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DANCE DANCE DANCE(お題:惑星、忍びよる影、「見ぃつけた」)

「見ぃつけた」


と、最後の「た」の部分が聞こえたときには、僕の眼前の景色は変わっていた。


頭より先に、体が理解する。


空の中。
高度何百メートル。


死を覚悟するとか、そういう余裕すらなかった。そもそも、なぜ自分が宙に投げ出されているのか、まずそこから考えるべきなんだが、それどころじゃない。


少なくとも、落下はせず、その場(といっていいのか)にとどまっているから、まだ大丈夫なんだろう。


いや、どの辺が大丈夫なんだ。何でこんなことになっているんだ。自分の身に何が起きているんだ。


「見ぃつけた」


また、あの声がした。


そうだ。この声がした瞬間に、僕はこんなところまで昇ってしまったんだ。


宇宙飛行士の訓練もしていない一般人の自分が、こんな空中で自由に動けるはずがなかったが、それでもなんとかもがいてみた。


「ここ、ここ」


ふいに、見たこともないような美少女が、下から顔をひょっこりのぞかせた。僕は思わず仰け反ってしまい、滑稽なその姿に彼女はくすくす笑う


「どちら様ですか?」

「見つけた、やっと見つけた」

「人違いですよ」

「ずっと会いたかったの」


話が通じない。というより、話を聞いてくれない。


「私ね、あそこから来たの」


彼女は、さらに頭上にある夜空を指さした。


地上では気付くことが出来なかった、息を呑むほど美しい星空。けれど、その星々は砂を撒いたように無数に存在しており、どれが彼女の母星なのかわからなかった。


……母星?


「君、宇宙人なの?」


彼女はやっぱり話を聞いてくれず、子どもにいたずらされた球体人形のようにおかしな格好になっている僕に抱きついた。


こんな状況なのに、かわいい女の子が目と鼻の先にいる事実に卒倒しそうになる。まったくそんな場合じゃないんだが。


「早く踊ろうよ」


彼女は言った。


「踊る?」

「ダンス、ダンス、ダンス」


彼女は僕の左手を握り、足場もないのにその場でステップを踏み始めた。僕も半ば引っ張られるように、似ても似つかない彼女の真似事を始めた。リズムも何もかも噛み合ってないけど、それでも彼女は幸せそうだった。


「ずっとずっと、会いたかったの」


彼女は、そっと僕に口付けた。


慣れというのは恐ろしいもので、落下したら即死間違いなしのこの空間が、彼女の笑顔のおかげで最高の舞台に思えてきた。


夜はまだ明けそうになかった。でも、それでよかった。自分を「見つけてくれた」彼女といつまでも踊っていたい。僕はすでに、彼女に恋をしていた。


これが、ボーイ・ミーツ・ガールってやつか。そう思った。

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相地
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