147センチ以下の子馬『ポニイテイル』★50★
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「キミ、ユニコーンなの? それになんでウチの名前を知っているの?」
「あどちゃんを、パーティー会場へお迎えにきました」
「パーティー会場?」
「お誕生日、おめでとうございます」
「え? あ、ああ。ええと、まぁ、その……ありがとう」
「わたしはまだ会えてませんが、プーコさんも待っていると思います。行きましょう、ブラウニー図書館の屋上へ」
「ん? プーコが? くそっ! 約束やぶっりやがって……学校来ないで先にひとりで図書館にいるとか。ウラギリ者め」
「ウラギリ者?」
「あのひょろひょろ娘、たぶん人間だけの学校に行くんだ! ウチをボッチにして転校するつもり。前にこっちにいた子たちもみんなそうだったし」
「人間だけの学校?」
「勉強しかしないヘンな学校だよ! ウザっ! 何が誕生パーティーだよ。ウチ、ぜったい行かない。もう絶交だよ」
ユニはまぶしいひとみをうるうるさせて、あどを見つめていました。
絵本で見たユニコーンとはだいぶちがいます。絵本のユニコーンはどれも体格がりっぱで、力強く描かれていました。でもユニはなんだか弱弱しくて、プーコみたいにやせっぽっちで、しかもポニイくらいの大きさで、とてもユニコーンには見えません。
この前、辞書でおぼえた知識によると、
「ポニイとは肩までの高さが147センチ以下の子馬のこと」
なのだそうです。あどは自分が何センチなのかよく知りませんが、目の前に現れたのは、背の低い、あどよりも小さいユニコー……ん?!
あどはユニの頭に『小さな穴』がぽっかり空いているのを発見しました。
傷口というよりは、耳の穴のようにぽっかりとした自然な穴です。
ここでようやく気づきました。
ユニがユニコーンに見えなかった一番の理由は……角がなかったからです!
あどはプーコにあげるはずの金色のバースデープレゼントと、ユニの額の穴を見比べました。
「あどちゃん、あの……それなんだけどね」
「あわわわ! ごめんなさい! これ、もしかして!」
「はい」
「知らないで勝手に持って帰っちゃった!」
「良かった、ちゃんと見つかって」
「ブラック……えっと、滝のところに浮かんでいたの。ごめんなさい!」
「いいんです。あどちゃんが拾ってくれたおかげで、面倒なことにならずにすみました。地上に来てからその角、ずっと探していたんです。今日までに見つからなかったらどうしようって、とても動揺しました。ギリギリセーフです」
「ほんと、ごめんね。はずかしかった?」
「はずかしい? 何がですか?」
「だって、ユニコーンが角なしですごすなんて、ウチらが髪の毛なしですごすみたいなものじゃないの?」
「いえ、ちがいますよ」
「じゃあ……あ! もしかして、その穴からプーッと魔法の力がぬけちゃったりしないかしら。たいへん!」
あどはサイドテーブルにおいた角を手にとると、子馬の耳と耳の間にある、小さい穴にさしこもうとしました。でもうまくいきません。すごく低い砂山に長い木の枝を立てようとしたときみたいに、ユニの角はしっかり穴にはまらずたおれてしまいます。
「ゆるゆる! ごめん、どうしよう、ごめん」
目の前にいる白のポニイは、涼しい顔ですましています。
ユニはあどの頭の中で「あはは」とかわいらしい声で笑いました。
「ほんとうは、こんな細い角を生やしている方がはずかしいんです。子どものユニコーンでも、みんなはもっとしっかりした角を持っています」
ユニは頭に力を入れたのか、少しゆるそうだけど角はなんとかはまりました。
次にユニはトコトコと銀の水飲みボウルのところに行き、口先をその中にしずめました。
「ああ、おいしい! とうめいの水はひさしぶり!」
満足そうによろこびの声をあげたあと、ユニは
「見つかって安心したけど……でも、いちおう飲んどかなくちゃね……」
そうつぶやいて、前足を器用に使って金色のたてがみをゴシゴシこすりました。金色の粉がさらさらと水飲みボウルの中へ落ちます。ユニは金ぷん入りの水をゴクリと飲みました。あどがかけよって銀色のボウルをのぞきこむと、とうめいな水に金色の粉がとけて濃い金色になっています。さっきまで冷たかったはずの水から湯気が立っていて、金色のスープのようでした。
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