グッバイ、セプテンバーさん
9/3。
5:00起床。
天気は曇り。
*
――いや、まだ始まったばかりだよ。
しょっぱなから、セプテンバーさんに叱られる。
――そうだっけ。
ぼくは、とぼける。
――でも、始まらないまま終わりそうだよ。
そういうと、セプテンバーさんはとても悲しそうな顔をした。
――そりゃ、まだまだ暑いけどさ。でも、ボクが『セプテンバー』なのは、暑いも寒いも関係ないよ。
――そうなの? でも『セプテンバー』って、夏と秋の境目じゃないの?
――……。
――いつ始まっていつ終わったのか、きっと誰も気付かないよ。
セプテンバーさんが涙ぐんできたところで、ぼくはいじわるするのを止めた。
――ごめんね。だって、寂しいじゃないか。「暑い、暑い」といっている内に、セプテンバーさんはどこかへ行ってしまうんだろう?
――「暑い、暑い」といっていられるのも、今の内だよ。きっと、もうすぐ涼しくなって、みんなボクのことを思い出して、
――そもそもさ、
ぼくは、なんとなく口をはさんでみる。
――忘れている人なんか、いないよ。
セプテンバーさんは、ハッとしてこちらを見た。
――今までなら、夏が終わってほしくないときに、目の前にいるセプテンバーさんに初めて気付いたんだろうけど。今年は、セプテンバーさんが訪れるのをずっと待っていたんだよ。……青春が芽生えたのかもわからない、大変な今年の夏はね。
伝えたいことを伝えつくしたぼくは黙り込み、セプテンバーさんはほんの少しだけおろおろしていた。
――今年の夏、大変だったんだ。
――うん。暑いだけじゃなくてね。
――じゃあ、
セプテンバーさんは立ち上がり、両手を広げて空を仰いだ。
――もう、会いに行ってもいいんだよね。
――誰に?
――ボクを待っている人に。
――そっか。……ぼくもその一人だよ。
ぼくがそういったのが意外だったのか、セプテンバーさんは口を尖らせた。
――さっきは、「グッバイ、セプテンバーさん」って、いったくせに。
――だから、ごめんって。さっきいった通り、寂しかったんよ。……今年は、会いに来てくれないんじゃないかと思って。
――……どんな夏が過ぎたとしても、ボクはちゃんと会いに行くよ。
そして、ぼくとセプテンバーさんは、握手をして仲直り。
――じゃあ、道中気を付けて。
――ありがとう。
――あ、そうだ。一つ、いい忘れてた。
――?
ハロー、セプテンバーさん。
セプテンバーさん(『RADWIMPS 3〜無人島に持っていき忘れた一枚〜』)/RADWINPS(2006年)
*
「僕だけが、鳴いている」
これは、
僕と、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。
連載中。