#宇宙人に恋をしてみた(お題「宇宙人、三角錐、錠」)
「なんか、宇宙人っぽいことしてよ」
「ええ……。そういうのは、なんとかハラスメントっていうんじゃ……」
「あんたに、そんな概念あるの?」
「まあ……今は、地球人のフリをしてるから……」
「じゃあ、宇宙人っぽい見た目になって」
「元は宇宙人っぽくないのか……。ええ……じゃあ、はい。これは? 有名でしょ? 地球で小型宇宙人が捕獲されたときの……ウソだったみたいだけど」
「気持ち悪い。マイナス10点」
「……なるほど、これが『理不尽』っていうのか。ありがとう、学ばせてくれて」
「へえ。あんたも、皮肉の一つも言えるようになったんだ?」
「……『ヒニク』? 『ヒニク』って何?」
「……勉強しろ」
私は、宇宙人に恋をしている。
「ていうかさ。いつまで、うちに居る気なの?」
「いつまででも大丈夫じゃないかな。最初に言ったじゃない。君の両親には、僕が君のいとこだって記憶操作を……」
「そこじゃねーよ。何か用があるから来たんじゃないの? 地球に」
「そうなんだけど……僕が地球人じゃないってバレると、色々厄介じゃない。……現に、地球に到着早々、君にバレちゃったし」
「でも、記憶操作できるんでしょ? 私にもすればよかったじゃん」
「あのときは、焦って思い付かなくて……まあ、今やろうと思えばやれるんだけど……記憶、いじりたくないんだよ。君は、僕が初めて出会った地球人だからさ。忘れてほしくないんだ……僕のこと」
「……」
「……どうしたの?」
「何でもねーよ」
バカ、バカ、バカ。彼に聞こえないように、呟いた。
「……記憶はいじられてないけど、」
「?」
「じゃあ、コレは何? 出会って早々、耳に付けられたコレ。一応、ピアスってことにしてるけど……あんたも付けてるし、外そうと思っても外れないし……本当は何なの?」
「……何でもない。ただの友好の証だよ」
「何でもないなら、外してよ」
「外したいの?」
「だって、三角で、先が尖ってて、ダサいし危ないし……」
「なるほどね。……でも、外せないよ」
「……何で」
「友好の証は、外しちゃダメなんだよ。……ただの一度もね」
彼は、それ以上教えてくれなかった。
*
彼女は、不思議な人だった。明らかに地球人じゃない僕を、どこかに通報するでもなく、匿ってくれた。気味悪がらずに、介抱してくれた。
あらかじめインプットしていた地球人のイメージとかけ離れていたので、ここが本当に地球なのか疑ったくらいだ。でも、彼女は地球人で、僕は地球人じゃなくて――自分の身に起こったことは、全て本当なんだ。
僕は、あっという間に彼女に恋をした。
もうすぐ、僕以外の××人が、地球にやって来る。僕が、ろくに調査を進めていないせいで。きっと彼らは、まっ先に彼女の記憶を消そうとするだろう。彼女が僕と関わった記憶を。
だから、先手を打っておいた。彼女の耳に付けたのは、記憶の鍵。同じものを付けている僕しか、彼女の記憶を操作できない。これで何があっても、彼女は僕を忘れないで済む……。
「ねえ、」
「何?」
「何があっても、僕がちゃんと守るから」
僕は/私は、宇宙人に恋をした。