。。。(Q/Light Dance/幽栖)
1.Q - 女王蜂(2017年)
記憶から迫り上がるものがある。それも、記憶には違いない。けれど、化石になっていたもの。二度と思い出したくないもの。それがなくては、ぼくはぼくにはなれなかったけど。同時に、二度と経験したくないもの。その日の気分、そんなもので叱責されたこと。ぼくがぼくであるだけで、気味悪がられたこと。自分で自分をころそうとしたこと。全て、石になって頭の中を転げ落ちる。あのころ。あのころから、ぼくはやさしい人になろうとした。あんな人達にならないように。でも、ぼくは。ぼくは、やさしくなれないよ。いとおしい人と憎い人、どちらも抱きしめることなんて。
『Q』
君には、ぼくがどう見える?
2.Light Dance - 小瀬村晶(2008年)
白鍵。黒鍵。白鍵。黒鍵。ぼくは、ピアノが弾けない。もしくは、弾かない。あるいは、弾いたことがないから弾けない。同じこと、か。ぼくは、踊るのが好き。下手だけど。でも好き。誰に見せるわけでもない。誰にも見せない。そのときだけ、自由になれる。ピアノも好き。弾けないけど。弾けないから。たとえば、ピアノの前に座ったとして。ぼくは、やっぱりなにも弾けない。人さし指を、白鍵に添えるくらい。そのとき、ぼくは隣に誰かを感じる。隣の誰かは、ぼくなんかより、ずっと上手にピアノを弾く。鍵盤の上で踊っている。ぼくは、誰かさんの真似をする。弾きながら、踊る。
『Light Dance』
ぼくは、ピアノと踊りが好きだ。
3.幽栖 - 悒うつぼ(2020年)
誰にも会いたくない。誰にも見られたくない。時々? 常に? ぼくは、そんな気分になる。でも、寂しくもなる。なんて、厄介なんだ。人間であることは、非常に厄介だ。それとも、ぼくという人間が厄介なだけだろうか。「一人にしてよ」「一人にしないでよ」拮抗する感情。ぼくとぼくの戦い。第三の、観客となっているぼくは、体育座り。うずくまっている。どうすればいいのかわからず、うずくまっている。考えて、考えて。その内、疲れる。「一人になったり、ならなかったりすればいい」いくつにも分裂したぼくを、ぼくは第三でもなんでもないぼくは引き連れる。すべて、すべて連れて行く。
『幽栖』
「大丈夫だよ」根拠のない自信すら、持ち合わせていない。でも、生きていける。ぼくはもう少し、ぼくでいたいから。