそれでさ、ほらネコって液体らしいじゃん」
「あー……なんだっけ。ネットか何かで見たことある気がする」
「そうそう。調べたんだよね俺。『液体は、それが入っている容器に合わせて形が変わるもの』らしくて、だからネコは液体だって論文があってさ。サンタクロースも結構これに近い存在だと思うわけ。だからサンタもコップに入れたらコップの形になると思うんだよ。見たことないけど」
無駄に探究心のあるところも、シンヤのやっかいなところだ。
「さすがのサンタもコップには入らない気がするけど……」
「でさ。俺気になっちゃって聞いてみたんだよ。『サンタクロース協会』に」
「……『サンタクロース協会』!?」
「そうそう。世田谷にあった」
「……世田谷!?」
「うん。で、メールとか電話じゃ味気ないから、手紙出して聞いてみたわけ。そうしたらね、正解出ちゃった。正解はね――サンタは、『ゴムみたいなもの』なんだってさ」
「……ゴム?」
「そうゴム。弾力があって伸び縮みする、あのゴム」
「はあ? 意味わかんないんだけど」
「いやね、サンタがどうっていうよりも、どうやら中身が大事らしくって。サンタはゴムで出来ていて、その中には『子供たちの期待(気体)』がつまっているんだって。だから形は自由自在なんだってさ……」
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