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ぶらぶら散歩したら、結婚指輪を買うこともあるって話

10/19。

5:30起床。

天気は曇り。





「『スワロフスキー』って何だっけ」

「作曲家でいなかったっけ」

「チャイコフスキーのこと?」

「……」

「それ、よそでいっちゃダメだぞよそで」


と、パートナーに念押ししていたら、通りがかった他のお客さんにくすくす笑われた。


昨日は、パートナーとまったり過ごす日と決めていた。ので、適当に車を停めてぶらぶら散歩していた。


普段通らない道をうろうろしていると、雑貨屋さんを見つけたので、ふらりと入ってみた。雑貨と洋服を扱っているこじんまりとしたお店だ。


一通り店内を物色してから出るつもりが、ぼくは中央に並べられていた指輪に目を吸い込まれていた。


指輪が乗っているプレートには、ちっちゃな白テープが貼られていた。


『スワロフスキー』


「これ、いいな」

「あれ、アクセサリー苦手じゃなかったっけ」

「そうなんだけど……でも、いいな。なんか、魔法使いの指輪みたい。めちゃめちゃお手頃だし、買おうかな」

「じゃあ、ボクが買うよ」


と、パートナーが申し出た。


「結婚指輪、買ってないから」


と、付け加えて。


それなら、とぼくもパートナーに色違いの指輪を買った。


ぼくは赤、パートナーは緑。


店員さんに『スワロフスキー』のことを教えてもらっている内に、キュートなラッピングが出来上がった。あと、「よかったらどうぞ」と姫りんごをもらった。


ぼくとパートナーは、結婚してもうすぐ一年になる。


式も挙げていないし、婚約指輪も結婚指輪も持っていない。経済的な理由もあるけど、ぼくがそれを望んでいなかったから。


昨日買った指輪だって、給料三ヶ月分どころか、学生でも充分に買える値段だ。


『普通』じゃないんだろうな、と思う。そもそも、ぼくらには夫婦感というものがない。(夫婦感って何だ。)


でも、そんなことはどうでもいい。これが、ぼくらだから。ぼくらなりの愛だから。


その夜、ぼくらは指輪を贈り合った。指輪のサイズは小さく、小指にしか入らない。おまけに、結婚指輪といいつつも、特に働いているパートナーは普段使いできない。


だからこそ、だな。


だからこそ、ぼくらだけの結婚指輪だな。

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ぼくは、毎日付けようっと。





「僕だけが、鳴いている」


これは、
ぼくと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。


連載中。


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