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バグった料理を楽しむ脆弱性

 先週。進捗ダメです…なんか人生つかれたんや…つまり鳩やわ…ホーホー・ホッホゥ…と感傷に浸っていおいて。からの。空元気テンション・バースト

 こういうのは軽度の双極性ナニカという現象なのかもしれないが、診断を受けなければ診断結果は出ない。ぶつからない壁など壁ではない! ガラスの壁は透明でも、一応ぶつかるから壁なのだ。でもガラスごとき、割れ。

 変態紳士の切替は早い。夜は明けた。朝だ。起きろ、魂。納豆キーマカレーおいしいのにナンデ!? と心の中のヤンデレもうるさい。なお進捗は引き続きダメです。ただ人間は追い詰められた時こそ、真の力を発揮する。火事場の馬鹿力。長くは続かない。その限られた集中力が言う。

「納豆キーマカレー・とろけるチーズのすがた」ごはん抜き。その深淵を覗くとき、黒い粒胡椒がピリリとSPICYな味を返してきておいしい。


もしかして:お前の脳がバグってる


 そうだね!
 脳が筋肉でキレッキレだね!
 いいよいいよ〜いい肉圧、出てるよ

 表面的にはありえないけど、おいしいもの。俺よりウマい組み合わせに会いに行く。これぞ求道者の生き様よ。レシピの暴力に屈するな。我が飯に一片の悔いなし。それが正しいし、それでいいと思っていた。

 けれど、それは本当だったのかい? いや元々嘘だったのは知ってたね。けどね、改めて嘘を本当にするの、ちょおっと無理があったよね~~~という思いが脳裏をよぎる。

 どれだけありえない組合せでも、記憶の底からなんか似てるやつを検索してHITするからセーフというか、ウマいと感じる認識の範囲を拡張してるというか。認知許容範囲キモズムの谷を越えんとし、じゃないんだよ。超えりゃいいってもんじゃないんだよ。

 つまり料理の宇宙に適応しちゃったニュータイプってワケ。考えた結果、感じちまったよ、完全にな。そんな思いを確かにすることとなった、今回のそれ以上いけない組み合わせはこちら。

SPICYツナ・玄米フレーク(温)


 いや冬だから。朝食の多様性に困りますやん。いうて玄米フレークって薄甘いながら塩顔してるやないですか。おかずクレープてありますやんか。グラタンはドリアやんか。したら、ホットミルクかけて胡椒入れて、貰い物で使い道に困った缶詰シーチキン入れたろかってなるやないすか。

 そうはならんやろがいって?
 いやなっとるやろがい。

 しかもすんなり完食してしもうてな。しかも「思ったよりマズくない」って思って。いやいや「マズい」をなぜ期待したんだって。でもわかるやろ。この組合せは正直アカンて。でもイケてしもたんよ。この絶望が君らに分かるんか? おぉん!?

 マズいはずが、マズくねえ――この絶望よ。
 圧倒的素面しらふである。

 ね。ダメでしょ。谷、超えたよ。ゴールだよ。行き止まりという終着点デッド・エンドさ。詰みであり罪だ。ここが桃源郷で崑崙山だ。料理をHACKしようと思ったら味覚をHACKしていた。何を言っているかわからねーが、ウィザード級ハッカーになったその先に見える世界が、こんなにちっぽけで退屈だなんて。これからいったい何をHACKすればいいんだ。あんまりだ。

 ねえ、どうして人間はご飯の美醜にこだわるんだい? 僕には理解できないよ。いつの時代も、生きるために棄てられた残飯を食べる個体はいるじゃないか。まったく不合理で不明瞭で不可解な存在だ。わけがわからないよ

HACKされたバグは、ただの仕様だ


 最近は仙人になりてえな、インターネット仙人しか勝たん。などと思っていたがこういう意味で超人というか、世間様に顔向けできない方向の仙人になっていたとは思わなくて。

 あのね、僕ね、個人主義の果てに漂う亡霊みたいなイメージはあったけど、人を捨てていいかって言うとどうかなぁ。こんな俗世のグルメ感覚と埋められない溝が生まれちゃったらさ、専業主夫にだってなれないじゃん。そんな予定ないけど。

 いいんだ。どうせ僕は人が食べないようなゴミを食べて生きるしかないんだ。きっとそうなんだ。これがバグった料理を楽しむ脆弱性よわさなんだ。

 力に酔う者は力に溺れる。すべての力は反転する。いいことも、わるいことも、表裏一体なんだ。これは現実なんだ。眠ることでしか夢には逃れられない。そして僕は考えるのを止めたバグを受け入れた


 次回! クッキングバグ、第七話:
 『麦飯と雑穀のスプラッタ・リゾット』

 みんなもたのしく、つくってバグろ✨

(ジャンル:運命と絆の自己同一性崩壊RPG)


われわれが深淵を覗くとき、深淵もまたわれわれを覗いているのだ……