ドッペルさんと、静寂
「静かですね、ここへ来ると」
「それはまだ東京よりもね」
「ここでもうるさいことはあるのですか?」
「だってここも世の中ですもの」
――芥川龍之介『歯車(『河童・或阿呆の一生』収録)』p234-235より引用
僕(以下、I):ドッペルさん、ドッペルさん。
ドッペルさん(以下、D):……どうしたの? 顔、真っ青だけど。
I:助けて。
D:?
I:うるさくてうるさくて、鼓膜が破れそうなんだ。このままじゃ、死んじゃうよ。
D:何がうるさいの?
I:何が? 何がって……あれ?
D:……。
I:……。
D:何も聞こえないよ。
I:本当だ。……最初から?
D:少なくとも、ボクには何も聞こえなかったよ。……キミの断末魔以外はね。
I:……うるさくして、ごめん。
D:いいよ。
I:そっか……。僕にしか聞こえなかったんだ……。
D:夢だったんじゃないの。
I:夢?
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