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とばりに消えた、僕の恋 【#ナイトソングスミューズ】
その場所に、彼女は現れなかった。
僕の恋は、打ちあがった後の花火のように、人知れず夜のとばりに消えた。
初めて彼女に会ったのは、ひとり、旅行に行った先。
そこで道を聞かれたのが出会い。
彼女もまた一人の旅行だった。
道を教えて、別々の場所へ。
一日を堪能して戻ったホテル。
そこに彼女がいた。
それはもちろん単なる偶然。
でも僕にとっては必然かもしれない。
意気投合し、夕食を一緒に食べ、いろんな話をした。
小説と一人旅が好きで、休日は良く旅行していること。
旅先で古本屋によって、文庫を買って帰ること。
そして、彼氏がいること。
彼女には相手がいる。
それ以上の関係にはなれない。なるべきじゃない。
そう言い聞かせ、連絡先の交換もなく彼女とはさよならをした。
時とともに思い出の一つになれば、ずっとキレイなままだ。
それなのに。
僕はまた彼女と出会ってしまった。
最寄り駅。そのホームで。
重なる偶然に僕は運命を感じる。
連絡先を交換して、また会う約束をした。
そこからは定期的に会うようになる。
喫茶店でカラカラと笑う彼女を見たとき。
お酒が入ると泣き上戸なことを知ったとき。
少しづつ、僕の気持ちは強くなっていった。
多分僕は、最初から彼女のことを好きだったのだ。
道を聞かれたあの時から。僕は、好きだったのだ。
彼女には彼氏がいる。
そんなことはわかっていた。ずっとわかっていた。
わかっていたけれど、僕は、彼女を好きになってしまった。
握りしめた拳から砂が地面にあふれるように。
落ちる気持ちを止められなかった。
僕の方が君を幸せにできる。
だから僕にチャンスを。
君が好きだ。
独りよがりな気持ちであることは知っている。
きっとかなわぬ願いであることも。
それでも、言わずにはいられなかった。
もしも応えてくれるなら、この場所に。
君と沢山の時間を過ごしたこの店に来てほしい。
君が現れなかったその時は。
君にはもう会わないから。
お店で彼女が来るのをひとり待つ。
何杯目かのドリンクの、氷がカランと音を立てる。
照明が反射して、うすい影を作る。
きっと彼女は来てくれる。
きっと彼女は僕を選んでくれる。
氷がゆっくりと解けて、消えていく。
時計だけが無情に進んでいく。
彼女はきっと来てくれる。
彼女はきっと来てくれる。
◇◇◇◇◇◇◇◇
嶋津さんの企画、Muse杯に参加してみました!
とはいえ、これがまた難しい(笑
もともとの詩があって、曲もあるとかなり限定されてしまう感じがあって、シチュエーションを追うのか、話を追うのか、雰囲気を追うのか。この辺の匙加減が難しかったです。
第一印象でいくと、やぱり「恋愛」で「星空」なんでしょうし、最初に考えたのは、そういう恋愛小説だったんですけど、あまりにもかぶりそうなのでやめました。いっそ、もっとインスピレーションだけで、違うものを生み出した方が潔かった気もしますね。
それに最後は、「二人のまほろば リアルな幻」と結んでいるので、これはもしかして失恋の歌という解釈もアリなのでは……(全部幻だった的な)と頭を巡らせて、結局「別れを、詩のような雰囲気で書いたもの」というところに落ちつきました
イメージとしては、冒頭ナレーションが入ったあとに、歌が入りだして、歌をバックに回想シーンが流れる、という感じです。でも、さすがにこれは求めすぎだなぁ、と思いながら、形はそういう順番に配置してみました。欲を言えば、読む時間と曲の時間合わせたかったな。
今回も、どこかしら筋トレになった取り組みでした。
楽しい企画ありがとうございます!
心置きなく、他の方の作品を読みにいこうと思います。
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