ノーランドの青空レストラン(魔境)客は迷いテリンジ


俺はテリンジ。GNADのクイーン部隊所属の隊員だ。
GNADやクイーンやらの詳しい説明は後にして今の状況を整理しよう。

任務でチベットに来た。内容はホールから新種の大型モンスターが襲来した事による対処だ。

所謂討伐任務だな。

エベレスト山の麓、麓と言ってもそこそこに過酷な環境だ。
そこで何とか討伐を終え、他の隊員達と合流して転移ポータルで帰還するだけだった。

だがしかし、ポータルの故障で俺だけ別な場所に飛ばされたらしい、通信機器も全く応答がない。
周囲を見た所人の気配は皆無だ。そりゃそうだ。こんな鬱蒼とした森に用がある人間がいるなら仙人か変人か身を隠さなきゃならない犯罪者くらいなもんだ。

こんな感じで今のマズイ状況はわかって貰えたと思う。
とりあえず救難信号は出した。GNADのどこかしらの支部か本部が気付いてくれるまでしばらく待ってみようと思う。

それからどれくらいの時間が経っただろうか、日の位置も分かりづらい為体感でしかないが恐らく3時間くらいか、いよいよ腹も減ってきた。非常食の類も持ち合わせて居ないし食えるもんも、見当たらない。

はぁ、こんな時はどうしようも無い考えが過ぎる。ラーメン食いてぇなぁ。

鳥ベースの黄金色のスープ、それに絡み合う細ちぢれ麺、具はシンプルにチャーシューとメンマ位でいい。あぁ、食いてぇ。

「ん!?」

そんな感じでトリップしかけていたとき、気配を感じる。
モンスターか?人か?思わず武器を手に取り周囲を見渡す。すると奴と出会ってしまった。

グルルル。

「ドラゴン」

ホール災害以降様々なモンスターが地球各地に降り注いで来たがこいつの厄介さは群を抜いてる。
銃弾すら弾く鱗やその膂力も去ることながらこいつらは異常に頭がいい。さらにさらに魔法も使用する種類もいる。

今の状況的に些かマズさがプラスされてしまったようだ。あぁ、今日の占い最下位だったのか?こりゃ。

げんなりする気持ちを切り替え戦闘モードに頭を切替える。よく見ると奴は手負いだ、所々血を流している。つまり奴と同程度、または格上のモンスターと争ったあとなんだろう。うわぁ、ドラゴンに手傷負わせた奴とか会いたくねぇ。

そんな短い思案をしていた時ドラゴンの背後から急速に迫ってくる影を確認。
この状況からさらに新手とか今日厄日どころじゃねーな!!

「どぉーりゃ!!」

迫ってくる影はその勢いのままドラゴンに斬撃を浴びせる。頭が宙を舞い、血を吹き出しどしんと言う音を奏でながら倒れる。迫ってきた影はどうやら人間のようだ。手には一振の太刀を握っている。いや、太刀とは言ったがあまりに無骨、歪な禍々しさ、そして、え?あの得物血吸ってね?

「ん?なんだ?お前。」

いや、何だはこっちのセリフだよ!
こんな森で!ドラゴンに出会って!数秒でそれが斬られて!斬った奴がなんだとはなんだよ!

「お?もしかして獲物泥棒か?腹減ってんのか?」

腹は減ってるけども!!ドラゴンを獲物ってなんですか!?「討伐対象」ですけども!え?ドラゴンって食えんの?

頭の中でツッコミをしすぎたせいか疲労が増してきた。

「なんだお前喋んねぇのか?よっぽど腹減ってんだな。ちょっと待ってろ。」

そう言うと男は目の前にキッチンを出した。
いや、もうツッコミとか疲れた。もう驚き疲れだ。なんかこの男無害そうだし、あの得物「ぉぉぉぉ」とか言ってるしここは大人しく待ってよっと。

キッチンを出した男はこれまた何処から出したかわからん食材を並べ、小型のタンクから水を出し洗い始めた。一通り洗い終わるとそれらを丁寧に切る。そしてそれらを目の細かい網に入れると鍋に投入、さらに先程倒したドラゴンの首断面の肉を切り取り鍋に投入、水を入れ火にかける。

「本当はたっぷりと煮込まなきゃならねーんだが今回は客が腹ぺこだからちょいと時短でいくからな!」

男は俺を見ながらそう言うと火にかけている鍋にさらに見た事ない道具で蓋をした。

ていうか俺客なんだ、ドル札使えっかな?クレカで使えっかな?
という思案をしていると何やらいい匂いが立ち込めてきた。

鍋を開けると匂いはさらに増してきて俺の胃袋と脳を刺激してきた。
そこから丁寧且つスピーディに男は料理をしていく。それはまさに魔法のようだった。そして瞬く間に一品の料理が完成した。

「おまたせ!ドラゴン出汁スープの醤油ラーメンいっちょ上がり!」

ラーメン!!ラーメンだこれは!!

醤油独特の琥珀色のスープに細ちぢれ麺、あれ?さっきの妄想が現実に?まだトリップしてる?

「い、いただきます。」

「おぅ!火傷すんなよ!」

一瞬だった。一口目を食べたのは覚えてる。そこから気がついたらスープも飲み干していた。

「はっはっは!いい食いっぷりだったぜ!美味かったか?」

「ご馳走様、美味いってもんじゃねぇよ。」

「そりゃあ良かった!」

「挨拶が遅れた、遅れすぎた。テリンジだ。GNADクイーン部隊所属のテリンジだ。」

「ノーランドってんだ。見ての通り料理人だ。」

こんな禍々しい料理人いてたまるかぁ!というツッコミは心にしまい、俺はノーランドと握手を交わす。

これが俺とノーランドの最初の出会いであり、ノーランドの野望やらを聞いてスカウトしてあれよあれよと同僚になり戦友となって行くのだがそれは、また別の話。
ちなみに、救援部隊が来た際に、ラーメンが美味すぎてノーランドが「収納」のギフト所持者であったり、意志を持った得物「荒噛」の事とかを、本部に伝え忘れてた為スカウトしてからしばらくはクイーン部隊ではなく食堂で本当に料理人をやっていたのもこれもまた別な話。


続く?

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