engage~黑装の宴~
4話
「『風炎舞装』!!」
「『地水豪接』!!」
「『炎舞双剣』!!」
カイルは矢継ぎ早にエンチャント魔法を行い六元素の内四元同時使用を行う。
「こっからだおらああああ!!」
炎と風の推進力により先程とは打って変わってカイルがノーランドを攻め立てる。
「しゃああああ!!」
連撃に次ぐ連撃にたまらずノーランドは距離を取ろうとするがカイルが食らいつき離さない。
「調子に!乗るなああ!!」
ノーランドは手斧に力を込めるとカイルを吹き飛ばし何とか三歩程の距離を空ける。
「なにをしやがった!?」
「知らね!急に調子が戻った!まだまだ行くぜ!」
(なんだ!?何が起きた!?あいつの戦闘スタイルは魔法剣士だ。しかし並の戦士よりも手数が多い!それに魔力量もだ。・・・魔力?そういやさっきよりも修練所の魔力が濃いぞ?)
ノーランドがカイルの連撃を捌きながら思考していると同時に観覧していた人物もカイルの猛攻に目を見張る。
(ふむ、どうやら成功したみたいですね。地球はガイアと違って空気中の魔力は薄いですから。魔石を使って調整させていただきました。ほぼガイアと同じ魔力量だとこのような戦い方をするのですね。まさに獣。流派も効率性もなしに純粋に力とスピードで押していく。さすがはハンターと言った所でしょうか。)
「みっちゃんどうした?腹減ったか?ポテト食う?」
「・・・遠慮しておきます。テリンジ君はどちらが勝つと思いますか?」
「ん?ん~カイルの本来の戦闘スタイルがあのゴリ押しならノーラが勝つかな。」
「ほぅ。」
「だってあいつ手の内の八割も出てないぜ?ま、カイルがまだ奥の手持ってるなら話は別だかな!」
(ま、僕も今の所同意見ではありますがどう出るか。)
「『炎水舞双槍』!!」
ここでカイルが二刀流スタイルから二槍流へと変化させる。
「なんでもありかよ!」
「ハンターは武器を選ばないってなぁ!!」
槍による連撃はリーチが長い変わりに引きの際の隙が出来る。しかし二槍流とする事で極限まで隙を減らした。カイルがモンスター討伐で培った我流の戦法だ。
「ぐっ!」
ここで初めてノーランドに一撃が入る。アーマーに阻まれ、かつバックステップで直撃を逸らした為ダメージはほぼない。
「はぁ、認めるよ。お前は強者だ。」
「ありがとよ!じゃあ俺の勝ちでいいか?」
「うぬぼれんな。俺も少しばかりギアを上げる。」
するとノーランドは右手を空中に伸ばした。
「来い、荒噛(あらばみ)。」
ノーランドが短く唱えるとズズズと空中に穴が開きそこから異形の武器が現れる。
特徴としては無骨な柄、さらに厚めの刀身にはギザギザとした刃が猛獣の牙を思わせる。
鉈とも言えるし鋸とも言えるその武器は武器そのもののオーラも相まって相対するカイルに恐怖を覚えさせた。
「ちょ!ノーラ!荒噛出すのかよ!俺達も巻き添え喰らうだろうが!」
「大丈夫、『片方』だけだ。おいガイア人!いや、カイル!この一撃に耐えたら負けを認めてやるよ。」
「こ、こいやああああ!!!」
「耐えれたらな!!吼えろ荒噛ぃ!!」
ノーラは荒噛を上段から下段へ一振すると斬撃が飛び、その様は咆哮する獣の如くカイルを襲った。
「がああああああ!!」
カイルは槍を交差させ、さらに無演唱により地魔法で足元を隆起させ迎え撃つ。
咆哮がなりやんだ後修練所のほぼ中央ではボロボロになりながらもなんとか立っているカイルがいた。
「・・・た、耐えたぞ。」
「・・・だな。俺の負けだ。」
一瞬の静寂の後修練所は歓声に包まれた。
カイルを称えるもの、ノーランドの強さに憧れを持つ者、特に医療チームのミラに至ってはぼろ儲けに浮かれに浮かれていた。
「お前は強いな。よし、飯食わしてやる!」
「助かる、腹ぺこだ。」
「ふぅ、何とかなったな。」
クライブは冷や汗をかきながらも勝敗の行方に安堵した。
心無しか他のメンバーもカイルに対して怪しがる雰囲気は薄れたようにも見える。
「それでは改めて食事をしながら皆を紹介しよう。ノーランド、我々の分の食事も頼めるか?」
「おぅ!1人も10人も変わらねぇよ!」
「よっしゃ!2日ぶりのノラ飯だぜ!」
テリンジを初めノーランドの料理となると皆目を輝かせた。
~食堂~
総勢300人は余裕で入る食堂の一角にカイルを含む第5部隊クイーンチームの面々が料理を心待ちにしていた。ちなみにカイルはミラによる治癒魔法で全快しているものの戦闘時の絶好調な様子からまた疲れた様子に戻っていた。
「う~ん、やっぱり体が重いんだよな~。」
「疲労とかじゃなくてか?」
「違うんだ。例えるならめちゃくちゃ高い山に登った時のような感じだな。」
「へぇ~。ま、その内慣れるって!」
「だといいんだがな~。」
テリンジとカイルが会話を楽しんでると料理が運ばれてきた。運んできたノーランドは先程とは打って変わって料理人の格好をしている。
「あんたその格好、」
「ん?元々俺の本職はこっちだからな。」
(あれが料理人の一撃な訳ねーだろ!)
カイルは心の中で突っ込むが今は鳴る腹の虫を退治しなきゃならない。
「まあとりあえず食ってみろ!」
「あ、あぁいただきます。」
カイルはステーキ肉に齧り付いた。
「う、う、うめえええええええ!!!なんだこれ!なんだこれ!」
カイルは肉に齧り付くと一心不乱に食べ続けた。
「はっはっは!うめぇだろ!」
コクコク
もう無言で頷くしか出来なかった。言葉を発する前に開いた口に次の料理を運びたい。それほどまでの美食であった。
~数十分後~
おかわりを繰り返し、いい具合に腹が脹れた一同はノーランドを交え食後のお茶を飲んでいた。
「さてそろそろ他のメンバーの紹介に入りたいがいいかな?」
クライブの言葉にカイルがうなづいた。
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