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第435回  < 日米の期待インフレ率推移とドル円相場について >

2024年6月末から7月初旬にかけて160円を超えて推移していたドル円相場が8月下旬時点では145円近辺で推移しており、1か月半で15円を上回る変動となっています。日銀がマイナス金利を解除して金融緩和策の変更を決めたのが2024年3月で、更に7月の金融政策決定会合では政策金利が0.25%に引き上げられました。日米金利差とドル円為替に密接な関係があることは確かです。データを見てみると、2024年の日米の2年国債金利差が4月末に4.7%を超えて拡大したのをピークに、ドル円為替が大きく円高方向に動き始めた7月下旬からは3%台に縮小、その後8月下旬にかけて3.5%近辺で推移しています。

しかし、為替変動を含め両国の状況を的確に反映するのは実質金利とも言われ、日米の名目金利だけを見ていると状況を見誤ることもあります。実質金利は物価上昇率、潜在成長率を反映し、期待実質経済成長率に等しいと見られており、景気拡大局面では上昇しやすく、逆に景気後退局面では低下しやすいという特徴を持ちます。ここ数年、日本の長期金利は上昇基調にありましたが、期待インフレ率は6月下旬でピークアウトしています。これはドル円相場の転換とほぼ同時期です。一方で、アメリカの期待インフレ率は8月に入って若干低下が見られますが、2024年を通じてほぼ横ばいで推移してきました。これにより、日米実質金利差も足下縮小傾向にあり、年初の水準を下回っています。

日本では名目金利が上昇傾向にありますが、米国は低下傾向に転じています。しかし、物価上昇率や潜在成長率については若干不透明です。日本のブレークイーブンイールド(インフレ連動国債と利付国債の金利差)で見ると期待インフレ率は年初からは大きく上昇しましたが、足下3ヵ月では低下傾向がみられ、依然マイナス圏にはあるものの足下の実質金利は上昇しやすい状況にあります。かたや米国の期待インフレ率は前述の通り横ばい推移となっており、名目金利の低下から実質金利も低下が予測されます。したがって、足下の急速な円高は日米実質金利差の縮小への期待を織り込んだものと見ることができます。

名目金利に対する見方が一定とすると、年内のドル円相場推移は、両国における期待インフレ率の変化に左右される側面もありそうです。日本における期待インフレ率は足下でピークアウト感が見られる一方、米国のそれはFRB(連邦準備制度理事会)の物価目標と沿った状況にあることを考えると、年内のドル円相場については足下水準が居心地の良さそうなところですが、名目金利のトレンドに変化がない限り、やや円高ドル安に動きやすい状況が続くと思われます。今後も両国の期待インフレ率や潜在成長率を加味した実質金利の推移に注目しておきたいと思います。






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