シスターネル1000フォロワーおめでとうファンアートならぬファン小説。「紫煙はすこしほろ苦く」


ある日の事、シスターネルの居る教会に依頼が舞い降りた。
最近は暗殺や汚れ仕事が無く優雅に安定剤である吸引剤を楽しんでいた矢先である。

普段シスターの元に依頼が来る時は主に二通りである。一つが懺悔室を通して直接依頼主が来るパターン。もう一つが密書という形でとあるルートで届けられるパターンだ。
今回は前者のようである。
依頼主は東区のマフィアの使いだ。このマフィアはスカーレットファミリーといい、主に用心棒や荒事の仲介などで生計をたてており、義を重んじてる部分があり市民の評判はいい。

依頼内容はシンプルだ。
「西区のザフォードファミリー管轄の薬物売買組織の壊滅。」

「ふむ。私みたいな者にお願いすること・・・かしら?」

「わかんだろ?ウチらみたいな看板掲げてる奴らが表立ってよその組潰す真似してみろよ?たちまち戦争だぞ?」

「あら?ならば警察に任せてみては?」

「くそ、からかいやがって。それがアテに出来てたらこの国はさぞ住みやすいだろうよ。」

この国の司法は表向きは機能しているが実態は汚職が進みきっており、ならず者達にとってのユートピアになっていた。

「あらあら、そんなに怒らないでもらえるかしら。もちろん依頼は承りますわ。報酬は『いつものように』。」

「わかってるよ。これが前金だ。500入ってる。期限は5日以内で頼む。」

それからマフィアが教会を出た後シスターネルは準備に取り掛かる。薬物売買組織のアジトの見取り図の把握、現場視察。それに武器の調達、手入れと無駄のない動きで全てを終えた。

依頼を受けた明くる日の深夜、戦闘服に身を包んだシスターネルはアジトに侵入。いつもの手際の良さで次々と構成員の息の根を止めていく。
ナイフで、暗殺針で、ワイヤーで。まるで流れ作業のように淡々と。

ちなみに銃火器も装備をして入るもののめったに使わない。音を嫌うのもあるがより確実性を求めた結果なのだ。

シスターネルが最後、組織の親玉がいるであろう部屋のに侵入した時違和感を感じた。

生体反応はあるのだが肝心の敵がいない。
そしてすぐさま横に飛ぶ。すると、先程までシスターネルが立っていた場所に天井からやせ細った男が刃を手に降りてきていた。
奇襲に失敗したにも関わらず男はニチャニチャと気味の悪い笑顔をシスターネルに向ける。

「・・・あらあなた薬物反応がありますわね。商品を使ったのかしら?」

「ケヒャヒャヒャ!!あぁ、女かぁ。ネズミは女かぁ。ひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」

男はシスターネル目掛けてナイフを突き立てながら突進。それをひらりと交わし首筋にナイフを突き刺そうとするシスターネル。しかし男は常人ではありえないような動きでそれを回避。そしてさらに追撃としてシスターネルに蹴りを放った。

腕でガードしていたものの男の体躯からは考えられないパワーにシスターネルは壁に叩きつけられた。

「あ~あ~アハ。アハハ・・・しねぇ!!!」

男は好機とばかりにシスターネルに再度攻撃を仕掛ける

(腕は大丈夫。骨も異常ありませんわね。この膂力は薬物の恩恵かしら?)

男が迫る刹那シスターネルは短く思慮した後、久方ぶりに銃を構え発砲した。
リボルバー式の愛銃から放たれた弾丸は男の肩に当たった。しかし薬物による痛覚の遮断からか、勢いに半身になりながらも迫る勢いは収まらない。

「き~か~な~い~よ~!!!」

男の攻撃範囲にシスターネルが収まるまであと一歩まで迫った時男は突然よろけて倒れた。

「あ、あれ?なんだこれ?」

「ふぅ。本当はこれ、使いたくなかったんですの。なぜなら。」

シスターネルがそう言った瞬間男は口から吐血し、白目を向きながら、ガタガタと痙攣を起こした。

「薬物使用していてもこの『毒』は効くのね。いいサンプルになりましたわ。ありがとう。」

愛銃を優しく撫でながら未だに痙攣が止まらない男に向けて感謝と共に無慈悲にもその場を立ち去るシスターネル。

アジトから数十メートル進んだ後手元のスイッチを押すとシスターネルの後方で大爆発が起き文字通り薬物売買組織は壊滅した。



後日の事


シスターネルは吸引剤を楽しんでいた所に『神父』が声を掛けた。

「おや?あまり機嫌がよろしくないようだね?」

「・・・そんな事ありませんわ。」

「いつもならば軽口の一つも言いそうなのに無いって事は何かあったのかい?」

シスターネルは無言で吸引剤を嗜む。
神父は向かえ側に座りながらシスターネルに優しく微笑みかけた。

「・・・もう!なんですの!?ニヤニヤして!」

「ふふふ、そんな君も珍しいなって思ってね。先日の依頼であれ、使ったんだね?」

シスターネルの放った銃弾の毒はとある特殊な製法で作られており値段も高価。そしてそれを作れる人も限られている。

「せっかく『あの方』がくれたプレゼントをたかがジャンキーに使ったんですのよ!!あぁ!思い出してまたイライラしてしまいましたわ!!」

「ははは!でも君が強くても万が一があるからね。そして『彼』も君が無事ならその方がいいだろう?ならあれを使ったのは最善なんだと僕は思うけどね。」

「もう、神父さまは女心をわかっていませんのね!」

プリプリと怒るシスターネルを笑顔で見つめる神父。

そしてため息と一緒に吐き出した吸引剤はほろ苦さと共に紫煙となって空に登っていった。


fin



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?