【Episode 7】いよいよ撮影当日!…が、しかし。まさかのハプニング発生!お天気も心配だし、一体どーなっちゃうの?!
#24
8月4日、木曜日。
ひまわり畑での撮影当日。
朝方4時過ぎに目が覚めた。正確には「起こされた」というべきか。
普段も明け方ごろ、息子の泣き声に起こされることがある。しかしその日、息子はわたしの隣でなおもスヤスヤと眠っていた。
わたしを起こしたものの正体は、窓の外で轟く雷鳴であった。
「まじか…」と思ったが、こればかりはどうにもならない。
残念だけど今日の撮影は中止かな、なんてことを考えながら、再び眠りについた。
次に目が覚めたときには、雷鳴はすっかりなくなっていた。
空はどんよりと厚い雲に覆われてはいるものの、雨は降っていなさそうだ。
リビングに行くと、先に起きていた義母が最新の天気予報を教えてくれた。お昼頃から雨が降り始め、夕方以降は雷雨になるかもしれないが、午前中はなんとか持ちそうだよ、とのことだった。
撮影するなら午前中の短期決戦だな、と思った。
自分と息子の身支度を終え、スマホの通知を確認すると、3人のメッセンジャーに未読メッセージがあった。
「おはようございます!
ごめんなさい、電車を目の前で逃してしまい…
成田に着くのが10:00過ぎです。
ほんとごめんなさい」
こみー-----!!!!!
#25
ひまわり畑での撮影は11時から13時で申請していた。
そのため9時半にJR成田駅で待ち合わせ、滑河駅に向かい、そこから10時発の牧場行きのシャトルバスに乗る計画だった。
滑河駅から牧場までのシャトルバスは、一時間に一本しか出ていない。
10時発を逃すと、次は11時発だ。
そうなると心配なのはお天気だ。
今朝の天気予報によれば、お昼ごろから雨が降り始める。だから撮影は午前中の短期決戦かな…と考えていたばかりなのに。
少し経ってまみーごから連絡がきた。
「そしたら成田駅でどうするか相談する?あーりんもう家でたかな??」
次にどうすべきか、わたしの中では既に答えが出ていた。
これしかない。
「もし牧場行くで良いなら、こみーを小野寺家の車で成田でピックアップしようか?」
つまりこういうことだ。
まみーごには、予定通り10時発のシャトルバスを目指してもらう。
わたしはこみーの成田駅到着時間に合わせて、義父の車で10時頃に成田駅に向かう。そこでこみーをピックアップし、一緒に牧場に向かう。
成田駅から牧場までは車で30分程度かかるが、それでも11時のシャトルバスを待つよりは、午前中の撮影時間を確保できる。
「ほんと申し訳ない。千葉駅で40分待つの辛すぎる…」
「そもそも、牧場行くで決定で良いかな?」
「そちら今天気どんな感じ?」
「いまは曇ってる!朝方は雷雨だったけど、雨止んだよ。でも、午後また降るかもらしい」
「行けるのなら行きたいね!」
そんなやり取りをこみーとしているうちに、決断のタイムリミットが迫っていた。あと5分程度で決めないと、そもそも自分も間に合わない。
「とりあえず、いくかーー!笑笑」
まみーごが旗を振った。さすがである。
「晴れるかもしれんし!笑笑」
「いくか!!」
「よしいこう!」
と、こみーとわたしも続いた。
しかしここで、まみーごが大事な問題提起をした。
「てゆか普通にひまわりの開花状況みるのわすれてたんだけど大丈夫かな、笑笑」
さあ、お決まりのネット検索の出番だ。今回はTwitterで調べた。
どうやらひまわりたちは、ご丁寧におじぎしているらしい。
そもそも撮影できるのかどうか確認するため、牧場に電話をかけたが、自動音声の案内が流れた。電話受付は9時30分からとのこと。
9時30分になるのを待つ間、わたしは義両親に事情を手短に話し、成田駅でメンバーの一人をピックアップして牧場まで送迎してほしいと義父に頼んだ。
…と、サラッと書いたが、今一度想像してほしい。
夫抜きで義実家に帰省し、義理の父に、夫ではない男性の送迎を頼んだのだ。
なかなか際どい状況だと思うが、それを笑って了承してくれる義両親の懐の広さと、それが許される関係性を築いてきたわたしに拍手を送りたい。
「義父にはこみーピックアップのこと伝えたよ、助手席座ってもらうことになるけどよろしく!!」
「大変申し訳ない!一生ネタにしてください!!(笑)」
言われなくてもそのつもりだ。
#26
9時30分になると同時に牧場に再び電話し、撮影可否を問い合わせた。
昨日の雨でひまわりはほとんどおじぎしているが、撮影そのものは可能との回答だった。
わたしは2人にそのことを伝えた。
「ひとまず向かうか!カメラマンが良い感じにしてくれるでしょう!笑」
「カメラマン、全力でやらせていただきます」
わたしは息子をチャイルドシートに載せ、義父の運転で成田駅に向かった。
しばらくしてまみーごから「とりあえず無事JRのってます」と連絡が入った。それに続けて、カメラマンに痛恨の一撃を放った。さらっと。
「よく考えたらさ、会うの初めましての友達の義父に車で牧場送ってもらうってやばいね笑笑」
ええ、まったくおっしゃる通りだ。
「ほんと面白すぎるよね笑笑 わたしが義実家に夫抜きで泊まってる状況もなかなかだと思うけど、更に上を行くとは。笑」
これに対して当のカメラマンは、
「このままこのエピソードを冊子に埋め込むか…」
と、この状況をネタにする方向で腹を括ったようだ。
そうこう話しているうちに、成田駅に到着した。
「成田駅ついた、改札前で待ってるねー」
チャイルドシートに息子を残したまま、わたしは義父の車を降りた。
#27
少し経って、改札の向こうにこみーの姿をみつけた。
向こうもわたしに気づいたようだ。
いちおう初対面なのだが、既にツッコミどころが多すぎる状況だった。
こみーの第一声は「いやー、本当に申し訳ない!」だったと思う。
それに対してわたしは「ほんとにおもしろすぎるんですけど」とかなんとか言ったような気がする。
とりあえず、爆笑した。
「笑うしかない」とはこういう状況を指すのか。
車に戻ると、慣れないチャイルドシートで泣きじゃくる息子を義父があやしてくれていた。
わたしは義父にこみーのことを簡単に紹介してから、後部座席の息子の隣に座った。義父は運転席に、こみーは助手席に座り、成田ゆめ牧場へと向かった。
牧場までの道中は、他愛もない雑談をしていた。
義父はこみーに、自身の会社員時代の話や現在のライフワーク、息子(わたしの夫)のことなどを話した。きっと夫はくしゃみをしていただろう。
それから、こみーの仕事の話を聞いた。こみーは千葉県市原市の概要に始まり、その中で自分が携わる仕事の詳細を説明した。義父はもちろんだが、わたしもその時はじめてこみーの仕事内容をきちんと知った。
そんなこんなで義父と0歳の息子、それからいちおう初対面の夫以外の男性と牧場を目指す不思議なドライブの車内には、なんだか和気あいあいとした空気が流れていた。
先に牧場に着いたまみーごが、わたしたちの到着を待つ間、牧場全体の地図と授乳室、ベビーベッドの位置を確認してくれていた。
まみーごといえば台風、いえ「夏至南風(カーチーベー)」ばりの勢いと巻き込む力につい注目しがちだが、こういう心遣いをしてくれる面も素敵だなと思う。
牧場沿いの道路まで来ると、受付近くのベンチに座るまみーごの姿をみつけた。車から手を振ると、まみーごもこちらに気づき、手を振り返してくれた。
適当な場所で停車して車を降り、息子をベビーカーに乗せた。
こみーは「少しばかりですが…」と、義父に菓子折りを渡していた。
わたしは義父に、迎えの時間が決まり次第また連絡しますと伝えた。
まみーごと合流した。
画面上では10回以上顔を合わせていたが、直接会うのは初めてだ。
お互いに知り合ってまだ1か月ちょっとの間柄だが、初めましての初々しさを感じるには、あまりにも密度の濃いやり取りを既にしていた。
空は相変わらず曇っていたが、少し明るくなってきそうな気もする。
わたしたちは牧場の受付へと向かった。
さあいよいよ、撮影開始だ。