![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/36925564/rectangle_large_type_2_b80251ddd1472d53d22cbf3796d30bda.png?width=1200)
ぶらぶら散歩したら、結婚指輪を買うこともあるって話
10/19。
5:30起床。
天気は曇り。
*
「『スワロフスキー』って何だっけ」
「作曲家でいなかったっけ」
「チャイコフスキーのこと?」
「……」
「それ、よそでいっちゃダメだぞよそで」
と、パートナーに念押ししていたら、通りがかった他のお客さんにくすくす笑われた。
昨日は、パートナーとまったり過ごす日と決めていた。ので、適当に車を停めてぶらぶら散歩していた。
普段通らない道をうろうろしていると、雑貨屋さんを見つけたので、ふらりと入ってみた。雑貨と洋服を扱っているこじんまりとしたお店だ。
一通り店内を物色してから出るつもりが、ぼくは中央に並べられていた指輪に目を吸い込まれていた。
指輪が乗っているプレートには、ちっちゃな白テープが貼られていた。
『スワロフスキー』
「これ、いいな」
「あれ、アクセサリー苦手じゃなかったっけ」
「そうなんだけど……でも、いいな。なんか、魔法使いの指輪みたい。めちゃめちゃお手頃だし、買おうかな」
「じゃあ、ボクが買うよ」
と、パートナーが申し出た。
「結婚指輪、買ってないから」
と、付け加えて。
それなら、とぼくもパートナーに色違いの指輪を買った。
ぼくは赤、パートナーは緑。
店員さんに『スワロフスキー』のことを教えてもらっている内に、キュートなラッピングが出来上がった。あと、「よかったらどうぞ」と姫りんごをもらった。
ぼくとパートナーは、結婚してもうすぐ一年になる。
式も挙げていないし、婚約指輪も結婚指輪も持っていない。経済的な理由もあるけど、ぼくがそれを望んでいなかったから。
昨日買った指輪だって、給料三ヶ月分どころか、学生でも充分に買える値段だ。
『普通』じゃないんだろうな、と思う。そもそも、ぼくらには夫婦感というものがない。(夫婦感って何だ。)
でも、そんなことはどうでもいい。これが、ぼくらだから。ぼくらなりの愛だから。
その夜、ぼくらは指輪を贈り合った。指輪のサイズは小さく、小指にしか入らない。おまけに、結婚指輪といいつつも、特に働いているパートナーは普段使いできない。
だからこそ、だな。
だからこそ、ぼくらだけの結婚指輪だな。
ぼくは、毎日付けようっと。
*
「僕だけが、鳴いている」
これは、
ぼくと、ドッペルゲンガーのドッペルさんの話。
連載中。
いいなと思ったら応援しよう!
![相地](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/10216395/profile_0d8f46d01b408bbd265092029365bd6e.png?width=600&crop=1:1,smart)