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gravity(お題:『魔女』『しもべ』『迷子』 )
あらあら、こんにちは。こんなところで、どうしたの? お父さんとお母さんは? 迷子になっちゃったの?
……わたし? わたしはね、この森に暮らしているの。だから、わたしは迷子じゃないの。心配してくれて、ありがとう。とても優しい子ね。
……「そんなこと、初めて言われた」? そうなの? あなたみたいに、優しい子が……。あらあら、くしゃみが……。ここは、とても寒いものね。ひとまず、うちにいらっしゃい。おいしいココアをごちそうしましょう。
*
はい、どうぞ。あなたが泣き止むように、魔法をかけておいたわ。……なんて、ほんのちょっぴり、クリームを入れただけなんだけど。……おいしい? それは、よかったわ。少しは温まったかしら?
……魔女? わたしが? ふふ、おりこうさんなのね。たしかに、わたしは魔女よ。もう誰にも信じてもらえないし、誰にも会わないもの。誰かに会ったのなんて、何年ぶりかしら。
……あら、あなたがお友達になってくれるの? とてもうれしいわ。こんなに優しい子が、お友達だなんて。……あらあら、泣かないで。せっかくお友達になったんだから、笑いましょう?
*
いまさらだけど……あなたは、わたしが怖くないのかしら? ほら、魔女って怖がられるものでしょう? 子どもを攫ってぱくっと食べるなんて、根も葉もないこと言われちゃって。
……怖くない? そう? とってもうれしいわ。そんなことを言ってくれる人間が、まだいたのね。
……アップルパイも、そろそろ焼けた頃かしら? あなたも、アップルパイが好き? ……食べたことないの? じゃあ、たっぷりごちそうしてあげる。
……はい、どうぞ。……おいしい? ああ、よかった。今日は、なんて最高の日なんでしょう!
*
そろそろ暗くなってきたわね。……どうしたの?
「帰る場所がない」? 「お父さんお母さんに捨てられた」? そう……。でも、大丈夫よ。これからは、わたしがいるもの。
ふふ、あなたをぱくっと食べたりしないわ。百年ぶりに、しもべができるんだもの。
……しもべについて? それは、ゆっくり教えてあげる。大丈夫。あなたはまだ子どもだから、たくさんのことを学べるわ。たくさん、たくさん……。
いずれ、あなたを捨てた人間を■すこともできるようになる。
安心して。わたし、一度拾ったものは、壊れるまで大切に使うのよ。
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