無差別級!リレー小説③りん
「うん。ところでさ、君は覚えていたりする?」
「なにを?」
「最初の夜」
「最初の夜?」
「うん。……"成った"瞬間って言えば伝わるかな」
「あぁ、最初ってそーゆーことね。覚えてるよ。知りたいの?」
「教えてくれる?」
「良いよ。素敵な夜だから、昔話をするのもいいもんね。あ、あそこのベンチに座ろっか」
2人並んで歩くうちに、どうやら街の外れの遊歩道まで出てきたらしい。僕ともう1人は、通り沿いに置かれたベンチに、少し離れて腰掛けた。
「えぇー、なんでそんな離れて座るの?」
「別に……」
「あ!さてはワタシのこと、あんまり信用していないな?」
「……別に」
「うわ、わかりやすい間を…」
「良いから、さ。教えてくれるんでしょう?」
「最初の夜、だったね。今日みたいに、細い月の夜だったよ。あ、でも、今日とは逆向きかな、ほら、上弦とか下弦とかいうやつ?」
「ふぅん」
「最初の悲鳴は、集会所だったかな。ワタシの家からは離れていたから、正確にはわかんないけど。ちょうど、町の寄り合いがあってね、年寄りたちが集まってた日だよ」
「年寄りから、始まったの?狩りが」
「年寄りを選んだんじゃなくて、人が集まってるとこに年寄りしか居なかっただけ、って聞いたよ。ま、年寄りなんて美味しくないもんねぇ、あははっ」
「ちなみに、"成った"年寄りはいたの?」
「居たけど、寄り合いには参加してない、町外れのゴミ捨て場に住み着いてた浮浪者のジィさん」
「なんか、分かるな。その人って、まだこの"ファミリー"に居るの?」
「居ないよ。ワタシが"成った"ときに、ちょっと喋ったけど、なんか群れとか苦手そうだったし。"ファミリー"を増やさないタイプの狩りだけしてくって言ってたし」
「ふぅん。寂しくないんだね、その人」
「そうだね。そういう人もいるよね。で、ワタシの話なんだけど、」