『サッカー選手になれなかった人がフットサル選手になる』フットボールペアレンツ003
こんにちは。藍澤誠/Jの先生です。
フットサルという言葉はいまではメジャーになっていますが、1980年代~90年代には、フットサルという言葉は使われていなくて、フットサル的なスポーツは、「サロンフットボール」という名前でした。小学生のころ、私が所属していたサッカークラブのコーチが「インディアカ」だとか「ユニホック」だとか、いろいろと面白いスポーツを紹介してくれて、その流れで「サロンフットボール」に触れました。すごく小さいボールを使い、サッカーのミニゲームみたいなスポーツをやった記憶があります。
その後、2002年日韓ワールドカップごろに、ちょこちょこ「フットサル」という名前を聞くようになりました。
「ん? サロンフットボールをフットサルって呼ぶようになったのかな?」
くらいの認識で、だからハルキが小学生になってサッカーをやり始めたころ(2013年)は、「サッカー選手になれなかった人が、少しマイナーなフットサル選手になる」みたいな先入観がありました。
そんな私の偏見を覆してくれたのが、2015年に偶然見た「岡部将和」さんの動画でした。岡部さんは「ドリブルデザイナー」という肩書のもと、サッカーのドリブル技術を動画にして公開していたのですが、なんと岡部さん自身が「元フットサル選手」だというのです。
当時は「なんで岡部さんはプロサッカー選手にならなかったんですか?」みたいな質問がよくなされていました。まだフットサル選手がサッカー選手より下みたいなイメージがありましたし、それは今も一部で(特に私たち親世代で、フットサルに触れたことのない人の中で)残っているような気がします。
岡部さんを知ると私はすぐに調べまくっていける限りのイベントに参加し、ご本人にも何度もお会いし、直接指導をいただきました。その後、何人ものトップレベルのフットサル選手をそばで見たり、意見を交わしたり、食事をしたり、一緒にプレーしたりしてみて、フットサル選手がサッカー選手より劣っているなんて、微塵も思わなくなりました。今、私たち親子が一番お世話になっている内田淳二さんと大森知さんの主戦場もフットサルです。
サッカーとフットサルの間には、競技特性に違いはあります。サッカーの9分の1の広さのコートでやるとか、室内でやるとか、空中戦が少ないとか、試合時間が違うとか、交代の概念が違うことにより、サッカーは総合格闘技的というか、馬力が必要に思えます。しかし、基本的な動きは共通しています。だから私とハルキはサッカーもフットサルもやりますが、ほぼまったくと言っていいほど、サッカー選手とフットサル選手を区別していません。ましてやフットサル選手をサッカー選手の下に見ることなんてありえません。
それどころか……私のサッカー人生において、多大な恩恵をもたらしてくれたのはフットサル選手ばかりです。サッカー選手に比べてフットサル選手の方が競技と同時に一般の仕事をしたり、クリニックなどの講座をして生活の糧にしている人が多く、社会性が高いからでしょうか。自らの競技の普及もかねて、外に出る人が多いためでしょうか。
サッカーのトップレベルの選手(日本代表レベル・海外のチーム所属レベル)というと、何かのイベントでトークだけするとか、抽選で当たった人が参加するその場限りのサッカー教室に顔を出して写真を撮られるみたいな印象があります(※繰り返しますがトップレベルのプレイヤーの話をしています)。
もちろんケガしないようにとか、チームの規約でイベント参加の仕方に制限などがあるのでしょうけれど、ワールドカップという貴重な体験をしている&高い能力を持っているトップレベルの選手・元トッププレイヤーに、そんなに遭遇していません。私自身、代表レベルのJリーガーとプレイしたのは1回だけ。それも元フットサル選手にこっそり誘われたから実現しました。
Jリーグの下部組織の中では、元プロ選手だらけなのでしょうけど、そういう閉ざされた場所ではなく、ふつうのサッカー少年やそのお父さんお母さんがいる場所に、誰もが知っているサッカー選手が混じってサッカー界を改革しようとしている状態を私はまだ経験していません(※東京の場合だけかもしれません)。
息子ハルキについては、例外的に日本代表から声がかかったこともあるFC東京出身のコーチに教わったことはあるものの、それもわずか数か月でしたし(コーチがチームを辞めた)、私自身、10代のころになんとサッカーの王様「ペレ」のサッカー教室を見学したことがあるのですが、ペレはジャージに着替えているのに1回もボールを蹴らず、今でもがっかりしています。あーあ、ペレと一回でもパス交換できたら……。たんなるミーハーではなく、『ペレのサッカー』という本をめちゃ参考にしてずっと頑張っていたので(今も持っています)悲しかった記憶があります。
また、ハルキが一番最初に通っていたサッカースクール(小3時)は、元日本代表の超有名な選手が主催するスクールだったのですが、その人から一回も教わることはありませんでした。ていうかご本人に会ったこともありません。そして――スクールが始まる30分前から、マンツーマンで小さなハルキとサッカーボールで遊んでくれていたのは、その辺にいるすごく気のいい金髪のあんちゃんかと思ったら、フットサルの日本代表の元キャプテンの選手でした。
サッカーの日本代表レベルの選手と一般の人々がいっしょになってサッカーを研究し、ワールドカップの体験・世界各国のリーグでの経験を共有できる。逆に一般の人々は、トップレベルの選手たちに対し、いままでいかに励まされたか、参考になったかを直接伝えることができる。そしてお互いの経験を持ち寄って、新たなブレイクスルーを協力して生み出し、前の世代が越えられなかった壁を突き破れれば最高なのにと思ったりもしますが、私とハルキにとって現時点の環境、フットサルのトップ選手たちがいつもそばにいてくれることが、最高に感謝してもしきれないくらい感謝できる状況なので、本当に幸せです。
ついさっきもtwitterを通して、フットサルの現役トップ選手(スペインリーグ)で活躍していた選手(日本に戻ってきたばかり)が、「試合楽しめましたか?」と、私にきさくに返信してくれました。
世界一のアスリートといっても異論がない、メジャーのトップ中のトップだったイチロー選手が、積極的に高校生や草野球に関わっていますが、トップと一般が混然一体となってお互いを支え合う。アイデアを交換し合う。そのスポーツだけでなく、競技者だけでなく、みんながそれぞれのレベルで幸せを感じられる社会はすばらしいと思います。
そこには「サッカー選手になれなかった人がフットサル選手になった」なんて偏見なんて存在しないだろうし、サッカーもフットサルも、他のスポーツもみんな好き。トップレベルも、草の根レベルもめちゃ楽しいという自由さがあると思います。実際、そうした幸せを感じられ始めています。
SNSの普及と、それぞれの生き方の見直しが進むにつれて、ますます自由度が上がっていくと思うので、今後も謙虚に、敬意をもってトレーニングを続けていきたいと思っています。今日も楽しもう&がんばろう!
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