高専カンファレンスin東京2018での登壇、あるいは高専生の生きる隅っこの世界について
高専出身ライトノベル作家の藍月要です。
7月15日、高専カンファレンスin東京2018に発表者として参加してきました。せっかくなので、覚えていることをつらつら書いていこうと思います。
・高専カンファレンスとは?
高専現役生や、高専出身者たちがうじゃうじゃ集まる闇の宴。
漂う瘴気のその濃さは、法に触れるか触れないか。
基本的には、趣味や仕事で得た知見について、話したい人が事前に申請して登壇し、他の参加者がそれを聞くという形式です。
全国各地で開かれており、その開催数はもう100を超えます。
異様なまでのツイート書き込み数&勢いを誇り、毎回のようにトレンドトップをかっさらう。今回もやはりこのように。
高専カンファレンスin東京2018は、記念すべき10周年記念回みたいです。
藍月は、高専カンファレンスへの参加はこれで3回目(藍月要名義は2回目)。
・参加準備
今回、20分発表という長めの枠に申し込みました。
それについて、ツイッターではこのように発言。
自分にプレッシャーをかけています。
・当日
威勢のいいことを言っておきながら、情けのないことに朝は体調不良。アホか。
栃木に住んでいるので、会場のある東京まで電車に揺られなければなりません。
懇親会まで含めると一日長いし、この体調ではちょっときびしいかなと判断して、もうすこしだけでも寝ることに。
自分の発表は午後からなので、それに間に合うように行こうという作戦です。
しかしこれ、午前中の発表は聞けないということです。痛恨事。
午前中にはマンガによる技術解説書「わかばちゃんと学ぶ」シリーズの著者、湊川あい先生が登壇するのです。
是が非でも聞きたかった……。
なんて思っていると、後日、湊川先生はスライド資料をアップしてくださいました。読み込んで感激のあまり興奮そのままにツイート。
ありがてえや……。
午前中には他にも、学生時代の後輩の発表や、こんなキレッキレのステージがあったらしい。
生で見られず残念。
・会場に到着
場所は、写真のDMMグループセミナールーム。とても綺麗な会場で驚きます。
こんなところに、淀んだオーラを纏いし我ら高専の民がやってきていいものかと本気で心配する。床が腐食しても責任をもてない……。
・さっそくのトラブル、取り戻せ人権
発表前に機器の動作確認をしてくださいとのお話だったので、到着早々やってみることに。
しかし、そこで痛い目にあう。
なんと! スライドを映すことができない。
ノートPCはちゃんと持っていったの!! ほんとうに!!
でも会場の機器がですね、さすが新しいもので、それ自体は素晴らしいことなんですが、残念ながら藍月のノートPC唯一の映像出力端子VGAに対応しておらず……。
めっちゃ焦る。
VGAなどという、いにしえの規格をもってきた人間には人権が与えられない今回の高専カンファレンスです。ピンチです。
高専カンファレンスにおいて、参加者というのはべつにお客さまでもなんでもなく、全員がイベントを作り上げる側の人間なので、運営の方に泣きついてもとくに助けてはもらえません。
「その端子は……ないっすね……」と、困らせてしまうだけでした。そりゃそうだ。
なんとかせねば。一緒にいた後輩のkim38君もいろいろ試してくれるが、なかなかうまいこといかず。
インターネッツを頼る藍月。するとなんと、すぐさま助けてくれる方が返信を下さった。
HDMI端子搭載・我らがVAIOという人権の塊を手にやってきてくれたのは風兎(@VentArgente)さん。後光がさしている。
ほんとうにありがとうございました。人の世の中のあたたかさを知る2018年夏です。
・きゅんくん(@kyun_kun)さんの発表
ファッションのひとつとしてロボットを身に纏っている系女子、という表現で合っているだろうか。きゅんくん(@kyun_kun)さんの発表。
きゅんくんさんは湊川先生と同じく、高専出身ではないちゃんとした人類で、運営の方がお願いしてきてくださった方です。
ロボットも服も自分で作るというそのエンジニアリング精神に感服するばかり。
しかし、ロボットがファッションとは未来だ。ずいぶん素敵な未来。
発表の中で、
「機能をもたないロボットが生まれてもいい」
といった旨のことをおっしゃっていた。ぐっと意識を惹く手触りの言葉。
フランスの哲学者、ジャン=ポール・サルトルは
「実存は本質に先立つ」
と言っていた。
なにかのためにロボットが作られるのではなく、まずロボットが作られ、それから機能を獲得していく。もしかしたら来るかもしれない未来のひとつ。
したり顔でツイートしてました。さっと哲学関係の名詞を出せるのがかっこいいと、ずっと信じている。
これからもなにかにつけてドヤっていきたい所存。
ちなみに今これを書いている最中、アイドルマスターミリオンライブの誇るクール系美少女ユニット、EScapeの楽曲を聞いています。
EScapeの曲は、全員がアンドロイドという設定で歌われており、大変にエモいのでおすすめです。クール系美少女ユニットにひれ伏そう!
・自分の発表
発表資料はこちら
(noteってwordpressみたいにスライドシェアをそのまま埋め込みすることできないのかな? やり方がわからんかった)
実際の発表ではこれの前に、ポプテピピックのヘルシェイク矢野回をパロディした、高専内輪ネタ全開のコウセンミミッミ・ヘルシェイク藍月をやったんですが、あれはスライドだけ見せてもしょうがないので割愛。
ライブでやらねば意味がない。
会場を沸かせた実感があります。とても楽しかったです。
あらためて、ありがとうございました。
後日、ネットを漁ってみても好評で、嬉しくてついついつぶやく。
・次の発表の待ち時間にて
風兎さんに具現化された人権、もといVAIOをお返しすると、なんとこのようなものが……!
(写真は後日、帰ってから撮ったものです)
風兎さんのご友人、奥慶士郎さんからとのことで、高専日誌という同人誌をお手紙付きで頂いてしまった。めっちゃ嬉しい! ありがとうございます。んふふ。
・株式会社jig.jp取締役会長・福野泰介さんの発表
さらっと社長とか会長とかが飛び出てくるのも高専界隈および、高専カンファレンスの奥深さ。
『すべての技術はメガネに通ず』というタイトルで、ARやVRゴーグルについての愛や野望を語っていらした。
発表中、途中で電池が切れるまでAR用のゴーグルをつけっぱなしだったのがかなりサイバーでよかった。高専マインド。
とても個人的には、jig.jpさんはやっぱり、プログラミング専用こどもパソコン IchigoJam関連の製品がすばらしいと思う。
ビジュアルプログラミングも素敵だが、ごりごりコードを書いていくのが合う子もいるし、それでしか絶対につかない力というものもある。
IchigoJamのようなプロダクトは、世に必要なのだ。
ちなみに福野さん、なんと自分の発表前に、名刺を手に挨拶に来てくださった。びっくりした。
とても嬉しくて、「後であらためてぜひ!」的なことを返したのですが、結局、この日はそれから一度もお話できなかった……(福野さんの周りには常に人がいらっしゃり、また、ありがたいことに藍月も他の方々にたくさん話しかけて頂いていたため)。
非常に心残りだったので、次があればしっかりお話しにいきたい。
あと、この裏では、高専生の就活支援プロジェクトを行っているりゅーかんさんの「高専生を、もっと挑戦者に!」という発表も行われていた。
こちらも聴きたかった。
・コーヒーブレイク
休憩時間。質問受け付けブースに陣取ることに。
すごくありがたいことに、たくさんの方々がサインをもらいに来てくださった。描きまくった覚えがあります。
しかしそこは高専の民、やはりなにかがおかしくて、藍月がこの日サインをさせてもらったのは、
・拙著
・Tシャツ
・関数電卓
・ノートPC
・スマートフォン
・iPadのドローイングアプリ上
などなどです。上の2つはいい、問題は下の4つ。方向性にやや偏重がみられる。
めでたく、おそらく藍月はラノベ作家界でもっとも関数電卓にサインをした作家と相成りました。
休憩時間は結構長かったので、サイン会の他にも、いろいろな方とお話することができた。全員はとても書き切れないくらい。
たとえば、鈴木駿太 (@KosenSsuzuki)さんとは、高専から大学編入する際に発生する問題について、ツイッターで以前から意見交換をさせて頂いたんですが、あらためてそれについて話せた。とても頼りになる。
大学編入で困る高専生を、ひとりでも減らせたらいい。ほんとうに。
湊川あい先生ともお話することができた。「わかばちゃんと学ぶ」シリーズの著者さんです。
・著述業をやっている
・専門知識を説明する内容を書いている
という共通点がある。こういう方とはなかなか出会えない。
このあともちょくちょく、湊川先生とはお話する機会があり、とても有意義な時間が過ごせた。穏やかながらとても理知的な方で、話していて楽しかった。
技術書展に出てみてはどうか、とのお話もしていただいた。商業本も出していいらしく、会場限定の同人誌といっしょに持っていくとgoodとのこと。
いろいろ考えてみよう。
・細かいことがどうでもよくなるおもしろさ
「アイデアをつくる技術」という題目で、じぐそう(@neo6120)くんの発表が始まった。
綺麗にまとまった発表とはちょっと言いがたかったかもしれないんですが、そんなことはど~~~~~~~~でもいいくらい、おもしろかった。
パワープレイの手本である。これもまた高専カンファレンス。とても大好きです、こういう発表。
・LTトップバッター、にしこりさぶろ〜くん
すこしの休憩を挟み、LT部門が始まった。それまでの20分発表と違い、持ち時間は5分だ。
トップバッターはにしこりさぶろ〜(@subroh_0508)くん。
さぶろ~くんは、前回の高専カンファレンスin高尾で知り合えた子で、アイマスとポケスペを愛しているという、とても趣味が合うナイスなガイ。
機会があればぜひ飲みに行きたいです、ほんとに。残業しまくりみたいなのが心配。最近は減ったみたい?
発表内容は、Flutterというツールの使い方や利点について。
真面目な発表をしている……! 驚いてしまった。
前のカンファでのさぶろ~くんの発表は、高専の構内にネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲(迂遠な表現)をおっ勃て、いえ、おっ立てるというものだったので、ギャップがすごい。
きっと本人にその自覚はないのだろうけど、真面目で優秀で勉強熱心なエンジニアなんだろうなというのが、発表からはひしひし伝わってくる。
技術への真摯さは、隠せるものでもなければ騙れるものでもない。こういう子がいることを、ひとりの高専生としては、勝手に誇りに思ってしまったりする。
・高専カンファレンス、バ美肉部
続いて3連続、今流行りのバ美肉をかました子たちの発表。
共通しているのは、「簡単にできると思ったし、やったらやっぱ簡単だった」という感想。大変高専生らしい。
その場でバ美肉してそのまま発表をするという、Liveバ美肉まで飛び出した。絵面が強烈。
とても楽しそうだったのが印象深い。こうして世界は美少女で満たされていくのだ。
しかし、個人的に一番好きだったのはいぶき(@3rdJCG)くんのコンデンサー型Vtuberです。
走ったり転んだりしている姿が大変かわいらしいのでぜひ見てほしい。
コンデンサーなので最終的には妊娠して引退かと思うと、なかなか感慨深い。
・遠のいていく意識
集中して聞けていたのはこのあたりまでで、この先はあんまり記憶がない。
もちろん、発表に問題があったわけではありません。単純に自分の体力的な話です。
そもそも朝から体調不良だったのを、すこし無理矢理に東京まで遠征してきたので、そのツケが回ってきた。
藍月には、人前でしゃべっていると体力・体調が回復していくという特殊アビリティが(おおげさに言っているのではなくほんとうに)あるのですが、そのカバー分があってもちょっと厳しい。
意識を半分くらい飛ばしつつ、おとなしく体力回復に努めていました。
・懇親会
おしゃれなケータリングが用意され、立食形式の懇親会がはじまった。少し体力も回復したので、ごはんを楽しむ。
またしても、書き切れないくらいたくさんの人と話ができた。後半、もう完全に喉が嗄れていました。
・隅っこに生きるものたち
高専カンファレンスのノリは、一般の方には少々、瘴気が濃すぎるきらいがある。
結局、高専生という種族は、なにをどうしたって、社会のメインストリームにはなりえない。
なるべきだなんて思わないし、なっていいとも思えない。世界が高専生で満たされてしまったならば、パニック映画の始まりだ。
高専生らしさというのは、誤解を恐れずにいえば、「道から外れる躊躇のなさ」だと思っている。
高専にはいろんな人間がいる。だから、変わっている人間である事は、めずらしくもなんともない。
そんなところで十代後半を丸々すごせば、できあがるのは野道荒れ道の爆走者だ。すくなくとも、レールは好まない。
誰も行くことのない道を、誰かが行ったかどうかなど気にせずに行く。そんな人間が主流になんて、やっぱりなってはいけないのだろう。
高専生は、好むと好まざるとにかかわらず、隅っこに行きがちだし、隅っこで生きがちだ。
でも、だからといって人は恋しい。ひとりは寂しい。
社会に出ると、当たり前だけれど、周りは高専出身ではない人ばかりになる。この空寒さは、なかなか骨身に堪えてしかたない。
高専カンファレンスのような場所があるのは、ささやかな救いのひとつだ。
いっつも一緒にはいられないけれど、たまにああして集まって、瘴気をお互いまき散らしまくって、またそれぞれの場所へ戻って生きていく。
DMMグループセミナールーム、その美しい木目の床に跳ね回った、変な色味に淀んではいても、たしかに熱く明るい笑い声を、私たちは誇ってもいいんじゃないかと思う。
それは綺麗じゃなかったけれど、輝いてはいたのだ。
みんなのご支援まってるにゃん!!