「100年ぶりですね」と明星は言った
11/12。
5:50起床。
天気は晴れ。
*
あんまり寒いので、なかなか布団から出られなかった。もう、この布団じゃ寒すぎるのかしらん。そろそろ、厚手の布団じゃないと……。
厚手の布団、だいぶ古くなったから、去年処分しちゃったんだった。あらまあ、どうしましょう。
やれやれ。とカーテンを開けると、明けの明星が見えた。三日月も見える……。早朝に、月が見えることもあるのか。
月は、明星のずっとずっと上の方でぽっかり浮かんでいる。丁度、真上に。
月は、明星を見下ろしているのかしらん。明星は、月を見上げているのかしらん。2人は、親密な仲なのかしらん……。
「これは、ぼくが見ていいものじゃないね」
開けたばかりのカーテンを、そろそろと閉める。もうすぐ、明るくなるからね。2人が一緒にいられるのは、あと少しだもんね。もう少しだけ、2人だけで……。
人肌くらいに冷めてきた白湯をすする。体はだいぶ温まってきた。でも、指先は冷たいまま。キーボードを叩いているからだろうか? それとも、切なさが指先まで下りてきたから?
ぼくは、そっとしている2人のことを考える。もちろん、月と明星だ。明星を時々見かけることはあっても、月まで見かけることはなかった。
これは、冬の風物詩なんだろうか? それとも、ただの偶然? だって、ぼくは今まで生きていて見たことがない――。
どうして、明星の真上に月があるんだろう。どうして、月の真下に明星があるんだろう。どうして、2人の間には距離が横たわっているんだろう。どうして――。
「1年に1度、どころの話じゃないのかな」
ぼくは考える。もしもあれが、100年周期の出会いだったらと。(詳しい人が見れば、この妄想は非常に滑稽なんだろうけど。)
――やっと会えましたね。
――ええ。しかし、
――しかし?
――あなたとは、ずいぶん距離がありますね。
――そうですね。でも、構いません。
「だって、やっと会えたんですもの」
ぼくは、続きを代弁する。どっちが月でどっちが明星なのか、わからないけど。
……妄想が過ぎたかな。
外がだいぶ明るくなっているのに気付いて、ぼくはカーテンを開けた。月も明星も、もうどこにもいなかった。一人残されたぼくは、少しだけ寂しくなった。
*
「僕だけが、鳴いている」
これは、
ぼくと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。
連載中。