「この先は関係なさそうだ」(かわいそ笑/梨)
ホラーゲームの実況プレイ動画をよく見る。
実況動画は、ホラーゲームのプレイを追体験できる。訳ではない。熟練のプレイヤーの場合は、プレイが安定しているので、恐怖演出が挿入されても、あまり怖くはない。(逆に、操作がおぼつかない場合は、プレイヤーのリアクションを楽しむことがほとんどなので、やはり怖くはない。)
ホラーゲームに限らず、ゲーム内のプレイヤーは逃走する、あるいは反撃する等の手段があり、もしゲームオーバー(=しんでしまった)しても、意思さえあれば、何度でもコンティニュー=(生き返る)できる。
そのシステムがあるから、ホラーに限らず、誰もが安心してプレイできるのだと思う。「いくらしんでも生き返る」安全が保障されているから。
実況プレイ動画の視聴者は、さらに安全を保障されている。「いくらしんでも生き返る」プレイヤーを、眺めるだけ。プレイヤーと共通の画面を見ていようと、実際に襲われているのはプレイヤー(正確にいえば、画面内の操作キャラクター)なのだから。
ホラーは、安全圏にいるからこそ娯楽として成立している。恐怖の上ずみをすする、という娯楽。
ところで。「インターネット老人会」はご存知だろうか。検索にかけると、1990年代後半から2000年代前半にインターネットを楽しんでいた世代を指す。
この時期は、現在ほどネットが普及されていなかった。SNSは存在したが、ごく一部の人間、いわゆるオタクが中心に利用していた。たとえば、個人サイト。たとえば、「2ちゃんねる」。それぞれが、とても活発だった時代。
「2ちゃんねる」には、さまざまなカテゴリの掲示板があったが、最も活気があった中の一つに、やはり心霊系があった。今でも語り継がれる都市伝説が、ここでいくつも生まれた。
信憑性はさておき、心霊現象に巻き込まれている最中の誰かがスレッドを立ち上げ、実況中継する。それに対してコメントを書き込んだり、ただ経過を辿ったり。
楽しみ方は、先に上げた実況プレイ動画と変わらないと思う。ゲームなのか現実? なのかの違いだけで。
じゃあ、本当に恐怖を味わうのなら?
実際にホラーゲームをプレイすること?
VRゴーグル等を利用して、ゲーム内に入り込むこと?
あるいは、降霊術等、何かしらに手を染めること?
多分、そうじゃないのだ。恐怖に呑まれるためには、自発的では意味がない。本当に恐怖するのは、いつも通り、高みの見物だったはずが、気付けば、否応なしに巻き込まれている事態。
だから、
いつも、
他人事でよかったね。
あーあ。
『かわいそ笑』
かわいそ笑 - 梨(2022年)